がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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リンパ浮腫・漢方外来で術後の副作用を軽減─産科婦人科内にあるリンパ浮腫外来や漢方外来も特徴的です。─診療の際に心がけていることを教えてください。リンパ浮腫外来は、県内で最初に設けました。手術でリンパ節を取り除いた場合、患者さんの下半身がむくみ、生活に支障をきたすことがあります。弾性ストッキングや弾性包帯を処方し、術後のリンパ浮腫の予防や、リンパドレナージ、セルフケアなどの治療・指導を行います。女性の患者さんに配慮し、女性医師が対応しています。漢方外来はがんだけでなく、月経関連症状や更年期障害など、幅広く対応しています。婦人科腫瘍でいえば、体力回復や免疫機能向上、むくみや抗がん剤治療によるしびれなどの副作用軽減に効果的です。西洋医学に漢方という東洋医学を融合させた、富山大学ならではの先駆的な取り組みが特色です。病気を治すのが最大の目標で、同時に、治療前の状態や元の生活にどれだけ戻れるかが一番大切なことです。しかし症状が重い人に低侵襲性だけを求めると、治るものも治らなくなります。「安全でより効果の高い医療の提供」と患者さんの希望、この両方をすり合わせるため、できるだけ丁寧に患者さんや家族にインフォームド・コンセント(説明と同意)を行います。十分な説明の上で、適切な治療を選択してもらうことを目指しています。患者さんそれぞれに考え方やドラマがあり、抱える背景があります。それをお聞きして、一番良い方法を探していく。患者さんの人生や思いを知り、誠実に対応することを常に意識しています。例えば治療をしたくないと言われた場合、その理由を対話の中で明らかにすることで、患者さんによりよい治療を見つけることができます。これはこの仕事のやりがいの一つです。実はこれは後輩の影響が大きいです。昔は私もどちらかというとクールだったかもしれないですが、後輩の姿を見て「いいな」と思い、見習っています。 臨床は腫瘍学ですが、研究は胎盤です。がん細胞は他の臓器に浸潤し機能を破壊しますが、胎盤の細胞は子宮に浸潤するものの(がんと似た点)、その浸潤が筋肉の三分の一の深さで止まります(がんと違う点)。胎盤の浸潤が止まるメカニズムを研究することで、がんを止めることができるのではないか。これは、現富山大学学長で、産婦人科元教授の齋藤滋先生が最初に始められた研究テーマで、私もその研究がしたいと思い、産婦人科医を志しました。臨床ではがんの患者さんを診て、研究では妊娠をテーマに。離れているように思えますが、分野は類似している。そういう点も産婦人科医の面白みです。産婦人科は女性にとって少し敷居が高いかもしれませんが、閉経後の不正出血がある人は、見逃さず早めに診察を受けてください。不正出血するのは子宮頸がんか子宮体がんです。がん検診も早期発見・早期治療につながります。妊孕性温存を希望する場合は子宮や卵巣を残すことができますが、さまざまな条件を満たすことが必要です。主治医とよく相談してください。卵巣がんは、腹部の痛みや圧迫などの違和感があれば、超音波検査や内診を受けてください。当院の産科婦人科は女性の医師が県内で最も多く、受診しやすい雰囲気です。一人で悩まずに一緒に治療法を考えていきましょう。─患者さんに対してどのような信念をもって接しておられますか?─研究にも力を入れていらっしゃいますね。─最後に、患者さんへのメッセージを。学免疫学)2006年 富山医科薬科大学大学院卒業(医学博士)2007年  富山大学大学院医学薬学研究部産科婦人科学教2013年 米国ブラウン大学留学2015年  富山大学大学院医学薬学研究部産科婦人科学教室 助教室 助教2016年 富山大学附属病院 講師【認定資格・所属学会】日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖免疫学会評議員、日本病態プロテアーゼ学会評議員、日本胎盤学会、日本妊娠高血圧学会、日本癌学会、Society for Gynecologic Investigation、American Society of reproductive immunologyprofile23      中島 彰俊(なかしま・あきとし)産科婦人科 診療准教授富山大学附属病院 講師、医局長【専門分野】産科婦人科一般、婦人科腫瘍【略歴】1999年 富山医科薬科大学(現富山大学)卒業1999年 富山医科薬科大学附属病院産科婦人科入局2002年 富山医科薬科大学大学院入学(内地留学:東北大

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