包括的脳卒中センター

診療体制・業務内容

脳卒中は、脳の血管に知らぬ間に発生した病気(動脈硬化、脳動脈瘤など)が原因で、直前まで元気にしていた人が突然倒れる恐ろしい病気です。現在も心疾患、がん、肺炎とともに日本人の主要な死因の一つとなっています。さらに脳卒中の後遺症によって不自由な生活を強いられている患者さんは年々増加していると考えられています。特に、全国よりも早いペースで高齢化が進んでいる富山県では、今後、脳卒中の予防、治療にはこれまで以上に注力すべき時代を迎えています。
こういった事情を背景に、富山県における脳卒中医療をさらに向上させるため、2018年4月に包括的脳卒中センターを開設しました。これまでも当院では脳卒中の患者さんの治療にあたってきましたが、さらに数多くの患者さんを受け入れて今まで以上に高度な医療を提供することを目的としています。
当センターでは、365日24時間体制で脳卒中の患者さんを受け入れて、神経内科(内科治療)、脳神経外科(手術、血管内治療)、救急科、麻酔科、歯科口腔外科、看護部、リハビリテーション部、検査部、放射線部、薬剤部など富山大学の人的資源を最大限に活用し、治療成績の向上に努めます。当院は高速道路のICも近く、ヘリポートも備えているため、県内全域をカバーし、さらに岐阜県飛騨地区、新潟県糸魚川地区からの救急も受け入れています。

特徴・特色

  1. 脳梗塞
    脳血管が動脈硬化や心臓にできた血栓が血流に乗って運ばれてきたために突然詰まる病気です。神経内科・脳神経外科の医師で十分に協議し、最適と判断した治療を行います。発症から4時間半以内であればt-PA(組織型プラスミノゲンアクチベーター)という薬剤を静脈注射し、血栓溶解療法を行います。また、適応があれば早急にカテーテル治療に移ります。足の付け根から閉塞した脳血管までカテーテルを誘導して、血栓回収器具(ステント)で血栓を捕まえます。これをゆっくりと回収して、脳血栓を除去します。発症から短時間で血栓が回収できた場合、麻痺や言語機能が治療直後から劇的に回復する患者さんもいます。この治療は来院からいかに早く再開通させるかが重要となります。そのための適切な診療体制を構築し、各職種が一丸となって実践しています。
    脳梗塞
    頚動脈狭窄や脳動脈硬化、もやもや病が原因で脳梗塞を発症する患者さんに対しては、適切な内科治療に加えて、手術(頚動脈内膜剥離術、バイパス術など)・血管内治療(ステントによる血管拡張術など)も行っています。
  2. 脳出血
    最大の原因は高血圧であり、動脈硬化によって変性した穿通動脈の破綻が引き金となります。近年は抗血小板薬(アスピリンなど)や抗凝固薬(ワーファリンなど)を服用している患者さんが脳出血を合併する頻度が増加しています。軽度の出血の場合は内科治療(血圧管理など)を行います。中等度の症状があり血腫量がある程度大きな場合は、開頭あるいは神経内視鏡による血腫除去手術を実施しています。
  3. くも膜下出血
    大部分が脳動脈瘤の破裂によるもので、出血は脳の表面を急激に広がり、脳全体に強いダメージを与えます。脳動脈瘤の再破裂は予後の悪化を招くので、再出血の予防がきわめて重要となります。可及的速やかに開頭による脳動脈瘤頚部クリッピング術、あるいは血管内手術による脳動脈瘤コイル塞栓術を行います。また、発症後2週間は脳血管攣縮による脳梗塞を発症する危険性があります。これに対して予防薬の投与や、髄液ドレナージを用いたくも膜下血腫の早期除去を行います。
    くも膜下出血

    脳動脈瘤頚部クリッピング術
    A)くも膜下出血の脳CT、B)顕微鏡で見た脳動脈瘤、C)脳動脈瘤にクリップをかけた後

    包括的脳卒中センターを開設するにあたり、これまでの脳神経外科、脳神経内科病床に加えて脳卒中病床を増床し、看護体制も整えました。また緊急手術・血管内治療が必要な患者さん、重症の患者さんはECU(救急治療室)にて状態が落ち着くまで治療を行います。
    患者さんの病状に合わせて、発症後早期から積極的にリハビリテーションを実施し、病気で障害された運動・言語・摂食嚥下機能等の早期回復を目指します。当院は、富山西リハビリテーション病院と医療連携協定を締結しています。これにより、患者さんの紹介と受け入れ連携が進み、回復期リハビリ病棟や療養病棟、デイハウスへと、シームレスに繋ぐことができます。

診療スタッフ

職名 氏名 担当分野 資格
センター長 黒田 敏 脳神経外科 日本脳神経外科学会 専門医・代議員
日本脳卒中学会 専門医・理事
日本脳卒中の外科学会 理事
日本脳循環代謝学会 理事
日本脳神経外科救急学会 理事
日本ニューロリハビリテーション学会 理事
日本脳卒中の外科学会 技術指導医
日本小児神経外科学会認定医
副センター長 中辻 裕司 脳神経内科 日本内科学会 指導医
日本神経学会 専門医
スタッフ 赤井 卓也 脳神経外科 日本脳神経外科学会 専門医
日本脳卒中学会 専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
神経内視鏡学会 神経内視鏡技術認定医
日本小児神経外科学会認定医
  富田 隆浩 脳神経外科 日本脳神経外科学会 専門医
  秋岡 直樹 脳血管内治療科 日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医
  柏﨑 大奈 脳神経外科 日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医
日本脳卒中の外科学会技術認定医
  堀 恵美子 脳神経外科 日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本脳卒中の外科学会技術指導医
  道具 伸浩 脳神経内科 日本内科学会 総合内科専門医
日本神経学会 専門医
日本脳卒中学会 専門医
  温井 孝昌 脳神経内科 日本内科学会 認定内科医
日本神経学会 専門医
日本脳卒中学会 専門医
  若杉 雅浩 救急科 日本救急医学会 専門医
日本麻酔科学会 指導医
日本臨床高気圧酸素・潜水医学会 専門医
  廣田 弘毅 麻酔科 日本麻酔科学会 指導医
  釈永 清志 手術部 日本麻酔科学学会 専門医・指導医
  山口 百々穂 歯科口腔外科  
  丸池 小百合 看護部  
  上野 智浩 検査・輸血細胞治療部  
  伊藤 貞則 放射線部  
  服部 憲明 リハビリテーション科 日本リハビリテーション医学会 専門医・指導医
  今西 理恵子 リハビリテーション科 日本整形外科学会 専門医・認定運動器リハビリテーション医・認定リウマチ医
日本リハビリテーション医学会 専門医・認定臨床医
  石黒 幸治 リハビリテーション部  
  小笠原 明美 薬剤部  

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