緩和ケアマニュアル
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 4)抑うつ・不安 心不全は進行性・致死性の疾患であり,その進行期には身体的苦痛のみならず,社会的,心理的,スピリチュアルな苦痛を抱える.他の緩和ケアの対象となる疾患と類似した苦痛もあれば,セルフケアに関連するストレス,突然死への恐怖やデバイスに関連したストレスなど,心不全に特有の苦痛もあり,様々な精神症状を引き起こす.ケア  Ⅱ.7.気持ちのつらさ の項参照 5)せん妄◆精神症状が循環器疾患の予後,意思決定に及ぼす影響心不全患者に抑うつ,認知機能障害が合併すると,予後に影響を及ぼすことが報告されている.また精神症状の合併は意思決定・同意能力に影響を及ぼす.心不全が重症であるほど合併率が高い.ケア  Ⅱ.8.せん妄 の項参照⑵ ICD機能の停止 十分な薬物治療および非薬物治療が行われた難治性末期心不全例においては,ICD作動が及ぼす精神的・肉体的ストレスを十分に検討し,患者・家族とともに十分なコミュニュケーションを図りつつ,医師・看護師だけでなく,臨床心理士や精神科医,緩和医療チームとの密な連携を行い,方針決定する必要があると考えられる.患者・家族,院内スタッフと十分にコミュニケーションが行われないままに,StageDであるという理由だけで一方的にICD機能停止が行われれてはならない.125

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