がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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教育やスタッフ養成にも注力─富山大学附属病院の緩和ケア部門の特徴は?梶浦●県内唯一の大学附属病院というより長く、自分らしく生きるために─つらさ・悩みの緩和以外で、緩和ケアに期待できる効果は?梶浦●大きなものとしては、「延命」深井●そのことにも関連するのですこともあり、教育を担う側面は他施設に比べ大きいといえるでしょう。2年前からは、富山大学医学部で緩和ケアに関する講義を行っています。緩和ケアの重要性が、大学側にも認められたということだと考えています。近年は政府も緩和ケアを重視していて、「がん診療連携拠点病院」においては、5年目までの研修医のすべてと、がん診療に関わる医師の9割が緩和ケア研修会を受講していることが求められています。当院におけるこうした研修会の運営も、私たちのチームが担当しています。また、これは始まったばかりの取り  組みなのですが、当院における医療用麻薬の処方の監督・助言を行うためのシステム構築を進めています。能動的なモニタリングとアドバイスを行うことで、より効果的な処方に導けると考えています。実現すれば、他の施設にはあまり見られない取り組みとなるでしょう。護師が多いのは特徴といえるでしょう。認定看護師制度は、ある特定の看護分野において高い水準の知識と技術をそなえた看護師を認定するものです。当院では、看護部の方針として、この認定看護師を積極的に養成しています。現在は、緩和ケアの認定看護師が4名在籍しているほか、他のがん関連の認定を受けた看護師も多くいます。各病棟に1名程度の認定看護師を配置することで、患者さんが医師から深刻な病状説明を受ける際などに同席し、細やかなケアを提供することができると考えています。深井●看護師についていえば、認定看があります。緩和ケアと延命の関連性については、複数の研究があります。最も有名な2010年の研究では、がんを患う複数の人に対して「通常の治療を行い、特に必要と思われる場合のみ緩和ケアを行う」「治療開始時から緩和ケアスタッフが介入し、ケアを行う」という2パターンの治療を行い、結果を比較しました。この研究は、もともとがん患者のQOL(生活の質)を比較調査するものでしたが、「緩和ケアスタッフが最初から介入したケースの方が、患者の寿命が長くなる」という思わぬ結果が出ました。この結果はのちに類似の研究により検証され、現在は主流の考え方となっています。 もともと、緩和ケアは一般的に終末期医療のイメージで語られることが多かったのですが、このような背景もあり、現在はがんの早期から緩和ケアを提供しようという機運が高まっています。が、私は当院における緩和ケアサービス実施状況の変化を調査・研究しています。2018年1月のセンター設立前後の調査を比較したところ、緩和ケアチームへの相談件数と、チームが実際にケアを行った件数が、いずれも倍以上に増加していました。一方で、チームが患者さんに関与している日数は、短くなっていました。これらのデータからは、「緩和ケアチームがより多くの患者さんに、より早い時期から関われるようになったことで、在宅医療への移行や退院までの期間が短縮された」ということが読み取れます。これも緩和ケアの効果といえるでしょう。42

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