がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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 早期発見で身体に優しく「治るがん」に─近年は治療法の進展も目覚ましいそうですね。オンコサーミアやマクロビオティック食、和漢薬療法も─富山大学附属病院の独自の取り組みを教えてください。線治療、薬物療法があります。手術には、がんを切除して部分的に乳房を残す「乳房温存手術」と、乳房を全摘出する「乳房切除手術」があります。乳房温存手術は乳頭や乳輪を残すことができることに加えて、身体的負担が少なくなり、乳房切除手術はがんが広範囲に広がっている場合に再発の可能性が低くなります。どちらを行うかは、がんの大きさや位置、本人の希望などによって選択します。乳房切除手術後には、患者さん自身の筋肉や脂肪(自家組織)またはシリコンなどの人工物を使って新たに乳房をつくる乳房再建手術もあります。 当科の治療実績は2018年度で70件、このうち乳房切除手術が55%、乳房温存手術が45%を占めています。10年生存率は92%となっており、乳がんは現代では「治る病気」です。 近年は特に、手術時にリンパ節への転移を検査する「センチネルリンパ節生検」の精度が上がり、身体に優しい手術が行えるようになってきました。センチネルリンパ節とは、がんが最初にたどり着くリンパ節で、そのほかのリンパ節への転移がないかを調べるために、手術中に摘出して検査します。このセンチネルリンパ節がどこにあるかを術前に調べる「センチネルリンパ節シンチ」という検査を導入したことで、手術時に最小限のリンパ節を切除するだけで済むようになりました。従来はリンパ節を大きく切除していたため、患者さんの腕がしびれたりむくんだりすることがありましたが、センチネルリンパ節シンチ導入後はほとんどなくなり、患者さんのQOL(生活の質)向上に寄与しています。乳がんは早く見つかれば、小さく取って、100%治る時代になってきています。標準治療が難しい患者さんへの新たな治療法として、「オンコサーミア」(腫瘍温熱療法)を取り入れています。オンコサーミアの治療を実施している大学の研究機関としては、富山大学が全国で唯一です。25 

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