がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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専門的検査、集学的治療、安全な手術で生存率向上へ─今後の生存率向上のポイントとなるのは?るBumgart消化器内科・消化器外科・放射線診断科・放射線治療科・臨床腫瘍部・病理部などの各領域における専門家が緊密に連携し、膵臓・胆道疾患の診断・治療に取り組んでいます。定期的なキャンサーボード(合同カンファレンス)の実施により患者さん一人ひとりの状態に応じた診断・治療を行います。膵臓がんなどの悪性腫瘍においては、診断・手術だけでなく、放射線治療、化学療法、血管内治療、病理診断、緩和医療まで対応します。また、患者さんは大学病院ならではの新規治療方法や新規薬剤の治験も受けていただける可能性があります。現在、局所進行膵臓がんの患者さんに対して、がん細胞を攻撃させるがんワクチンを免疫細胞に投与する、新しい免疫療法の治験も始まっています。2018年10月から紹介や受診いただいた患者さんは8カ月で200名を超えました。県内だけでなく、特に関東や東海、遠くは東北や九州からも来られています。センターの評判を聞いた方、患者さんのご家族が調べて来院される方、日本各地の病院から紹介されて来られる方もいます。症状が進行してしまった方から、早期発見の段階でも位置や年齢によって非常に手術が難しい方まで、さまざまです。私が赴任した2017年4月当時の手術数は50件弱でした。手遅れの状態で切除不能があることを踏まえても、2018年度は2倍以上、さらに2019年度はそれを上回るハイペースで手術を行っており、2年前の3倍近くの150件になりそうです。一つ目は、専門家による専門的な検査です。CTやMRI、腹部超音波、PETでも初期の膵臓がんは見つかりません。その施設に超音波内視鏡を使って検査できる専門家がいるかが重要です。二つ目は、化学療法と手術で取り除く集学的治療。三つ目は、安全な手術です。この3つを推進していくことによって、生存率は上がると思います。国立がんセンターのデータによると、膵臓がんの5年生存率は10%未満。あらゆるがん腫の中で一番低いです。実際の現場の感触ではもう少し生存率は上がってきていると思います。私は頑張ればその数字は不可能ではないと思います。 術後に膵液が膵臓の切断面から漏れ(膵液瘻)、それが動脈を溶かして大出血を起こすことを防ぐため、私が開発した膵臓と腸の新しいつなぎ方であ行っています。この術式は日本の半数の施設で導入されています。このほか、膵臓がんがかなり大きく血管に食い込んでいるような状態で、他の病院では手術できないと断られた事例でも実績を上げています。 これまでも手術の安全性に重点を置き、研究課題としてきました。今後も安全かつ確実、最新の治療ができる高い技術レベルを目指します。良性~境界悪性腫瘍に対しては、膵臓を最大限に温存する術式や、低侵襲な腹腔鏡を l      変法による膵空腸吻合を用いた切除術を行っています。今後は膵臓がんでも、手術支援ロボットを導入することを考えています。膵臓がんを早期発見するのは難しいですが、原因不明の腹痛がなかなか治らない場合、早いうちに専門の大きな─どのような診療体制をとっておられますか。─センター化して患者数、手術件数はどのくらい増えましたか?─安全な手術ということでいえば、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医である藤井教授が開発された術式が、国内外から注目を集めているそうですね。─早期発見のため、膵臓がんのサインといったものはありますか?1410年以内に生存率50%を目指したい。

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