がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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患者さんとの信頼関係を築き、がんと向き合う─がん患者さんへの思いを教えてください。ながります。腫瘍のすべてを切除するのが難しい場合でも、残りの腫瘍には抗がん剤治療が有効な場合もあります。また、関節を温存することで、生活に必要な機能を維持することができます。ご自身でご飯を食べることができ、トイレなどの用事も自力で済ませられることは、生活の中での大きな喜びになるのではと思います。これによって、介護に従事する方の負担軽減にもつながるでしょう。ひいては、介護費用や医療費の節約などにも貢献できる取り組みと考えています。仮にがんが体中に転移してしまい、余命が数カ月しかないようなケースでも、手術を行う意義はあると考えています。その数カ月をいかに生きるかは、患者さんにとってとても大事なことだと思うからです。整形外科は「機能外科」でもあります。体の機能維持・向上を通して患者さんのよりよい生活を目指すことは、私たちの使命といえるでしょう。このプロジェクトも、その使命を果たすためのものと考えています。2017年9月に臨床1例目の手術を行い、以降も実績を重ねています。翌18年には、「人工骨幹」の名称で特許を公開しました。現在は国の承認を受け、中部地方の大学に拠点をおいて事業を進めているところです。今後は、さらなる強度向上、内部微細構造の開発、インプラントのコーティングによる骨との親和性向上と感染予防といった課題に取り組んでいきます。臨床への応用としては、新たな手術法の確立、上腕骨をはじめとする他の部位への適応拡大、他の疾患への適応拡大に努めます。 また、この人工骨幹を採用してくださる施設との協力体制を確立し、普及を促進する方針です。富山で立ち上げ、中部圏の医療機関が連携するプロジェクトとして、さらなる発展を目指して取り組んでいきます。 がんを患うのは、言うまでもなくとても大きなことです。患者さんがその事実を受け入れるのに苦労する様子も、多く目にしてきました。ただ、「がん=死」では決してありません。薬を飲みながら仕事をし、普段と変わらない生活を送っている患者さんもたくさんいらっしゃいます。一人でも多くの方がこのような生活を実現し、心身の両面でがんを克服できるよう、お手伝いをしたいと考えています。よりよい治療を行うためには、皆さ      んとの信頼関係を築くことがとても重要です。そのためにも、誠心誠意、懸命に治療にあたらせていただきます。病気を抱え、不安になることも多々あるかと思います。私たちにしてほしいこと、気になることは、何でもご相談ください。─プロジェクトの推移と、今後の展望は?─治療中、もしくは受診を考えている患者さんへメッセージをお願いします。博士1999年 糸魚川総合病院 医師2000年 飯山赤十字病院 医師2004年 富山医科薬科大学附属病院 医員2007年 米国ネブラスカ大学医療センター2008年 富山大学附属病院 助教(整形外科)2012年 富山大学附属病院 診療講師(整形外科)2014年 富山大学附属病院 診療准教授(整形外科)【認定資格・所属学会】日本整形外科学会専門医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 ほかprofile31安田 剛敏(やすだ・たけとし)整形外科 診療准教授【専門分野】脊椎外科、骨軟部腫瘍【略歴】1993年 富山医科薬科大学医学部医学科卒業1999年 富山医科薬科大学大学院医学研究科卒業、医学

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