がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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治療の認知度、利用増が課題適切な情報発信で理解を深める─がん患者さんに対して、どのような信念をもって治療されていますか?少数の脳転移(脳腫瘍)の疾患に対応しています。高齢化に伴い、今後高齢者の症例が増加してくる傾向にあり、侵襲性が少なく、1~4日の外来通院もしくは短期間の入院で治療できる利点にも注目が集まっています。IMRTは、放射線を当てる形や強      さをコンピュータ制御で自由自在に変えて行うことができる治療法です。病巣の形に合わせて腫瘍に集中して放射線を照射し、放射線を当てたくない正常臓器の照射線量を極力少なくすることができるため、腫瘍の制御を向上させ副作用を減らすことができます。IMRT専用機「トモセラピー」は、治療時間の短縮や、がんの形状に合わせた照射、連続的照射野の設定(1回の施術で離れた部位へ照射すること)が可能になるなど、より高精度化され実施数も増加しました。2018年度は約100名の患者さんを治療し、2019年度は150名を治療できるよう体制を整えています。IMRTが得意とする主な対象疾患は、前立腺がん、脳腫瘍、頭頸部腫瘍ですが、現在、保険診療上の適用は“限局性の悪性腫瘍”とされており、これに当てはまる疾患に対して、積極的に適用できるよう努力しています。ただし、治療の準備や治療時間が通常の方法より長くかかる場合があり、患者さんの状態によっては通常の放射線治療を選択することも多いです。小線源治療は病巣内に中空の針やチューブを留置し、その内部に小さな放射線を出す線源を通すことによって、病巣に集中的に放射線を照射する方法です。主に子宮がんの治療のほか、頭頸部腫瘍や前立腺がんの組織内照射で用いることもあります。今後は乳がんにおいても先端治療として進められます。 病巣の中に線源を留置できる疾患に特に有効で、その代表格が子宮頸がんです。子宮頸がんにおいては、手術で治せないものがこの方法で治せることがあります。しかし年間の治療数から考慮すると、手術や抗がん剤単独治療を選ぶ患者さんがまだ多く、県内の子宮頸がん患者に適切な放射線治療の提供ができていない可能性があると思います。今後は多くの情報を提供し、子宮頸がんの放射線治療に対する理解を深めていきたいと考えています。 主な副作用は治療した部位に起こり、放射線治療中または終了直後の急性の副作用と、治療が終わって半年から数年経過して出てくる晩期の副作用があります。治療中に出てくるものは治療が終わればだいたい治りますが、晩期のものは出てくると治らない。そこで、治療中の副作用は耐えられる範囲に抑え、晩期の副作用は出さないように計画しています。治療中の副作用で多いのは、皮膚や粘膜の炎症(日焼けや口内炎様の症状)です。化学療法を併用すると症状がひどくなることがあります。近年、放射線治療の照射技術が急速に進歩し、放射線をコントロールしてがん病巣を集中的に照射できるようになり、正常な組織を守りながら治療を行うことで、副作用もかなり少なくなりました。副作用をゼロにすることは難しいものの、ゼロに近づけたいとは思っており、許容範囲に抑えて最大限の効果をあげるよう治療を行っています。日本人の2人にひとりが悪性腫瘍に罹患する時代と言われており、がんは決して特殊な病気ではなく、また他人事でもありません。放射線治療はがんを治すことができるばかりでなく、残念ながら治らない状況になった場合の症状をやわらげる治療としても有効です。通院治療も可能で、患者さんのQ─IMRTは、どのような治療ですか?─内部照射の高線量率小線源治療は、どのような治療ですか?─放射線治療の副作用はありますか?54

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