がん治療の現場から 富山大学附属病院 集学的がん診療センターの先端医療
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完全予約制で自費診療プライバシーも配慮─遺伝カウンセリングはどのように行われていますか?す。これまでは特に診断の場合は、患者さんの中で遺伝性腫瘍が疑われる患者さんを適切に拾い上げ、遺伝カウンセリングを行い、遺伝子検査のメリット・デメリットを理解し納得されたうえで遺伝子検査を行い、治療や積極的な検診の受診を促すなど、がんの早期発見・早期治療につなげることが主でした。今ではこうしたルートを経ずに診断される患者さんが増えています。例えば、乳がんや卵巣がんについては、一部の人が保険診療での遺伝子検査で陽性と出ることで、薬の適用性があります。この検査で陽性であれば、患者さんは期待していた薬剤の処方を受けられることになりますが、その一方で遺伝性とわかる状況になります。また、がん細胞の遺伝子情報を調べるがん遺伝子パネル検査の中で二次的に遺伝性腫瘍がわかる場合など、診断の状況は多彩になっています。がん遺伝子パネル検査を検討する際には、事前に遺伝性の可能性を知りたいかどうか主治医の先生からお話があります。ただ、結果を受けてご自身のがんが遺伝性だとわかったら心配されることは当然のことだと思います。そのため遺伝カウンセリング体制を確保したうえで実施されることが望ましいとされています。遺伝カウンセリングは完全予約制で原則自費診療、1回目は1時間につき8000円(税別)、2回目以降は30分につき4000円(税別)となっています。プライバシーが確保された個室で行われています。遺伝カウンセリングの予約の取り方も外来とは違います。診療科から連絡をもらう場合は、当院で対応できる相談かどうかを確認し、自費であることもご了承いただきます。また、混合診療になるため、診察とは別の日にお越しいただくことになります。遺伝カウンセリングの希望がある場合は、主治医と相談いただくような形を現時点では取っています。また、遺伝性疾患はいろいろな種類があり、相談の背景や目的も多様なため、ご家族についての情報も事前にある程度準備しておく必要があります。 まず、事前に認定遺伝カウンセラーが来談される相談者ご本人とコンタクトを取り、具体的な相談内容やこれまでの経緯、ご家族歴等を聞きます。そこで、「家系図」というものを作成いたします。遺伝カウンセリングを担当する遺伝専門医に確認相談後、日程調整を行い、予約日が決定します。相談内容を踏まえて、遺伝子診療部でカンファレンスを行い、必要に応じて主治医とも検討したうえで、方向性を決め、遺伝カウンセリングに臨みます。 当日は臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラー等の遺伝専門スタッフが対応し、事前に聞き取ったご相談内容やこれまでの経緯、ご家族情報を確認し、相談者が理解できるように、わかりやすくかつ正確な医学情報を提供します。提供する情報としては、対象となる疾患について、遺伝子や遺伝子検査、遺伝について、今後の対応、ご家族への影響等についてです。遺伝子については、次のようなことを説明します。私たちの体は細胞の集まりでできていて、基本的に各細胞の中に同じ60億文字(DNAと呼びます)からなる「ゲノム」という情報をもちます。その中で、2万箇所ほど「遺伝子」と呼ばれる場所があります。人はみな遺伝子の情報を両親からもらうので、2セットずつ同じ遺伝子をもっています。遺伝子は「ヒト」の体の設計図のようなもので、体をつくるための情報や体の機能を維持するための情報が含まれています。基本的にはヒトがもっている遺伝子はほとんど共通していますが、一人ひとり少しずつ違いのある部分(変異や変化と呼ばれます)があり、この違いは、髪の色の違いや病気へのかかりやすさなどの違いと関係しています。遺伝子診療部で主に対象としている遺伝子検査は、遺伝性の病気の原因になる生まれつきの遺伝子の変化があるかを調べる検査です。基本的に採血で行われる検査です。また、遺伝子の情報は一部血縁者と    共有します。そのためご本人だけでな10

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