がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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高難度手術、難治疾患の膵臓、難しい分野を克服したい─藤井教授が「膵臓」の道を志した理由は?病院を受診してください。糖尿病の発症と悪化もサインの一つです。膵臓がんが原因で糖尿病になる方が一定の確率でおられます。健康診断で血糖値が高いと言われた、糖尿病になった、などという場合、一度、膵臓の検査をしてほしいです。膵臓がんが原因で糖尿病が急に悪化している場合もあります。また、遺伝も関係しています。膵臓がんにかかったご家族がいる方、本人が乳がんにかかったことがある方は、膵臓がんになるリスクが高いという研究結果が出ています。このたび、富山大学附属病院と医療連携協定を結んでいる富山西総合病院内に「膵臓がんドック」が開設されました(2019年7月)。これは膵臓・胆道センターのプロジェクトの一環で、私や安田教授が関わりながら、特に膵臓に焦点を当てた検診を行います。先ほど挙げたサインやハイリスクのある方はぜひ受けていただき、早期発見につなげていきたいです。高難度手術、難治疾患と   いわれる、難しい分野にチャレンジしてみたかったからでしょうか。私が医師になった当時は、患者さんにとって膵臓の手術というのは本当に命がけでした。亡くなられる方も多く、医療界全体が「膵臓だからしょうがない」と諦めている風潮がありました。それでも私はその状況を改善するため、合併症をなくすための新しいつなぎ方(膵空腸吻合)の開発や、手術の安全性を高める研究を続けてきました。膵臓手術の生存率の低さを克服したい。そこに面白みを感じたのも理由です。 膵臓がんというのは、どんなに上手な手術をしても、どんなに綺麗にがんを取り除いたとしても完治は難しく、すぐに再発します。とすると、これは手術とは別の分野。つまり集学的治療が欠かせません。これまでの膵臓手術、膵臓がん治療とはまた別の、難しい課題に挑んでいます。難治性でいえば、やはり膵臓がんというのは、おそらく人類最大の敵。一番かかりたくない病気だと思います。しかし他の病院で「手遅れだ」と言われても、当院でいろいろな治療をして、手術できた方もたくさんおられます。膵臓がんと言われて絶望的になっている患者さんやご家族に、諦めずに少しでも光を見せてあげたいというのが、私の信念であり、目指すところです。─県内外から多くのがん患者さんが訪れています。どのような信念をもって治療に臨んでおられますか?大学)にリサーチフェローとして留学2009年 名古屋大学消化器外科学 助教 2015年 名古屋大学消化器外科学 准教授 2017年 富山大学消化器・腫瘍・総合外科(第二外科) 教授、第二外科診療部門・消化器外科 診療科長2018年 富山大学附属病院膵臓・胆道センター長併任【認定資格・所属学会】日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本膵臓学会指導医 ほかprofile15藤井 努(ふじい・つとむ)第二外科診療部門・消化器外科 診療科長膵臓・胆道センター長【専門分野】消化器外科一般、肝胆膵外科、膵癌治療【略歴】1993年 名古屋大学医学部卒業2006年 名古屋大学大学院修了、医学博士2006-08年 米国マサチューセッツ総合病院(ハーバード

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