がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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OLを維持しながら治療することができます。一般的に体に対する負担が小さく、ご高齢の方や合併症のある患者さんにも適応できる場合があり、どんな状況の患者さんにとっても親身にお話をうかがい、適切な治療を届けられるよう、努力しています。全身のどの部位に発生するがんにも対応できることが特徴ですが、手術や化学療法の進化にも対応できるよう努めています。日本においては、欧米と比較して放射線治療の認知度や利用がまだ十分ではなく、適切な治療が十分に届けられているとは言えません。例えば欧米では、放射線治療を受けるというがん患者さんが50~60%、つまり2~3人にひとりと言われていますが、日本では3~4人にひとりと、欧米に比べると半分くらいです。今後も患者さんだけではなく、近隣の医師や他の医療スタッフに対しても適切な情報を発信していくことが重要です。また、経験のあるスタッフを揃えることも重要であり、富山県の放射線治療のさらなる充実のためにも、後進の医学生を育てていくことが大学病院である当院の使命と考えています。出身の群馬大学は、古く     から放射線治療にかなり力を入れていました。「放射線治療医を目指さないか」と先輩スタッフに誘われたのがきっかけです。病院実習で放射線治療科を回るまでは、放射線治療に関して何も知らないに等しい状態でしたが、「こういう道もあるんだ」と気づき、放射線治療医を志しました。放射線治療医はいわゆる専門医、スペシャリストですが、治療内容はいわゆるジェネラリスト。専門性は高いですが全身を診なければならない。また当時から、「がんは国民病になる」ということがわかっていたので、がんを治すために自分なりにできることはないかと考えたときに、外科や内科以外の異なる方法でアプローチしてみたいと思ったのも理由です。この2、30年の放射線治療機器の進歩には目覚ましいものがあり、非常に良質な治療が届けられるようになりました。その分、使い道を間違えてはいけないと強く感じます。「放射線は目に見えない」という特徴があり、いろいろと不安のある方も多いと思います。実際に放射線が照射されている最中に痛みや刺激を感じることはほとんどなく、治療に伴う副作用も許容範囲に抑えるよう工夫して治療を行っていますので、過度に心配される必要はありません。初診の際には患者さんやご家族に十分な理解が得られるよう、なるべくわかりやすい言葉で病状、治療の説明を行っていますので、心配なことは何でも相談していただければと思います。─齋藤教授が放射線治療医を志した理由は何でしょうか?─患者さんへメッセージをお願いします。【認定資格・所属学会】日本医学放射線学会専門医、日本放射線腫瘍学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医profile55齋藤 淳一(さいとう・じゅんいち)放射線科診療部門 放射線治療科 診療科長【専門分野】放射線治療【略歴】1997年 群馬大学医学部医学科卒業2003年 群馬大学大学院修了、医学博士2010年 群馬大学重粒子線医学推進機構 助教2012年 群馬大学医学系研究科腫瘍放射線学 講師2015年 群馬大学大学院医学系研究科腫瘍放射線学 准教授2018年 富山大学大学院医学薬学研究部(医学)放射線診断・治療学講座放射線腫瘍学部門 教授、富山大学医学部医学科 教授

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