がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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温熱療法と機器普及へ研究と診療で成果を実証─会長を務めておられる日本オンコサーミア研究会(JORM)ではどのような活動をされていますか?今後の課題は?けました。研究にはいろいろな制限があり、大学の研究として実施しなければならないので、書類作成一つとっても大変でした。臨床試験が終了した現在は、腫瘍温熱療法室の責任を担っています。研究会は現在、富山大学を含めた4施設で構成され、国内での臨床実績を集約・共有し、効果の分析を行っています。近い将来、オンコサーミアを多くの患者さんにがん治療の選択肢として考えていただけるよう、効果と安全性について科学的に実証し、がん治療の質的向上に寄与することを目的としています。課題は、日本でのオンコサーミアの普及です。富山大学でも自由診療が始まったばかりで、まだあまり知られていないのが現状です。なかなか普及が進まない理由には、経済的な面も大きく関わっています。すでに治療機器が開発・製品化されているために研究費が付きにくく、また運営には費用がかかるため、なかなか取り組む施設が少ないという事情もあります。機器は高価で、自由診療であれば償還できますが、逆に保険診療になると簡単にはいかないかもしれない。広まることはいいことですが、実際に国がどういう形で治療機器を承認してくれるかが問題です。オンコサーミアは海外で     の実績があるため、日本でも多くの患者さんに使われれば臨床的に良い効果が出てくることが予想されます。研究会では、まず効果があるかを実証することで、国にオンコサーミアの治療機器を承認していただけるよう努力し続けたいと思っています。そのために、今後は乳がんに対する新たな特定臨床研究も企画準備中です。 きちんとした治療効果や研究成果をデータにできるのが大学です。治療を実施している大学の研究機関としては富山大学が全国で唯一です。また、富山大学の理念の一つに「東西医学の統合」があります。温めるという東洋医学的な側面と、機械で特殊な電磁波をがんに集め自死させるという西洋医学的な側面の両方を持つオンコサーミアは、まさにその理念に沿った治療法です。近年、ゲノム医療が注目を集めています。しかし、そこにもマッチしない人はたくさんいます。がん細胞を可能な限りゼロにするのがベストですが、縮小させることでその人の生活の質(QOL)を上げることもできます。そういった患者さんを広くサポートし、少しでもより良いQOLの持続のためにも、オンコサーミアが役立つことを願っています。この治療をもっと多くの方に知ってもらうため、研究と診療の両面で、着実な成果を出していけるよう努めていきます。また─富山大学附属病院でオンコサーミア治療を行う意義は?部省長期在外研究員)2000年 日米がん研究協力事業海外研究員2004年 富山医科薬科大学医学部 助教授(整形外科) 2007年 富山大学大学院医学薬学研究部(医学) 准教授、富山大学附属病院 診療教授(整形外科) 2009年 富山大学大学院医学薬学研究部(医学)人間科学(1)講座 教授【認定資格・所属学会】日本整形外科学会専門医、日本脊椎脊髄病学会評議員、中部日本整形外科災害外科学会評議員profile47金森 昌彦(かなもり・まさひこ)富山大学大学院医学薬学研究部(医学)人間科学(1)講座 教授【専門分野】腫瘍医学、運動器病学【略歴】1984年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業1999年 米国ネブラスカ州立大学・細胞遺伝子学講座(文

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