がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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発刊にあたって集学的がん診療センター長 龍二当センターは、富山大学附属病院が「地域がん診療連携拠点病院」に指定された2010年に設置されました。この背景には全国のがん診療均てん化を目指した「がん対策基本法」(2006年)があります。それまでの首都圏などを中心とした「高度ながん医療」を全国どこでも受けられるようにしようと定められた法律です。「高度ながん医療」とは、難度の高い外科的切除を行える腕の良い外科医や、早期がんを難しい内視鏡検査などで診断する腕の良い内科医といった、スーパードクターを指す面もあります。しかし、それだけではなく、近年のがん治療においては集学的治療やチーム医療といった、ひとりのドクターだけでは難しい診療を多職種のチームにより支えることが重要となってきました。こうした要請にこたえるべく、当センターではがん患者さんを中心に据えたチーム医療を展開しています。8つの部門のうち、がん治療の主力ともいえるがん薬物療法は多くの看護師、薬剤師を擁した外来化学療法部門が担います。がん患者さんの中には病気に伴う痛みに悩んだり、病気の恐怖に打ちのめされたりする方もいらっしゃいます。そうした場合には心身を和らげる緩和ケアが重要になりますが、それはがん緩和ケア部門が担います。また、病気に伴う悩みは経済的なこと、家族、社会との関係などあらゆる暮らしに影響を及ぼします。そうした悩みに関してはがん相談・地域連携部門にある「がん相談支援センター」のスタッフが対応します。一部 林    のがんでは家族性、遺伝性といわれるものがあり、そうした症例では特別な対応を要します。それに対応するのはがん遺伝相談部門で、「遺伝子診療部(北陸で現在唯一の認定遺伝カウンセラーが常勤しています)」のスタッフと協力して診療にあたります。そのほか、抗がん剤の投与方法を管理するレジメン登録部門、国のがん登録統計を担うがん登録部門、がん患者さんの治療方針を決定するキャンサーボード部門、院内外のがん診療に従事するスタッフ教育を行うがん診療人材育成部門からなります。これらの部門の一端をご理解いただけるよう、本冊子を発刊いたしました。さらに、各臓器から発生するがんですので、従来より各診療科のスペシャリストが当院の高度ながん治療を支えております。多くの診療科の中から、今回は日本で唯一の膵臓・胆道センターを紹介します。また、県内初の実施実績のあるダ・ヴィンチ手術を精力的に行っている泌尿器科、近年急速な進歩で外科診療に見劣りしない治療実績を上げている放射線治療科を取り上げています。がんの早期発見には高度な内視鏡技術が重要ですが、それについては消化器内科から紹介します。近年多くの知見が得られている乳がん、婦人科がんは、それぞれ乳腺科・内分泌外科、産婦人科から、白血病やリンパ腫といったいわゆる血液がんについては血液内科から紹介します。また、がんの骨転移は治療が難しいのですが、3Dプリンターを用いた独自の治療を整形外科から、さらに、他施設ではほとんど経験のないオンコサーミアによる新たな治療の試みを腫瘍温熱療法室から紹介します。上記の各科診療科に加えて2018年より新規に開始したがんゲノム医療については、がんゲノム医療推進センターから紹介します。以上、この冊子を計画した当初よりも盛り沢山になりました。それだけ、昨今のがん治療では皆様にご紹介するべきホットな話題が多いのだと思います。どうぞこの機会に冊子をご覧いただき、集学的がん診療センターのあらましを知っていただければ幸いです。もちろん、ご質問等がございましたら何なりと当センターにお尋ねください。そして、患者さん一人ひとりの診療に少しでも役に立つことが我々の望みです。2019年10月吉日

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