がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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専門家のチームワークで、多岐にわたる肉腫に対応─整形外科腫瘍班の概要を教えてください。─整形外科で扱うがん治療はどのようなものですか? 整形外科のうち、がん関連の診療を担当するのが腫瘍班です。骨軟部腫瘍を対象に、外来日の月・水・金曜日に診療を行っています。 腫瘍班は、3名の医師と、他学部からスーパーバイザーとして招いた教授で構成されています。プロジェクトによっては、これに研究補助員が加わります。チーム体制を敷いているのは、ひとりの患者さんに対して医師ひとりが対応するのでは、十分な治療を提供できない可能性があるからです。メンバーの協働により、高度な専門医療を提供しています。 整形外科では、「肉腫」というがんを扱います。これは、皮膚、消化管、粘膜などの上皮性細胞に関わるがんとは異なり、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管といった非上皮性細胞に由来した結合組織細胞に発生するがんのことです。骨に発生したものは骨肉腫と呼び、脂肪や筋肉などの軟部組織に発生した場合は、軟部肉腫と呼びます。近年の日本では、高齢化に伴い、軟部肉腫が増えているようです。肉腫自体は比較的まれながんである一方、種類が多いため、診断に難渋することもあります。治療としては、手術による広範切除が基本です。多くの骨肉腫に対しては、抗がん剤による標準的化学治療も可能ですが、軟部肉腫については、標準的化学治療は一部の肉腫にしか確立されていません。ただし、近年、それ以外の軟部肉腫に使用できる薬剤が開発され、標準的化学治療を行うことのできる領域は広がりつつあります。2018年には、悪性骨腫瘍・良性骨腫瘍・悪性軟部腫瘍・良性軟部腫瘍の合計で、80件の手術を実施しました。富山大学における腫瘍班の特徴としては、四肢の骨軟部腫瘍だけでなく、脊椎や脊髄の腫瘍にも対応できる点が挙げられます。これは、当学整形外科の医師が、伝統的にこの分野の研究を重視してきたのが理由です。原発性の脊椎・脊髄の腫瘍には、県内では当院のみが対応できる状況です。─整形外科腫瘍班の治療実績と、特徴を教えてください。28   がんの一種である肉腫の治療を行っている、整形外科腫瘍班。複数の医師や研究者で構成されるチームにより、専門性の高い医療を提供している。数年前からは独自の取り組みとして、3Dプリンターを用いた人工骨幹の開発も進めている。このプロジェクトの中心人物である安田剛敏准教授に、班の役割とプロジェクトの意義をうかがった。自由にデザイン可能な人工骨幹を開発3Dプリンターを活用し、製作スピードと精度を両立

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