がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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泌尿器科の魅力を伝える優秀な医師の育成も使命─北村教授ご自身はどのような理由で泌尿器科を志しましたか?PSA値や血尿、排尿障害など早期発見のサインに注意─泌尿器科系のがんを早期発見するためのサインなどはありますか?もともとは外科系に進みたいと思い、消化器外科と迷った時期もありました。当時はまだダ・ヴィンチは導入されていませんでしたが、前立腺肥大症や尿管結石の治療にレーザーを使うなど、泌尿器科には先進性がありました。膀胱を摘出した後、腸管を使って尿路を再建する手術も面白いと感じました。泌尿器科では加齢とともに罹患率が上昇する疾患が多いです。高齢化に伴い需要が高まる一方で、県内の泌尿器科医は少なく、特に市中病院では医師が不足しています。一時期は保険適応のダ・ヴィンチ手術が泌尿器科でしかできなかったため、多くの研修医が集まったこともありましたが、依然、泌尿器科医不足は否めません。泌尿器科の魅力は、手術も薬物療法もでき、外科的・内科的両面の治療ができることです。米国ではステータスの高い診療科で人気があります。手術法一つをとってもバリエーションがあり、先進的な治療ができる。また、薬物療法もバラエティに富んでいるう -  -    え、がんから慢性疾患まで幅広く扱うのも魅力です。いろいろな選択肢の中で泌尿器科疾患の治療を一通り経験し、その中で興味や、やりがいを感じるものをサブスペシャリティとして極めるのもよいと思います。日進月歩の泌尿器科の知識・技術を身につけた優秀な医師の育成に、今後も力を入れていきたいと思っています。骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんの治療にRa射線同位元素ラジウム223は、静脈注射で投与すると骨に転移したがん細胞に対して直接治療効果を発揮します。生存期間の延長や骨の痛みを緩和する効果があります。これは認可を受けた施設だけで実施できる治療で、当院は2017年に県内で初めて取り組みました。現在は当院を含めて県内3施設で行っています。また、光感受性物質の5ALA(アミノレブリン酸)を用いた光線力学治療を膀胱がんの内視鏡手術に使用223があります。放しています。この設備があるのは県内唯一です。 2019年現在、泌尿器科では7件の治験が行われていて、今後もさらに増加します。免疫療法の有効性を検証する治験が主流となってきています。 非常に難しいですが、よく言われるのが血尿です。痛みがなくても血尿や尿の色の変化はサインの一つです。血尿は膀胱がんや腎盂がん、尿管がんなどの尿路に発生するがんのリスクがあります。前立腺がんについては採血によるPSA検査で早期発見できます。検診や人間ドックなどで疑いが指摘され、見つかるケースが増えています。かかりつけ医などにPSA値が高いと言われたら、症状があまり無い場合でも無視せず、泌尿器科を受診してください。腎臓がんも、たまたま超音波を当てたら腎臓に腫瘤があったということが多いです。精巣腫瘍に関しては外に出ている臓器なので、自分で見て気付く方も多いです。泌尿器科系のがんは、手術すれば根治するものが多く、早期発見が重要です。血尿や頻尿、排尿痛などの不安を感じたら躊躇せず、すぐに泌尿器科を受診してほしいと思います。─ロボット支援手術以外の先端医療の取り組みはいかがですか?デント2006年 札幌医科大学大学院医学研究科修了2006年 仏キュリー研究所附属病院免疫療法科2009年 札幌医科大学医学部泌尿器科学講座 助教2011年 札幌医科大学医学部泌尿器科学講座 講師2015年 富山大学大学院医学薬学研究部(医学)腎泌尿器科学講座 教授、富山大学大学院医学薬学研究部先端生命医療学域分子病態医学系 教授、富山大学医学部医学科 教授【認定資格・所属学会】日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、Da Vinci certificateドクター、Da Vinci プロクター(指導医)profile51北村 寛(きたむら・ひろし)泌尿器科 診療科長富山大学大学院医学薬学研究部(医学)腎泌尿器科学講座 教授【専門分野】腹腔鏡下手術、ロボット手術、がん薬物療法、がん免疫療法、腎移植【略歴】1994年 札幌医科大学医学部卒業2001年 国立がんセンター中央病院泌尿器科チーフレジ

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