がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
46/66

日本では7施設のみ─温熱療法(ハイパーサーミア)とはどのような治療法でしょうか。─新しい温熱療法であるオンコサーミアはどんな治療法ですか? 温熱療法は、がん組織に熱を加えた場合、42・5℃を超えると、正常組織と比較して急激にがん細胞が死滅する性質を利用しています。がんの種類にあまり関係なく効果が期待でき、副作用が少ないため、特に局所進行がんや再発がんを対象に、集学的治療として実施されています。 ラジオ波やマイクロ波、超音波を用いた温熱療法(ハイパーサーミア)の加温装置が開発され、大きな腫瘍でも治療でき、放射線や抗がん剤との併用で治療効果が高くなるなど一定の成績を収めてきました。一方で、体内の患部に熱を届けるために強めの電磁波を使うため、正常細胞にダメージを与え、治療機器に触れて皮膚がやけどする恐れがあるなどの欠点もありました。 ハンガリーのサース・アンドラーシュ教授が新しいメカニズムを提唱し、理論と技術を実用化させました。従来のメカニズムと異なり、細胞を壊死させるというより、がん細胞の自死(アポトーシス)機能を誘導させ、自然な細胞死を促すものです。悪性腫瘍の細胞膜に特定のラジオ波(13・56MHz)を与えることで、細胞膜を破壊します。従来のハイパーサーミアよりも少ないエネルギーで、深部にある腫瘍だけを縮小させる効果があります。やけどのリスクも低く副作用が少ない治療法で、標準治療を受けにくい患者さんも安心して受けていただけます。開発された機器は、ハンガリーのほかにもドイツ、韓国、中国、台湾などかし残念ながら、日本ではまだ十分な実績がなく、未承認機器です。ハイパーサーミアの治療には公的医療保険が適用されていますが、オンコサーミアは研究または自由診療しかできない状態です。海外ではかなり多くの有効例があり、がんの部位に関わらず効果があると報告されています。脳腫瘍、特に神経膠腫や、標準治療ができない場合の─海外では臨床に用いられているということですが、どのようながんに効果がみられるのでしょうか?オンコサーミアの原理:変調された13.56MHzの電磁波は、がん細胞膜の raft microdomain に対して、小さな出力と低い電圧で熱を効率的に浸透させ、アポトーシス効果を誘導する(Andocs G, et al: Cell Death Discovery 2016より引用)。44  30カ国で臨床に用いられています。し30カ国の臨床で効果オンコサーミア治療(腫瘍温熱療法)の自由診療が2019年2月にスタートした。海外では欧州や韓国など30カ国の臨床現場で実績を上げているが、日本では診療できる施設が国内7カ所とまだ少ない。標準治療が難しいがん患者らへの新たな治療法として期待されるオンコサーミア治療について、腫瘍温熱療法室・責任者の金森昌彦教授(整形外科医)にうかがった。副作用が少ない新たな温熱療法オンコサーミア自由診療を開始

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る