「悪性の腫瘍」というといかにも難しい、悪そうな名前ですね。とても恐ろしく感じます。ほぼ同様な意味の言葉で「癌」があります。これも文字を見ただけで恐怖心があおられます。最近は「癌」は視覚的にも怖そうなので「がん」と書くことが多くなりました。本稿では以下「がん」として、その性質を解説したいと思います。

恐怖を感じる一番の理由は何でしょうか?「不治の病」だから。診断されたら「死の宣告」とおなじだから。といったことでしょうか。しかし、必ずしも両者は正しいとは言えません。恐怖を感じる大きな理由の一つは「得体が知れない」、「わからない」ということが挙げられると思います。未知のものには恐怖を感じるのだと思います。本項では少なくとも知らない、わからないことから生じる恐怖を取り除くことを目的として「がん」の解説をします。

ヒトは顕微鏡でしか見えない小さな細胞からできています。その数は37兆個とも言われています。その細胞1つ1つには人の設計図である遺伝子あるいはDNAがおさまっていて、細胞が増える(分裂)するたびに、その遺伝情報は正確に新しくできる細胞に受け継がれる仕組みになっています。そしてこの設計図に従って、細胞の部品であるタンパク質分子が作られ、正常細胞の働きを担っています。ところが「がん」細胞の場合、この遺伝子(DNA)に多くの間違いがあることがわかっています。この間違いによって、がん細胞では、遺伝子異常異常タンパク異常増殖が起こっています。現在ではこうした異常が分かってきたので、こうした異常に対する治療薬の開発が盛んに行われています。