がんプロとは

ご挨拶

 1980年以降日本人の死因の第1位は悪性新生物すなわち「がん」です。「がん」は高齢者に多い病気で超高齢社会である日本では今後もがんの発症は多いことが想定されます。
 このため、政府はがんを国民病と位置づけ様々な対策を講じています。その1つに文部科学省が推進する「がんプロフェッショナル養成プラン」があります。2007年からの事業で、5-6年ごとに期間を区切ってその都度テーマを掲げながら人材養成に寄与してきました。
 2023年度からは第4期の事業として「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」が始まりました。そこでは以下3つの分野にわたる人材育成を目指すことがうたわれています。すなわち、①がん医療の現場で顕在化している課題に対応する人材、②がん予防の推進を行う人材、③新たな治療法を開発できる人材、です。こうした目標を掲げて全国11の大学間協力グループがそれぞれの持ち味を生かしながら活動を開始しています。

2024年2月1日

 

次世代北信がんプロ富山大学事業推進プロジェクトリーダー
富山大学附属病院
臨床腫瘍部 教授
林 龍二

 

次世代北信がんプロ概要

 次世代北信がんプロでは北陸3県と長野県の大学が連携して北信地区のがんプロフェッショナルを養成する事業を開始しています。
 連携する大学は石川県の金沢大学を基幹校とし、福井県の福井大学、石川県の金沢医科大学、富山県の富山大学、長野県の信州大学、長野県看護大学の、合わせて6大学です。それぞれの大学が特色を生かしながら互いに連携をして人材養成に努めます。次世代北信がんプロのテーマは「北信のシームレスながん医療を担う人材養成」としています。シームレスながん医療とはどんなものかと言いますと、1人の患者さんを診断から治療、その後の生活までトータルに切れ目なく診療を行うという意味です。
 「がん」は治療の難しい病気ではありますが、近年の医療の進歩に伴い、早期であれば切除により治癒を望めます。進行がんでも非常に有効な新薬の登場により長生きできる方も増えてきました。そうした場合には単に一時の治療で完結するのではなく、術後や長い薬物治療さらには緩和ケアの段階までトータルな診療が求められます。
 また、上述のようにがん患者には高齢者が多く、高齢による通院困難、在宅医療など、個々の患者さんによってそのニーズは様々となっています。そうした個々の状況をも考慮したトータルケアがまさに次世代のがん診療には求められています。こうしたニーズにこたえられる高度人材を北信地域で養成することを目標としています。

次世代北信がんプロ:富山大学の役割

 富山大学では上述3つの目標の中で特に①がん医療の現場で顕在化している課題に対応する人材の養成に注力します。
 これは今回のテーマにあるシームレスながん医療にまさに直結する課題で、様々な患者さんの多様なニーズに対応する必要があります。個々の患者さんの求めに応じるためには従来の医師のみによる診療だけではなく看護師、薬剤師はもちろんのこと、ソーシャルワーカーや地域のケアマネージャーなど多職種と共同したチーム医療の構築が何より大切となります。このため富山大学では「がんチーム医療修得コース」を設置し、シームレスな診療を担う人材を養成します。
 また、新たな学際領域として「腫瘍循環器病学」が注目を集めています。富山大学では今まではあまりがん診療とは縁がないように思われていた循環器科との共同により「腫瘍循環器コース」を立ち上げました。循環器学とは主に心筋梗塞や心不全、高血圧などの動脈硬化症、血管内で血の塊ができる血栓塞栓症などを専門に扱います。こうした疾患は実はがんに罹患した患者で高率に発症することが知られており、両者合併例を連携して診療することがとても大切です。
 それぞれの専門家が連携して、専門だけに偏らない人材育成を目指します。
 さらに、主に薬学を専攻する受講者を中心として「がん治療において地域医療に貢献できる薬剤師および新規がん治療薬開発研究者養成コース」を設置し、新規治療にも貢献できる人材を養成します。
 このように時代の流れとともに変わる必要性を的確にとらえて、そこに対応する高度人材を養成することががんプロ事業であり、特に富山大学では北信地域で必要とされる人材を養成することを目指してまいります。
  そして、5年後、10年後には皆様のお役に立つ高度人材が北信地区のがん診療を支えてくれることを願っております。