がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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低侵襲性で高い確実性患者さんのQOLにも貢献─ダ・ヴィンチ導入の効果や、患者さんにとってのメリットにはどのようなものがありますか?件を実施しています。全国と同様に当院でも前立腺がんの患者数が年々増加しています。2016年11月に内視鏡下手術用ロボット「ダ・ヴィンチ」を導入し、同年12月に県内初となるダ・ヴィンチを用いた前立腺全摘除術を実施しました。現在、泌尿器科ではロボット手術の保険適用となる前立腺全摘除術(前立腺がん)、腎部分切除術(腎臓がん)、膀胱全摘除術(膀胱がん)に対して、ダ・ヴィンチを用いた手術を提供しています。ダ・ヴィンチ手術を希望される患者さんは多いですが、適応に関してはどの治療を選択するのかを医学的に判断して実施します。 前立腺がんは、手術の必要がない方や、高齢などの理由で手術できない方には監視療法や放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)を行いますが、前立腺全摘除術は標準治療としてダ・ヴィンチを使っています。導入から約2年半で120~130件を実施しました。前立腺を全摘した方の10年生存率は9割以上です。術後に前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値が上がり追加治療が必要になることはあっても、前立腺がんで亡くなる方はほとんどいません。 腎臓がんでは、腹腔鏡下腎摘除術や、ダ・ヴィンチによる腎部分切除術などの低侵襲手術を積極的に行っています。切除不能または転移がある場合は、免疫療法や分子標的療法などを行っています。当院のダ・ヴィンチによる腎部分切除術(2016年に保険適用)は約80件で、一般的には腫瘍の大きさは4㎝以下が対象ですが、当科では7㎝以下としています。ダ・ヴィンチ手術をされた方のほとんどは再発していません。膀胱がんでは、内視鏡手術や、2018年に保険診療に加えられたダ・ヴィンチによる腹腔鏡下膀胱全摘除術を実施し、尿路変向として自排尿型回腸新膀胱や回腸導管などの再建を行っています。筋層浸潤性膀胱がんに対しては手術療法のほか、放射線療法や薬物療法を組み合わせた集学的治療を実施しています。膀胱がんは、術後転移や早期再発の可能性があります。   進行の度合いや手術をするタイミングにもよりますが、5年生存率は約70%です。ダ・ヴィンチ手術は、患者さんの体に開けた小さな穴から、鉗子や内視鏡49

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