臨床研究法では、製薬企業等の医薬品等の臨床研究に対して当該製薬企業等の講ずべき措置として、①資金を提供する際の契約を締結すること、②資金提供の情報等を公表することを義務付けています。
①契約の締結
製薬企業等は、研究資金等の提供を行うときは、事前に資金の額等を定める契約を締結しなければなりません。
研究資金等
- 臨床研究実施のための資金
- 臨床研究の実施に係る人件費
- 実施医療機関の賃借料その他臨床研究の実施に必要な費用に充てられることが確実であると認められる資金
※試薬などの物品や労務提供は「研究資金等」ではありません。
記載項目
契約書には次の事項を含めるよう定められています。(平成30年2月28日施行通知「規則第88条関係」より抜粋)
- (ア)
- 契約を締結した年月日
- (イ)
- 特定臨床研究の内容及び実施期間
特定臨床研究の内容は、研究目的及び趣旨等、その概要の記載又は計画書の添付でも差し支えない。 - (ウ)
- 研究資金等の提供を行う医薬品等製造販売業者等の名称及び所在地並びに実施医療機関の名称及び所在地
署名又は記名押印でも差し支えない。 - (エ)
- 特定臨床研究を実施する研究責任医師及び研究代表医師の氏名
- (オ)
- 特定臨床研究についての研究資金等の額、内容及び支払いの時期
研究資金等の提供の条件を明確にする趣旨である。
契約書には総額等概算を記載し、明細書添付でも差し支えない。 - (カ)
- 研究資金等の提供に関する情報等の公表に関する事項
実施医療機関及び研究の管理等を行う団体(以下「実施医療機関等」という。)が有する、研究責任医師の所属及び異動情報並びにjRCT に記録される識別番号等、公表に必要な情報を医薬品等製造販売業者等に対して提供する旨を記載すること。記載に当たっては、医薬品製造販売業者等が資金提供の情報を公表することについて、当該実施医療機関等の確認を取ること。また、当該実施医療機関等は医薬品等製造販売業者等の求めに応じ、速やかに当該情報を提供すること。 - (キ)
- 特定臨床研究の成果の取扱いに関する事項
ⅰ)特定臨床研究の結果得られたデータや特許権の帰属に係る情報について記載する旨である。なお、特許権等について医薬品等製造販売業者等又は研究責任医師のいずれに帰属するかを決めず、当該帰属の取扱いについてのみ定めることでも差し支えない。
ⅱ)研究結果の公表に係る事項を含むものである。 - (ク)
- 医薬品等の副作用、有効性及び安全性に関する情報の提供に関する事項
ⅰ)医薬品等製造販売業者等が実施計画中の医薬品等の概要、医薬品の製造年月日、製造番号等の情報を実施医療機関等に提供し、研究責任医師が認定臨床研究審査委員会等へ報告した場合、その情報を医薬品等製造販売業者等にも直ちに報告する旨である。
ⅱ)契約に基づかない臨床研究であっても、疾病等の情報を当該臨床研究に用いる医薬品等の医薬品等製造販売業者に情報提供するとともに、当該医薬品等製造販売業者から当該医薬品等の安全性に係る情報の提供を受けられるよう努めること。 - (ケ)
- 厚生労働省が整備するデータベースへの記録による公表に関する事項
研究責任医師が適切に必要事項を公表しなければならない旨である。 - (コ)
- 特定臨床研究の対象者に健康被害が生じた場合の補償及び医療の提供に関する事項
研究責任医師必要な措置を適切に講じておかなければならない旨である。また、当該措置に係る費用負担について医薬品等製造販売業者等と実施医療機関等との間で協議した上で契約書に記載すること。 - (サ)
- 規利益相反管理基準及び利益相反管理計画の作成等に関する事項
研究責任医師が利益相反管理基準等の作成等を適切に行わなければならない旨である。 - (シ)
- 研究の管理等を行う団体における実施医療機関に対する研究資金等の提供に係る情報の提供に関する事項(医薬品等製造販売業者等が当該団体と契約を締結する場合に限る。)
ⅰ)当該団体が実施医療機関と締結する契約について、情報公表に必要な情報を当該団体に提供する旨を当該契約に係る契約書に必ず記載する等、医薬品等製造販売業者等が情報公表を行うに当たり必要な事項を記載する旨である。
ⅱ)このため、当該団体は、医薬品等製造販売業者等の求めに応じ、速やかに当該情報を当該医薬品等製造販売業者等に提供すること。 - (ス)
- その他研究資金等の提供に必要な事項
ⅰ)提供した研究資金等に余剰が発生した場合の取り決め。
ⅱ)医薬品等製造販売業者等が実施医療機関に提供する労務提供及び物品の内容。
②資金提供の情報等の公開
製薬企業等は、特定臨床研究に関する研究資金等、寄附金、原稿執筆料等を提供する場合は、それぞれで定められている公表事項を事業年度ごとにインターネット等により公表しなければなりません。
公表対象となる提供先
- 特定臨床研究を実施する者
- 当該者の所属する大学等の機関
- 研究資金を管理する財団等(CROやSMO含む)
また、当該財団等から研究参加施設に対して行う資金提供も公開対象となります。
項目 | 公表事項 |
---|---|
研究資金等 ※研究管理等を行う団体が実施医療 機関に提供した研究資金等を含む |
1.jRCTに記録される識別番号 2.提供先 3.実施医療機関 4.各特定臨床研究における研究の管理等を行う団体及び実施医療機関ごとの契約件数 5.各特定臨床研究における研究の管理等を行う団体及び実施医療機関ごとの研究資金等の総額 |
寄附金 ※特定臨床研究の実施期間・終了後 2年以内に支払われるものを含む ※研究責任医師に提供されないことが 確実であると認められるものを除く |
1.提供先 2.提供先ごとに契約件数 3.提供先ごとの提供総額 |
原稿執筆及び講演 その他の業務に対する報酬 ※特定臨床研究の実施期間・終了後 2年以内に支払われるものを含む) |
1.業務を行う研究責任医師の氏名 2.研究責任医師毎の業務件数 3.研究責任医師ごとの業務に対する報酬の総額 |
公表時期
毎事業年度終了後1年以内に、全事業年度分の情報を公開しなければなりません。
また、公表した日から5年間の公表が必要です。
詳細は厚生労働省「臨床研究法について」でご確認ください。