がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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標準治療と緩和ケアの中間的治療で貢献─金森教授の専門である整形外科では、どのようにオンコサーミアを使っていきたいとお考えでしょうか。応または高齢などの理由で標準治療が行えない患者さんです。2015年10月に「第1回日本オンコサーミア研究会」で取り組みを報告しました。標準治療ができない末期の患者さん    - ともありましたが、当院では特に乳がが対象のため、簡単には効かなかったり、治療途中で亡くなられたりするこんに対する効果が認められました。皮膚への侵潤例なども含めてかなり進行した症例にも効果が出ています。乳がんでがんが縮小した症例は、2018年9月の「第77回日本癌学会学術総会」で外科学講座の長田拓哉医師らにより発表されています。現在は臨床試験を終え、自由診療になりました。現在まで60弱の症例で治療が行われています。このほか脳神経外科では2016年6月から単独で、国内初となる悪性脳腫瘍に対するオンコサーミアの臨床試験を行っています。対象疾患は肺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、肝臓がん、膵臓がん、皮膚がん、血液系腫瘍、骨軟部腫瘍などの固形腫瘍です。治療を受けるためには、外来受診により、オンコサーミア担当医を決める必要があります。現在6診療科に担当医がいます。院外に通院中の患者さんは紹介状が必要で、それ以外の方はがん相談支援センターが対応するほか、医師による相談日(毎月第1・3月曜)も設けています。治療費は1回5000円(税別)です。自由診療は他のがん治療を同日に行うことはできず、外来通院を原則とし入院はできませんが、完全予約制となっているため、不要な待ち時間はありません。また、働きながら通院できる利点もあり、関東や石川、新潟から受診される方もいます。 治療にはハンガリーのオンコターム社から輸入した低出力型温熱治療器(EHY国外で臨床使用されている基準に沿って、担当医師の指導のもと、専門のコーディネーターが操作します。1日1回ルと考え、効果が見込める場合は繰り返し行います。低い出力から徐々に上げ最高140W程度とし、ベッドに横になり患部周辺に機器を当てて温めます。照射中に多少体が動いても治療には影響しません。 整形外科に関するがんといえば骨腫瘍と軟部腫瘍があります。効果はなかなか難しいですが可能性はあります。2000)を用いています。これまでの経験では硬い骨そのものよりも、筋肉の表面的な腫瘍(軟部腫瘍)に効果が認められます。がんで壊れて軟らかくなっている骨であれば、効果があると思います。オンコサーミア治療は効果にどうしても時間がかかるので、悪性度が非常に高く増殖が速い骨肉腫などには、抗がん剤の方が有効です。富山大学特別研究教授の近藤隆先生(旧放射線基礎医学)から温熱療法の紹介を受けたのがきっかけです。がん治療は標準治療に効果がないとそれ以上の治療がなく、末期になれば緩和ケアがありますが、その中間的治療が、あまり行われておりません。その中間にあたる温熱療法で患者さんに貢献したいと思い、2015年に臨床試験の主任研究員を引き受けました。治療が普及している韓国へ視察に行き、実際の治療現場でレクチャーを受けたり、機器を製造するハンガリーへ工場見学に出向いたりしました。複数の診療科における臨床試験を実施したのは、当院が国内初でした。それぞれの診療科の立場があるので苦労しましたが、患者さんのためにと呼びか─富山大学附属病院のオンコサーミア自由診療はどのような仕組みでしょうか?─金森教授はオンコサーミアにはいつから携わっておられますか?4660分を週1~3回行い、8回を1クー

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