診療体制

当院では1990年に全国に先駆けて脳血管内治療を取り入れ、以来、3000件を越える血管内治療を手がけてきました。脳血管内治療の中でも希少疾患である硬膜動静脈瘻の治療件数が特に多く、これまでに300例以上の経験があります（硬膜動静脈瘻の発生頻度は人口100万人につき1年間に3〜4人という、非常に稀な疾患です）。また、突然に脳血管が詰まる脳梗塞も、カテーテルを使って脳血管を開通させることができます。患者さんの状況により、発症から16時間以内であればカテーテル治療が有効であるとされています。さらに、特殊な脳動脈瘤ではパイプライン®と呼ばれるステントを使用する最先端の治療があります。これが施行できるのは県内では当院だけです。カテーテル治療は患者さんに対する負担が低いので、手術の受けられない患者さんでも治療をお引き受けすることが可能です。治療からの回復が早いため早期の退院が可能で、医療経済効果も良好です。
脳神経外科の中には現在、血管内治療専門のスタッフが3名（特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会 指導医2名、専門医1名）常駐しております。当科ではこれまでの20年間に4名の指導医、13名の専門医を育成し、県内外の基幹病院に専門スタッフを配置してきました。

主な対象疾患

脳血管障害（脳卒中）、脳腫瘍を中心に診療を行っております。

• 脳動脈瘤：通常の脳動脈瘤だけでなく治療困難と診断されている脳動脈瘤
• 動脈狭窄症：頚部頚動脈狭窄症、頭蓋内主幹動脈狭窄症
• 血管奇形：脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻
• 多血性脳腫瘍（摘出術術前の腫瘍塞栓術）
• 超急性期脳梗塞（血栓回収治療）

高度な専門医療

• 特定機能病院として脳神経外科診療と24時間の緊急診療体制の実践、および、富山県内外の関連施設との連携による地域医療への貢献を通じて、患者さんの信頼に応えられる高レベルの診療を目指しています。
• 脳血管内治療：脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、フローダイバーター（パイプライン）、頚動脈狭窄症に対するステント留置術、硬膜動静脈瘻に対する経動脈的・経静脈的塞栓術、脳腫瘍に対する術前の栄養血管塞栓術、超急性期脳梗塞に対する血栓回収療法などが主なものです。頭を切らない反面、特殊かつ高度な知識と技量が求められ、指導医、専門医といった資格を有する必要があります。2009年度には脳血管内治療の全国学会を富山で開催したほか、毎年、富山で教育講習会を開催しています。治療材料や機器の開発も日進月歩で、最適な医療をいち早く供給し、病状の改善につとめています（秋岡、柏崎）。

専門外来

・血管内治療外来

脳動脈瘤に対するコイル塞栓術やステント留置術、頚部内頚動脈狭窄症に対するステント留置術、血管奇形に対する塞栓術を行なっています。特に血管奇形の一種である硬膜動静脈瘻は希少であり、そして、治療に難渋する疾患ですが、当科では豊富な治療経験があります。
脳動脈瘤では手術のクリッピング術と血管内治療（コイル治療とパイプライン治療）、頚部内頚動脈狭窄症では手術の血栓内膜剥離術とステント留置術のそれぞれ二つの治療方法を比較検討し、より適した手術方法を選択することができます。

主な検査・設備など

• 脳血管内治療を有効・安全に行うためには精度の高い血管イメージと血流動態のデータを得ることが何よりも大切です。それらに基づき、血管のどこをふさぎ、あるいはどこを拡げるかなどを綿密に検討します。
• 当院では脳血管内治療に使用する専用のX線撮影装置(Cアーム)を3台保有しており、緊急治療を含め、状況に応じた治療が可能です。その中の１台は手術室にあるArtis
  Zeegoです．この手術室は手術と血管内治療を同時に行えるハイブリッド手術室となっています。
• 適切、的確な治療をするための血管イメージ診断機器として3テスラーMRI、1.5テスラーMRI、オープンMRI、核医学スペクトCT、全身CTなど最新の検査機器を保有・駆使しています。

診療科紹介

脳血管内治療科は開頭術では治療の困難な疾患を中心に、また開頭術の負担に耐えられない患者さんや、開頭術との併用でより効果が期待できる疾患を含んで治療の対象としています。これまで30年以上の経験の積み重ねにより、当科の治療成績は術後合併症率が約1％、死亡率は0.05％と大変低く、安心して治療を受けて頂くことができます。

診療科長　　秋岡　直樹

スタッフ紹介

外来担当表