がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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外からではなく、胃や十二指腸の中から超音波を当てれば、胃の壁、十二指腸の壁を1枚隔てただけの状態で膵臓が観察できます。空気の影響もまったく受けません。非常に小さな病変も見つかりますし、形態をよく観察することで、がんかどうかの鑑別診断もできます。さらに、がんが疑われる場合は、針を内視鏡に通して挿入し、穿刺ができます。この超音波内視鏡下の針生検が私の一番の専門領域で、2002年からドイツのハンブルク大学に行って修得した技術です。帰国後、日本で普及させ、2010年に保険収載されました。1㎝以下の膵臓がんは、CTやMRIではまず発見できませんが、超音波内視鏡なら可能です。検査と同時に針生検を行って確定診断までできるということで、非常に有用な手技です。 経口胆道・膵管鏡は、直径3㎜という超極細の内視鏡で、胆管や膵管の中に直接挿入して内部を観察したり、病変部の組織を採取したりすることができます。この機器を保有しているのは、北陸では当科だけで、CTやMRIなどでは診断困難なレベルの病変も診断することができます。 2017年に40件だった超音波内視鏡治療の実施件数は、2018年に410件になり、2019年は約600件まで増える見込みです。全国トップクラスの実績です。経口胆道・膵管鏡を含む内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)関連検査の実施件数も、2017年の80件から2018年に294件となり、2019年は500件近くになるでしょう。県内の医療機関からの紹介にとどまらず、県外から新幹線で来院される患者さんもいらっしゃいます。需要は高く、超音波内視鏡を1台から2台に増やしました。今はとにかく人材育成に努めています。 早期の食道・胃・大腸がんに対する内視鏡治療では、胃はもとより、切除が難しい食道、大腸についても力を入れており、各方面から多くの紹介を受けて治療を行ってきました。2018年の早期がんの内視鏡治療実績は、食道24件、胃50件、大腸53件です。肝臓がんに対するラジオ波焼灼療法も、2017年に70件、2018年に水、造影エコー、画像支援システムを積極的に併用し、安全で確実な治療を目指しています。血管内治療も併用した集学的治療を行っています。化学療法は、がん薬物療法専門医が担当しています。他の診療科とも綿密に連携して治療方針を決定しています。消化器の進行がんや消化管間質腫瘍(GIST)に対する治療では、新しい分子標的治療薬が承認されました。さまざまな治験にも参加しており、新薬を上手に使う治療マネジメントを行っています。それから、バルーン内視鏡やカプセル内視鏡は主に小腸に対して使用します。バルーン内視鏡は、通常の内視鏡よりも長く、先端に付いている風船を膨らませたり、しぼませたりしながら、内視鏡を進めます。小腸は「暗黒の臓器」と呼ばれていたのですが、これらの機器によって診断や治療を行うことができるようになりました。国内有数の膵臓・胆道内視鏡のプロとして海外での指導も行う17   63件と治療経験が豊富です。人工胸腹

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