がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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新機器の導入で遺伝子検査を強化地域医療との連携にも寄与─血液内科では、遺伝子検査が診断と治療に重要な役割を果たしています。多発性骨髄腫の新治療法へアカデミア創薬研究を開始─佐藤教授は新たな分子標的薬や、新しい治療法の開発にも取り組んでおられるそうですね。 血液内科では、正確な診断と適切な治療に遺伝子検査が必要とされる疾患が増え続けています。しかしながら、保険診療で行える遺伝子検査は限られており、また多くの病院では、民間に委託せずに自前で可能な遺伝子検査はありません。 当科では、商業ベースで行われていない遺伝子検査も、必要性に応じて個別対応しています。この度、検査・輸血細胞治療部の協力を得て、遺伝子解析機器「シークエンサー」を導入しました。これにより、保険診療である「造血器腫瘍遺伝子検査」としていろいろな遺伝子検査が可能になりました。今後もこのような自前で行える検査項目を増やし、適切な治療方針の決定に役立てます。 また、県内の血液内科からも遺伝子検査のご依頼があれば対応できるように調整中です。このようにして当院を利用してもらうことで、地域医療連携につなげたいと思っています。基本的に血液内科は他の病院も含めた紹介で成り立つ科で、院内外の連携が非常に重要です。迅速に診断して治療を行い、紹介していただいた病院に患者さんをお返しします。地道で丁寧なお付き合いや、依頼されたときは「断らない」ということが、特に血液内科では重要だと思います。現在、多発性骨髄腫に対する新たな分子標的薬の開発と新規治療法の研究に取り組んでいます。多発性骨髄腫は貧血、骨病変、腎機能障害、高カルシウム血症などを起こす難治性の血液のがんで、主に薬物療法や造血幹細胞移植(自家移植)の治療が行われています。多発性骨髄腫の細胞の中にはDPP8というタンパクが多く存在しています。これを抑えると多発性骨髄腫の細胞が死滅することがわかっていて、DPP8が骨髄腫治療の標的になるという研究で特許を取っています。このDPP8を阻害する飲み薬を開発すれば、特効薬になる可能性があります。現在はまだ研究の種を発見した段階で、いくつかの大学の研究室や産学連携でアカデミア創薬の共同研究を始めたところです。58  

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