がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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遺伝子検査で薬の投与を見極め遺伝専門医が全面支援─卵巣がんの最新治療にはどのようなものがありますか。度変調放射線治療なども導入し、副作用の軽減に努めています。卵巣がんの治療は手術と化学療法です。術前化学療法を行い腫瘍を縮小させてから手術することもあります。卵巣がんは腹腔鏡下手術の適応とならないので、開腹手術で卵巣、卵管などを摘出します。腫瘍を除去すればするほど治療効果が高くなるため、積極的切除が基本です。腫瘍が隣接する臓器にかかる場合は、外科や泌尿器科の医師と協力し、手術で徹底的に取り除きます。毎月、病理部と病理カンファレンスを行い、症例の検討をしています。卵巣がんは進行すると再発率が高くなります。しかし再発後でも症例に応じた再発腫瘍の摘出や、抗がん剤による化学療法の継続で、生存率を伸ばすことが可能です。当院は卵巣がんの治療成績が良いのが特徴です。特に、患者数が最も多いⅢ期の方に抗がん剤の維持療法などを行うことで、最近10年間のデータにおいて、5年生存率が70%を超え(通常は45~50%)、高い治療効果を上げています。完治が難しい卵巣がんのⅢ、Ⅳ期の患者さんには、維持療法で良好な状態を保つことが大切です。この維持療法に、2018年1月に新しい内服薬が認可されました。それがPARP阻害剤「リムパーザ」(一般名:オラパリブ)という分子標的治療薬で、BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんに効果があるとされています。当院でも卵巣がんの原因遺伝子を検査することでこの内服薬が使えるようになりました。 しかし、本来はこの薬の投与を見極めるための「遺伝子検査」ですが、副次的に遺伝性乳がん・卵巣がんの発症に関わる家族性腫瘍の発生の可能性も判明します。BRCAの異常が原因で、子に遺伝する確率は患者さんには、治療法が増えるというメリットがある反面、血縁者に与える影響は大きく、本人や家族に不安や悩みが生まれる可能性もあります。そのため、当院の産科婦人科には臨床遺伝専門医が2名います。県内でも数少ない専門医です。さらに院内には遺伝カウンセラーもいます。間違った方向で理解されることのないよう、本人と家族に対してカウンセリングを行い全面的にサポートしています。 卵巣がんは早期発見法がないため初期段階で見つけることが難しく、進行してから発見されることが多い病気です。婦人科がんでは治療法が最も多い疾患ですが、完治が難しいことが大きな問題です。これまで手術療法と化学療法を組み合わせることで、病気の進行を抑える治療を工夫してきました。現在は、子宮体がんで研究を開始し    血液検査から卵巣がんの早期発見を目ている腫瘍中の免疫細胞(T細胞)の特徴を調べる研究を発展させ、通常の指す研究を行っています。これは「治療が難しい疾患なら、早期発見によって完治できる方を増やしたい」という発想の転換です。この研究成果は発展途上であり、患者さんに今すぐ還元できるわけではありませんが、今後発展させたい大きな課題の一つです。─卵巣がんの治療についてはいかがでしょうか。─卵巣がんの研究で進めていることは?2250%(男女差なし)です。卵巣がん

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