がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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各領域の専門家が緊密に連携─国内初となる「膵臓・胆道センター」が設立されました。その目的と特徴、強みは?界」では、手術前に化学療法(+放射線療法)を行い、がんを小さくしたり抑え込んだりした後に手術を行います。「切除不能」に対しては、主に抗がん剤治療が行われますが、その効果によって「切除可能」となるケースも増えてきました。 国立がん研究センターのデータによると、膵臓がんの死亡数は男性5位、女性3位です。昔は“不治の病”のように言われていました。今でも治療は難しいですが、ここ数年で効果の高い抗がん剤や治療薬が出現し、新しい治療法で治る人が少しずつ増えてきています。中には腫瘍が半分に縮んだなど、今まであり得なかったことが出てきました。化学療法と外科手術を組み合わせたコンバージョン手術で切除可能になった事例が増えました。また、腹膜播種についても腹腔ポートを使った化学療法を行い、腹膜播種が消失し、がんを切除できるようになった事例もあります。 富山県をはじめ、北陸の方に「膵臓や胆道はどの病院でも治療や検査ができるわけではない」ということをもっとわかってほしいという思いがあります。膵臓がんをはじめとした膵臓・胆道疾患は、診断が大変難しく、専門的な検査ができる医師が非常に少ないのが現状です。特に初期段階では一般病院での通常の検査で発見できないことも多く、それが膵臓・胆道がんが予後不良である原因の一つであるとされています。副センター長の安田一朗教授(消化器内科)は日本でも有数の超音波内視鏡のプロです。病変を観察しながら生検する専門技術を持ち、海外でも指導されています。一方、膵臓・胆道の手術は合併症の発生率も非常に高く、消化器外科手術の中でも飛びぬけて難しいとされており、この手術に熟練している外科医は全国でも非常に少ないです。北陸だけでなく、全国的に見ても膵臓・胆道分野の内科・外科の専門家が共に揃う施設はほとんどなく、膵臓・胆道に特化したセンターは国内唯一です。センターの開設により、診断から検査、手術まで一貫した、他にはない専門的で高度な医療をさらに充実させ提供できるようになりました。13 診断から検査、手術まで  膵臓・胆道センター長第二外科 教授藤井 努

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