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病院長対談

富山にしかできないことをやりましょう。

思考は原点、視線は頂点

富山大学附属病院に、日頃からたくさんのご協力を下さってる、富山市の森雅志市長に今回ファミリーパーク使用に関して、感謝状をお渡し致しました。

森市長は、富山市に住んでいる人が未来に希望をもち、若者が夢をもてるよう地に足のついた持続性のあるまちづくりをされております。
日頃から、「思考は原点、姿勢は頂点」と熱い心を持って、人口減少のイメージではなく、20年後、30年後の世代にも評価される取り組みをぶれずに進めておられます。 そんな森市長のお考えと、当院が目指している姿に通じるものがあり、病院のこれからにアドバイスを頂きたく、この度、病院長対談させていただきました。

大学を中核とする新しい健康都市を目指して

塚田 今日はお忙しい中お越しいただきまして、本当にありがとうございます。

森市長(以下、敬称略) こちらこそ、ありがとうございます。

塚田 森市長は、歴史はもちろん、新しいことにも非常に理解が深いという印象を受けます。

 僕はいつも「持続性」の事を考えていまして、30年後ぐらいの社会の姿を予想して、そのなかで、高齢社会においても活力ある暮らしをどういうふうに持続させていけば良いか?まちはどうやったら持続性が高まっていくか?ということを考えています。

塚田 その一つがコンパクトシティですね。

北島先生01

 はい、そうです。ただ、「コンパクト」だからと言って腕力で凝縮させている訳ではなくて「暮らしやすさをどうやったら持続性高く保てるか?」という事ですから、郊外居住を全否定しているわけではないんです。 理想的な目標から言っても4割は推奨エリアに住んでもらって、6割は郊外に住んでいただく。 4割程度が車に頼らなくても暮らせるエリアに暮らしてもらえれば、都市の維持コストを抑える事ができます。たとえば、訪問診療、投薬指導、生活指導等をすると言って保健師がまわっても、駅の近くに住んでもらえれば、自転車で巡回できます。ただ、必ずしも「居住空間を動かす」という事ばかりをしているわけではありませんで、例えばJR高山本線に新しい駅を作りました。今まで駅がなかった所に駅を作ると「駅から500m以内」というエリアが広がりますので、バスも、便数を増やして運行頻度を上げて、今まで居住推奨エリアじゃなかった所も居住推奨エリアになります。そういう2つのアプローチでやっていかなければいけないと思っています。

塚田 その通りですね。そういう二つのアプローチが大切だと思います。
今、私が考えているのは、大学病院の周辺にショッピングの場所ができたり、コンビニが2つ3つできたりすると、それだけで、周囲に住んでいる人が「自分たちが住んでいるところは、買い物するにも便利で、快適な生活がおくれる」となると思いますし、そうなると、今度は、サービスを提供したいと考えるお店の方からこの辺りに出店したいとなって、次第に範囲が大きくなっていく。そういう意味ではこの周辺の地域はもっと良くなる可能性があるなと。そして、最近この辺りに増えている空き家も利用したりして、若者や子供、お年寄りまでも住みやすいと思っていただける状況もどんどん作っていく、そうするうちに次第に街のようになっていく、それが私の考える病院周辺の将来像です。

 (この大学病院の近くの)古沢地区のガラス工房の向かい側の狭い範囲ですけど若干制度を変えて、一般の住宅を建てやすい位置付けにしたんです。すると、ひとりのガラス作家が家を建てて、この間カフェが新しくできました。ガラスに関わる人たちがそこに住むと、まさに「職住近接」です。この場合はルールをひとつ変更したんですが、何でも良いのできっかけさえ作れば、民間が自然に動いていくという事はあると思います。

塚田 確かにそうですね。大学もある程度充実してきたので、後は立体駐車場をもう少し増やして、その中、もしくは近くにお店ができれば、平日の日中、夜間はもちろん休日も周囲の人が気軽に来て頂ける場所になるので、いいなと思っています。「健康面でのサポートはいつでもできる安心場所」、病院を囲んで「住みやすい場所」という環境をつくるためには、街の中心に大学病院があってもいいのではという感じも致します。看護師宿舎がもうそろそろターンオーバー(リフォーム)が必要な時期に来ております。これからは看護師等の職員だけでなく、医学生等が過ごしやすく、若いうちから社会への役割を見出してくれる、周辺環境がとても大切なので、病院の敷地内を彼らの住居を含めた街にすれば、と考えています。もちろん建物が綺麗になるだけでも彼らの印象はかなり違いますし、あとは、たとえばレジデンスのようなものでもいいなと思います。

 確かに、どこかに家賃を払っているわけですから、敷地の中にレジデンスがあればいいですね。富山市がやっているガラス造形研究所の横に20室のレジデンスが2棟建っていますが、あの敷地は市の敷地ですけど、建物は完全に民間の所有です。市の土地に個人が建てて、家賃はもちろん直接貰っていて、市は持ち出しがなくて、でも、建てる人もビジネスとして成立していて。学生たちにも、自分達で管理するなら夜中に急に創作意欲が沸いたときにも、研究所を自由に使っていい、と伝えていますので学校のすぐそばに住むことはメリットがあります。

塚田 いいですね。市長のお考えはとても参考になります。ところで、いくつかのホテルに病院周辺での開発について聞くと、「最初から投資するのはリスクがあるけど、管理なら可能」という所がありました。

 世の中には資金が豊富にある人がおられます。そういう方々はアパート経営をするよりも、こういう固定客が最初からしっかりあって、「空きが無い」ところに投資しようと考えています。

塚田 そうなんですか。そういう情報を聞くと安心しますし、夢が広がりますね。

楽しい、おかしい、おしゃれで人を動かす

塚田 多くの人は「病院は病気になったときだけ行く場所」だと思っていると思います。しかし、もうそういう時代ではありません。海外はすでに病院がコミュニティとなっています。病院は仕方なく行くところ、仕方がないとは思いますが、医療と普段の境界線をなくしたい。とにかく、病気になったら単に行く場所ではなくて、病人でなくても健やかに過ごせる場所にしたいですね。

 早稲田大学は、お買い物帰りの奥さんも通っているし、すでにみんな普通に出入りしていますね。

塚田 本当にそれは理想的だと思います。最近、東京郊外の駅周辺なんかで、病院と街との境界線が分からない物を作ろうとしていますね。もちろん再開発となりお金がかかるので、そんな簡単にはできませんけれど「医療」も、日常生活の中で簡単に受けられる方が良いな、と思います。病院としての役割は、本業の医療のみを提供するという部分だけでなく、すなわち病院内に小さい売店が一つだけある、気持ちだけの郵便局がある、という程度じゃなくて、「スーパー」と呼ばれるものまで併設していることなどが必要になると思います。富山大学病院の新しくできた立体駐車場から病院へつながる通路を歩いているお母さんが「病院の中にもスーパーあるといいよね」って言っておられたのを耳にしまして、やはり日常生活に役立つ機能も必要だなあということを実感しました。

 この辺りは斜面になっている部分を含めてかなりの面積がありますよね。今は有効利用されていない所がいっぱいありますから。スーパーなど、皆さんの生活に直結するものを作るのもいいかもしれません。

塚田 はい、そう思います。
最近、職員専用ですが、本格的なレストランを作りました。職員にもリラックスすることのできる場所をつくりたいと思ったのがきっかけでした。同じように考えると、この病院で働く600人くらいの看護師さんが仕事の帰りに安心して買い物ができるスーパーがあったりするのがいいと考えています。ただそれが次第に「職員だけ」というのではなくて「周りの人も利用できますよ」という場所になってもいいなというふうに考え始めて、最後は「街」を想像するようになりました。シンガポールや台湾、韓国などの病院ではすでにそうなっていて、(社会と病院のあいだに)境界線があるようでないような病院です。そういえば市役所なんかも、境界線があまりないような感じですよね。

 (市役所は)もともと不特定多数が入ってくる空間ですから。市役所の1階の食堂って、市の職員よりも外から来られる方が多いです。理由はシンプルで、レストランが美味しいものを出しているからなんです。美味しいものの効果はスゴイし強い。

塚田 そうそう、「美味しい!」の力は、すごいですね。結局、美味しくないとダメなんですよね。

 ガラス工房にあるカフェに来る人のお目当ては、やはりガラス工房じゃなくてカフェなんです。

塚田 そういうことはありますよね。職員専用レストランの「ルポゼ」はホテルニューオータニ高岡さんに入っていただいて目的はかないました。それ以上に想像外にも、平日利用を考えていたんですが、意外にも医師も含めた職員が家族を連れて土日とかも利用していることを知って、ビックリしました。宣伝はしていないので「日曜日なんかどうなるのかな?」と心配していたんですけどね、驚きました。

 すごくいい話ですね。僕がいつも言っているのは、人を動かすのは「楽しい・おいしい・おしゃれ」この3要素で、アルファベットで言うと、大事なことは、Humanism(ヒューマニズム)とRealism(リアリズム)とRomanticism(ロマンティシズム)これをH2R(エイチツーアール)と勝手に言っています。「おいしい」の中には「お得感」も含めていますが、そういう要素を磨いていくと人は動くと思っています。


塚田 なるほど、3年前の私が担当した学会で、美味しくなくて当たり前だった学会での昼食の弁当を、富山のとびっきり美味しいものを皆さんに提供したことは、今でもどこに行っても言われています。その折は、市長はじめ富山市の皆さんに大変お世話になりました。無理もたくさん聞いていただき、本当に支えて頂き感謝しています。そのおかげもあって「あの弁当の味が忘れられない」や「どの種類の弁当もおいしかった!」という声や、あとは「電車(セントラム)のラッピングが良かった」という声も聞かれまして、これはもう様々な学会における語り草になっています。電車にしろ、お弁当にしろ、学会は経費を使うべきでないという世論がありましたが、新しく取り組んだことは、お金はなるべく使わないで富山を強く印象づけることでした。前線で動いている運営スタッフは大変でしたけど、私も既にあるものには興味がなく、人が集まる意味を最大限広げたいと思いました。

 先生が学会で取り組まれたようなことを、仕掛けている地方都市って少ないんでしょうか。

塚田 残念ながら、多くはありません。良くも悪くも学会は形式化している部分もあるので、チャレンジするところが少ないというのが現状かもしれませんね。それに、富山というのは実に宝物が多くて皆さんが行きたい!と思うようなところが多いし、訪れる人にとってもかなり魅力的な街なんだということを知り、その機会が私自身に伝えてくれるところがたくさんありました。森市長のおっしゃるように、富山の魅力をH2Rにちゃんと変換して、お伝えができれば、より富山ファンは増えると思いますよ。実際、学会で富山ファンになった先生方はたくさんおられました。

 そうなんですか。それは嬉しいですね。ありがとうございます。無理を聞いて良かったです(笑)

(次回につづく)

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