がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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検査に1カ月薬が見つからない場合も─がん遺伝子パネル検査の対象となる人や検査を受ける際の流れなどを教えてください。た。イレッサが発売中止の危機に陥っていた2004年、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子異常が非小細胞肺がんの原因となる変異であることが発表されました。2009年ごろにはEGFR変異の有無がイレッサの使用を判断する基準になることが臨床的に確認され、2011年にイレッサの添付文書の適応が「非小細胞肺がん」から「EGFR変異陽性の非小細胞肺がん」に変わりました。それ以降、適応の範囲内で合併症に注意して使用するようになり、高い投薬効果を比較的安全に得られるようになりました。これが分子標的薬治療です。従来の抗がん剤は、細胞増殖を抑える薬です。人体で最も細胞が増殖しているところは骨髄の白血球なので、がん細胞だけでなく、白血球も一緒に攻撃してしまいました。消化管の細胞も増殖しているので、強い消化器症状が出ました。これに対し、分子標的薬はターゲットが絞られているので、特定の変異のある細胞以外への影響が少なく、高い効果が得られます。このような薬を増やすため、がん患者さんのDNA変異を広く調べようという取り組みが、がん遺伝子パネル検査です。 標準治療のガイドラインがない原発不明がんや希少がんの人、その他のがんで標準治療の最終段階に差し掛かっている人などが対象となります。パネル検査は時間がかかります。次世代シークエンサーでも、結果が出るまで2週間から1カ月近くかかります。検査結果が出たら、エキスパートパネルと呼ばれる専門家会議で検討するので、さらに1週間はかかるでしょう。そうすると、検査を始めてから結果が説明できるまで1カ月以上かかってしまいます。標準治療をやり尽くした患者さんは体力が落ちているので、検査結果を待つ時間がない場合もあります。現状では比較的体力のある方が対象となります。がん遺伝子パネル検査を受ける場合  6う流れになります。は、主治医から当センターに連絡して予約を取り、がんゲノム医療外来を受診していただきます。検査に関する説明をしたうえで実施を決め、病理組織や血液などの検体を揃えて検査機関に送付し、検査が始まります。それから約1か月後に検査結果を説明するとい

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