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お知らせ

2018年9月から、がんゲノム医療外来を開設します

がんゲノム医療を希望される患者さんへ

 富山大学附属病院、がんゲノム医療推進センターではがんゲノム医療を希望される患者さんを対象として「遺伝子パネル検査」を行なっています。本検査を希望される方はこの冊子をお読みになり、内容をご理解いただいた上で、現在かかっている病院・診療科の主治医にご相談下さい。当該施設よりがんゲノム医療推進センターへの予約受付を行います。また検査申し込みの最終決定は、がんゲノム医療推進センターを受診し、担当医とよく相談の結果、決定されます。

第1章 がんゲノム医療について

1.1 ゲノム医療とは

ゲノム医療とは、個人の「ゲノム情報」をもとにして、その人の体質や病状に適した「精密な医療」を行うことを言います。具体的には、これまでの採血や画像検査などの一般的な検査に加えて、品質と信頼性の担保されたゲノム検査を用いて診断を行い、最も有効な治療・予防及び発症予測を患者さんに提供することを指します。現在の医療では、様々な臨床検査の結果によって診断を行い、診断された疾患の治療ガイドラインに沿って治療を行います。同じ疾患を患っている患者さん全員に同じ治療・投薬を行うということです。しかし、同じ治療・投薬を行なっていても、ある人は効果があったり、ある人は効果がなかったり、またある人は合併症を起こしてしまったり、重篤な副作用によって場合によっては死亡してしまうなど、個人によって効果や副作用は様々です。
がんゲノム医療では、個々人のがんのゲノム解析を行い、最適な治療法や薬剤の選択を行うことで、治療の効果を最大限に引き出し、副作用を最小にとどめるなど、個人の病態を考えた最適な医療を提供できると期待されています。

1.2 ゲノムの基礎知識

・遺伝子とは
人間の身体は、「細胞」という基本単位からなっており、遺伝子とは、細胞の基本構造をなすタンパク質を合成するための、設計図のようなもので、親から子へと受け継がれます(遺伝)。細胞の中心に「核」と呼ばれる部分があり、この中の「DNA」が「遺伝子」として働いています。個々の細胞は、この遺伝子の指令に基づいて合成されたタンパク質によって役割を果たし、人間の体は健康に維持されています。
・ゲノムとは
遺伝子は非常に長いDNA鎖でできています。ゲノムとは遺伝子を含むDNA鎖全体を指し、全ての遺伝情報が含まれます。
・がんの成り立ち
細胞が分裂する時に遺伝子を複製(コピー)するため、同じゲノム情報が全ての細胞に存在します。この遺伝子を複製する時に、間違い(変異、エラー)が起きてしまい、この変異ががんの原因になり、変異が蓄積することによってがんが惹起されます。この変異は、がんの原因になりますが、次の世代には引き継がれません。

1.3 がんに関する基礎知識

・分子標的薬
がん細胞は、様々なタンパク質の異常により増殖することがわかってきました。この異常は遺伝子の変異によって引き起こされるものです。分子標的薬は、特定の分子を狙い撃ちし、がん細胞の増殖を防いだり、破壊したりする薬です。従来の抗がん剤が、がん細胞だけではなく正常細胞も破壊してしまうのに対し、分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定の分子に狙いを定めて攻撃したり増殖を抑えたりします。
・希少がん
希少がんとは、年間発生件数が人口10万人あたり6人未満のがんを指します。確定診断が難しく、治療薬の開発が進まないため、治療満足度が低く、重篤度と緊急性が高い疾患領域です。国立がん研究センター希少がんセンターのホームページに、様々な希少がんの解説が掲載されています。
(「国立研究開発法人国立がん研究センター希少がんセンター」https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/index.html
・原発不明がん
十分な検査を行ってもがんが最初に発生した臓器がはっきりせず、転移巣だけが大きくなったがんのことで、頻度はがん全体の約1~5%とされています。がん細胞がどこの臓器に由来するか特定することが困難なので、手術で完全に取り除くことができず、根治させることが容易でない病態であると考えられます。

第2章 遺伝子検査について

2.1 遺伝子パネル検査について

がんは遺伝子の変異によって引き起こされる病気ですが、同じ臓器に発生しても、がん細胞に生じている遺伝子の変化は患者さんごとに異なります。すでに日常で行われている遺伝子検査は特定の遺伝子で起こっている一部の変異しか調べることができませんが、遺伝子パネル検査は、患者さんのがん組織や血液を用いて数十~数百の遺伝子変異について網羅的に解析を行います。そこで得られた遺伝子の変化の情報を利用し、がんの診断や治療法の選択に役立てることができます。
また、原発不明がんや希少がんの場合、治療法の選択に迷うことがありますが、本検査によってがんの原因になっている遺伝子の変化が推定されれば、その変異に基づいた治療(分子標的薬)が可能となる場合があります。標準治療に不応となった場合でも、がん細胞で起こっている遺伝子変化に対して効果が期待される治療薬の情報(臨床研究を含む)が得られる可能性があります。一方、本検査を利用しても患者さんのがんの診断や治療に有効な情報が得られない可能性もあります。

2.2 遺伝子パネル検査でわかること

遺伝子パネル検査を行うことで、患者さんのがん組織中に認められた遺伝子の変化が判明し、その変化に対して効果が期待できる治療薬や臨床試験の情報を得ることができます。得られた薬剤や臨床試験の情報の中には、国内では承認されていない薬剤や実施されていない臨床試験も含まれます。
本検査はがん関連遺伝子(体細胞遺伝子)を見つける検査ですが、数%で遺伝性疾患に関する遺伝子変異が見つかる可能性があるため、検査を受ける前に、その可能性について十分説明を受けておく必要があります。遺伝性疾患に関する遺伝子変異の情報の取り扱いには倫理的な細心の注意を払う必要があります。

2.3 検査で使用する検体について

本検査で使用する検体は、手術または生検時に採取された病理組織や、患者さん本人の血液を用います。保存された検体を使用する場合、検査に使用する検体の保管基準に沿ったものを使用します。
検査に使用する検体は、以下の基準を満たすFFPE標本検体です。検体の種類によって異なりますが、1回の検査に10μメートルの厚さで薄切された未染色のFFPE票本を10枚程度要します。
検体は腫瘍がなるべく多く含まれている部位を選択する必要があります。
(腫瘍含有量として20%以上、できれば50%以上)
FFPE (Formalin Fixed Paraffin Embedded)標本
手術や生検で採取した組織をホルマリン液で固定し、パラフィンというろうそくを溶かしたようなものでブロック状にし、それを薄くスライスしてスライドガラスに貼り付けたものです。手術、生検検査を行った医療機関で用意してもらいます。

検査の流れ

第3章 受診手続について

3.1 他の医療機関から

現在かかっている医療機関の主治医の先生に相談をして下さい。がんゲノム医療の適応と判断された場合、所定の用紙に必要事項を記入し、当該医療機関から「がんゲノム医療推進センター」に連絡してもらってください。後日、当センターより予約日時の案内を行いますので、当該医療機関より連絡をもらい、指定の日に受診をしてください。

申し込み用紙(PDF)
Tel 076-434-7725
Fax 076-415-8862

3.2 富山大学附属病院から

富山大学附属病院に通院中の方はかかっている診療科の主治医にご相談ください。

第4章 費用について

「がんゲノム医療」は自由診療で行われます。すなわち、検査費用は全額自己負担となります。また、検査の結果により、治療薬が示唆された場合でも、保険適応外の薬剤の場合、治療費も全額自己負担となる可能性があることを予めご了承ください。
金額については別項をご参照下さい。

富山大学附属病院で受診可能な遺伝子パネル検査

先進医療B

1.NCCオンコパネル 対象遺伝子数114遺伝子
国立がん研究センター中央病院を主機関として行われている先進医療Bに基づいた臨床試験です。2018年4月からスタートした国を挙げての臨床試験で、全国11のがんゲノム医療中核拠点病院が中心となり、さらに100の施設からなる連携病院で受けることができます。富山大学附属病院では中核拠点病院である京都大学と連携することにより9月から実施が可能となりました。臨床試験の条件に見合った患者さんが対象となり、先進医療費用50万円程度の自己負担がかかります。

自由診療

2.OncoPrime 対象遺伝子数 対象遺伝子数 223
京都大学が3年前から導入している、アメリカの民間会社によるパネル検査です。検査の概念はNCCオンコパネルと違いはありません。全くの自由診療なので、先進医療による臨床試験ほど対象者制限はありませんがその適応は医学的に判断されます。また、費用は先進医療よりもやや高額になります。

3.Guardant360(血液検体) 対象遺伝子数 73
上記2つのパネル検査が病理組織検体からDNAを取得するのに対し、本検査の対象は血液中に漏れ出てきたがん細胞のDNAです。ですから、組織検体が何らかの事情で取れない方も対象になります。ただし、血中に漏れ出たがん細胞由来のDNAを検出しなければならず、腫瘍量の多い進行がんの方が対象になります。

以上のように現在3種類のパネル検査が実行可能です。どの検査を選択するべきかなどは患者さん個々の事情によって違ってきますので、担当医と相談の上決定してください。

NCCオンコパネル検査の詳細

検査方法
DNA配列読取装置(NextSeq 500/550システム;illumina社)を使用し、表1に示す遺伝子に生じる変異(SNV、Insertion、Deletion、増幅)、及び表2に示す遺伝子の融合を検出します。


表1 変異(SNV、Insertion、Deletion、増幅)検出対象遺伝子

ABL1 CHEK2 HRAS MSH2 PRKCI
ACTN4 CRKL IDH1 MYC PTCH1
AKT1 CREBBP IDH2 MYCN PTEN
AKT2 CTNNB1/b-catenin IGF1R NF1 RAC1
AKT3 CUL3 IGF2 NFE2L2/Nrf2 RAC2
ALK DDR2 IL7R NOTCH1 RAD51C
APC EGFR JAK1 NOTCH2 RAF1/CRAF
ARAF ENO1 JAK2 NOTCH3 RB1
ARID1A EP300 JAK3 NRAS RET
ARID2 ERBB2/HER2 KDM6A/UTX NRG1 RHOA
ATM ERBB3 KEAP1 NTRK1 ROS1
AXIN1 ERBB4 KIT NTRK2 SETBP1
AXL ESR1/ER KRAS NTRK3 SETD2
BAP1 EZH2 MAP2K1/MEK1 NT5C2 SMAD4
BARD1 FBXW7 MAP2K2/MEK2 PALB2 SMARCA4/BRG1
BCL2L11/BIM FGFR1 MAP2K4 PBRM1 SMARCB1
BRAF FGFR2 MAP3K1 PDGFRA SMO
BRCA1 FGFR3 MAP3K4 PDGFRB STAT3
BRCA2 FGFR4 MDM2 PIK3CA STK11/LKB1
CCND1 FLT3 MDM4 PIK3R1 TP53
CD274/PD-L1 GNA11 MET PIK3R2 TSC1
CDK4 GNAQ MLH1 POLD1 VHL
CDKN2A GNAS MTOR POLE  

表2 融合検出対象遺伝子

ALK ERBB4 NRG1 PDGFRA
AKT2 FGFR2 NTRK1 RET
BRAF FGFR3 NTRK2 ROS1

OncoPrimeの検査の詳細

検査方法
DNA 配列読取装置(illumina MiSeq およびHiSeq 2500)を使用して、試料のゲノムから表1 に示す遺伝子に生じる変異(SNV、挿入、欠損)及び表2 に示す遺伝子に関連した転座を検出します。検出した変異及び転座が生じている場合に有効と思われる薬剤の情報、及び関連する臨床試験の情報をレポートします。


表1 変異(SNV、挿入、欠損)検出対象遺伝子

ABL BLM CRLF2 ESR1 H3F3A MAP3K1 NFE2L2 PIK3R2 SETD2 TP53
ABL2 BRAF CSF1R EZH2 HNF1A MAPK1 NOTCH1 PIK3R5 SF3B1 TP63
ACVR1B BRCA1 CTNNA1 FAM123 BHRAS MDM2 NOTCH2 PMS1 SMAD2 TP73
AKT1 BRCA2 CTNNB1 FANCA IDH1 MDM4 NOTCH3 PMS2 SMAD3 TPMT

AKT2

BTK CYP1A2 FBXW7 IDH2 MED12 NOTCH4 PPP2R1A SMAD4 TRAF7
AKT3 CARD11 CYP2C19 FGFR1 IGF1R MEN1 NPM1 PRDM1 SMARC A4 TSC1
ALK CASP8 CYP2C9 FGFR2 IGF2R MET NRAS PTCH1 SMARCB1 TSC2

APC

CBL CYP2D6 FGFR3 IKZF1 MITF NTRK1 PTCH2 SMO TSHR
AR CCND1 DAXX FGFR4 IL7R MLH1 NTRK2 PTEN SOCS1 TYMS
ARAF CCND2 DDR2 FLT1 INSR MLL NTRK3 PTPN11 SRC U2AF1
ARID1A CCND3 DNMT3A FLT3 JAK1 MPL PALB2 RAD50 SRSF2 UGT1A1

ARID1B

CCNE1 DPYD FLT4 JAK2 MRE11A PARP1 RAD51 STAG2 VHL
ASXL1 CDC73 EGFR FOXL2 JAK3 MSH2 PAX5 RAF1 STAT1 VKORC1
ATM CDH1 EP300 G6PD KDM6A MSH6 PBRM1 RB1 STAT3 WRN
ATR CDK4 ERBB2 GATA1 KDR MTHFR PDGFRA RET STK11 WT1
ATRX CDK6 ERBB3 GATA2 KIT MTOR PDGFRB RICTOR SUFU XPC
AURKA CDKN2A ERBB4 GATA3 KLF4 MYC PDK1 RNF43 TERT XRCC1

AURKB

CDKN2B ERCC1 GLI1 KRAS MYCN PGR ROS1 TET2  
AXIN1 CEBPA ERCC2 GNA11 MAML1 MYD88 PHF6 RPTOR TGFBR2  
BAP1 CHEK1 ERCC3 GNAQ MAP2K1 NBN PIK3CA RSPO2 TNFAIP3  
BCL2 CHEK2 ERG GNAS MAP2K2 NF1 PIK3CG RSPO3 TOP1  
BCOR CREBBP ERRFI1 GRIN2A MAP2K4 NF2 PIK3R1 RUNX1 TOP2A  

表2 転座検出対象遺伝子

ALK

BCR ETV4 MLL RARA BRAF EGFR ETV6 PDGFRB ROS1
ETV5 ETV1 EWSR1 RAF1 TMPRSS2 PDGFRA RET      

遺伝子パネル検査における注意事項

本検査はいまだ発展途上にあるため、通常の診療に比較して不確実な部分や、意に沿わない結果が得られる場合があります。以下に注意点として挙げますので、検査受診前に慎重に検討をして下さい。

1.がん遺伝子パネル検査の不確実性

がん遺伝子パネル検査は急速に発展した先進技術ですが、その反面、不確実性をはらんでいます。検査を行っても治療選択に役立つ情報が得られない可能性や、候補となる薬剤が見つかったとしても、それが適応外、未承認といった場合には使用できない場合があります。また、解析に用いた検体の品質によっては解析自体が不成功に終わってしまう可能性もあります。

2.遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性

遺伝子には細胞の設計図のような役割があることから、DNAシークエンスによって人の個性がわかる場合があります。特にある特定の疾患が遺伝子配列によって規定される病気(遺伝病)が発見される場合があり、その場合は将来の病気の発症や、血縁関係のある家族の方への影響も考慮されます。ただし、がん細胞の遺伝子変異は一般には親から子に受け継がれたものではなく、生活の中で徐々に変異が起こっているもの(後天性)です。したがって、多くの場合、遺伝病の心配が生じることはありません。ただ、ある種のがんでは先天的な遺伝子の配列から発症しやすいもの(家族性腫瘍)があり、その場合には別の配慮が必要になります。このような遺伝子変異が見つかった場合、あなたは、結果開示を希望する権利と、結果開示を拒否する権利があり、その意思を「検査同意書」で確認いたします。遺伝子変異が見つかった場合、その結果を知ることで、今後発症するかもしれない病気の早期発見・早期治療に役に立つ可能性があります。一方、知ってしまったことで、あなたやあなたの家族が不安や精神的負担を感じる可能性もあります。

3.費用負担

本検査は保険収載前の先進医療あるいは自由診療として行われるため、健康保険が適応されず患者さんに自費負担が発生します。また、検査後の治療費は含まれません。本検査の結果によって治療を行う場合は、あなたが現在治療を受けている病院の担当の先生と相談の上実施することになります。この検査で見つかる薬剤の中には、国内で承認されていない薬剤(未承認薬)や、国内で承認済みでも、あなたのがんに対しては保健適応されていない薬剤が含まれます。また、これらの薬剤を使用して治療を行う場合、保険診療の対象外となるため、高額な治療費の負担が必要となる場合があります
さらに検査レポートが作成できない場合でも費用がかかります。この検査では提出していただいた検体(がん組織)の状態(古い検体や組織破壊が進んでいる検体など)によっては、最終的なレポート作成ができない場合があります。このような場合、解析中止までに要した検査試薬代、病院及び検査委託会社での事務手続き等の費用の負担が必要になります。

4.代理人への結果の説明について

諸事情により、あなたへの説明が困難となった場合などは、事前にあなたに指定していただいた代わりの方(代理人)に結果を説明させていただくことがあります。そのため、あなたの結果を伝えてほしい代理人の方の名前と連絡先についても同意書に記載していただくことになりますのでご理解ください。

遺伝子パネル検査の料金

先進医療B

NCCオンコパネル
□マルチプレックス遺伝子バネル検査 1回につき 518,800円

自由診療

□がんゲノム医療相談料 1回(1時間につき) 8,640円

OncoPrime
□ OncoPrime がん遺伝子検査 1回につき 941,760円
  検体組織の状態に起因する検査中止の場合 349,920円
 (検体の状態等により正常な遺伝子検査ができなかった場合をいう。)

Guardant360
□ Guardant Liquid Biopsy がん遺伝子検査 初回 1回につき 397,440円
□ Guardant Liquid Biopsy がん遺伝子検査 2回目以降 1回につき 293,760円