がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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痛みはほとんどなく入院期間も短縮─内視鏡を用いたがん治療のメリットは?1㎝以下なら5年生存率80%─2018年9月、消化器外科と「膵臓・胆道センター」を開設されました。開設後の手ごたえや今後の展望を教えてください。内視鏡のメリットが際立っているのが、消化管です。早期であれば、お腹を切らずに治せるので、入院期間は1週間前後と圧倒的に短くなりました。治療は眠った状態で行い、目が覚めても痛みはほとんどありません。2日後くらいから徐々に食事もできます。退院後は、重労働でなければ、すぐに職場復帰できます。入院期間が短いということは、肉体的、精神的な負担が軽いだけでなく、経済的な負担も軽く済みます。私が医師になったのは1990(平成2)年ですが、まさにこの30年間で内視鏡治療は飛躍的に発展しました。当時は早期の胃がんや大腸がんに対する内視鏡治療が始まったばかりで、がんのある粘膜に注射を打って腫瘍部分を盛り上げ、輪状のワイヤーをかけてパチンと切っていました。この方法では、治療できる腫瘍の大きさは輪にかかる内視鏡治療の対象は、小さくて極々早期のがんに限られていました。それが今では、高周波ナイフで切り取るので、深く浸潤していなければ、5㎝でも10㎝でも内視鏡で取り除くことができます。膵管や胆管の中を見るなどということも、昔ならあり得ませんでした。画像精度も格段に向上し、本当にはっきりと見えるようになりました。胃や大腸なら、早期がんは内視鏡で切除することができます。しかし、膵臓・胆道は早期発見できても、内視鏡では切除できず、外科の先生に手術をお願いするしかありません。そこで、消化器外科の藤井教授と協力して、センターを立ち上げました。 膵臓がんの5年生存率は10%未満です。胃がん、大腸がんは70%前後です。皮膚がん、甲状腺がん、前立腺がんはの低さが際立っています。ただし、膵臓がんも2㎝以下で見つければ、5年生存率50%、1㎝以下で見つけると、5年生存率80%と言われています。だから、1㎝以下で見つけなければいけないのです。しかし、1㎝以下で見つかった膵臓がんというのは、膵臓がん全体の0.8%しかありません。2㎝以下でも、5%です。1㎝以下の膵臓がんでは、自覚症状はまずありません。見つけるためには腹部超音波検査のある人間ドックを受けていただく必要があります。ただ体型的に太った方は見えにくいので、できればオプションでMRIを受けていただきたいと思います。腹部超音波検査やMRIで1㎝の膵臓がん自体が見つかるわけではないのですが、膵臓がんというのは膵管から出てくるので、非常に小さな段階から膵管が拡張してきます。この膵管の拡張という副所見のある方を見つけて2次検査で超音波内視鏡を行うと、小さくても見つかることがあるのです。当センターでは2019年7月、富山西総合病院と連携して新たな「膵臓がんドック」を立ち上げました。血液検査と腹部超音波検査とMRIの3点(左)超音波内視鏡 (右)超音波内視鏡で見つかった7.3㎜の膵臓がん(矢印)1815㎜くらいが精一杯でした。そのため、90%以上です。膵臓がんの5年生存率     

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