がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
23/66

子宮体がん新薬投与に関する免疫治療の応用研究が進む─子宮体がんで新しい治療法の研究が進められていますね。子宮体がんの治療は手術と化学療法です。手術できない方や高齢の方には、放射線療法を行うこともあります。患者さんの年齢だけでなく、体力や本人の意向などから総合的に判断し、一人ひとりに合わせた治療を行います。進行がんに関しては基本的には開腹手術ですが、ステージⅠ期の患者さんには積極的に腹腔鏡下手術を行っています。今後は子宮体がんのロボット支援(ダ・ヴィンチ)手術も見据えています。ただ、腹腔鏡下手術は低侵襲性で回復も早いですが、必ずしもベストとはいえません。根治性や安全面から開腹手術の方がよい場合もあります。 子宮体がんでは骨盤内や傍大動脈のリンパ節郭清を行うことが多いですが、当院では手術中の病理検査を基に、再発のリスクが低くリンパ節を取らなくてもよい患者さん(特にⅠ期)に対してはリンパ節郭清を省きます。リンパ節郭清の有無による予後や5年生存率に差がほとんど見られないため、副作用や合併症による負担が少ない手術を行っています。 2018年に免疫療法である、免疫チェックポイント阻害剤「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)の投与が、進行・再発がんで標準治療が困難な一部の患者さんを対象に、血液がんを除くすべてのがんで承認されました。当科では、特に子宮体がんにおいて、腫瘍内に浸潤した免疫細胞の特徴を臨床研究という形で調べています。この薬がより効きやすい人を絞り込み、一般的な採血で本治療の効果が予測できるのではないかと考えています。さらに富山大学免疫学教室と共同し、将来的には患者さん自身の免疫細胞を利用した、がんの免疫治療への発展を目指しています。産婦人科でこのような研究に取り組むのは全国でも数少ないですが、婦人科がんに苦しむ多くの患者さんを助けたい思いで新規治療の開発に携わっており、大学病院の使命と感じています。子宮頸がんの治療は進行期によって異なり、子宮を温存する円錐切除術、手術(広汎子宮全摘術)、放射線療法を含む集学的治療が行われます。子宮頸がんに関しては腹腔鏡下手術では治療効果が悪化するというデータが出ており、当院ではより安全な開腹手術を採っています。高齢や進行症例などで手術が不可能   な方には、化学療法を併用した放射線療法を主に行い、放射線治療医とチームで治療をしています。当院は、放射線治療において膣内照射や組織内照射を行う県内でも数少ない施設です。強─子宮体がんについてお聞きします。─子宮頸がんの治療法は?21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る