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診療科・中央診療施設等のご案内

第二内科診療部門 循環器内科

第二内科診療部門
循環器内科

診療体制

心不全・不整脈・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)・心臓弁膜症・心筋症・肺高血圧症・末梢動脈疾患などの様々な循環器疾患を対象に、最新、最先端の医療を取り入れ、患者さん一人ひとりに最適な信頼できる安全な医療を提供しています。心不全に対しては最適な薬物治療を基本に,重症心不全に対して補助人工心臓まで導入して新しい治療に取り組んでいます。不整脈(心室不整脈、心房細動、発作性上室性頻拍)に対するカテーテルアブレーションをはじめ冠動脈や末梢血管に対するカテーテル治療、心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症)に対するバルーン形成術を行っています。また増加する高齢者の大動脈弁狭窄症に対するカテーテル的弁置換術(TAVI)や僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(MitraClip)、慢性肺血栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術にも取り組んでいます。2019年より植込型補助人工心臓治療を実施しています。また、2020年からは、心原性脳梗塞の予防手術として経皮的左心耳閉鎖術を開始し、国内でも有数の治療件数となっています。臨床経験豊富なスタッフが最適な治療法を選択し、十分な説明を行った上で、治療を実施しております。

主な対象疾患

  • 心不全(重症心不全、急性心不全、慢性心不全、心臓移植後・植込型補助人工心臓植え込み)
  • 虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)
  • 不整脈(心房細動、心室不整脈、発作性上室性頻拍、遺伝性不整脈など)
  • 心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症)、心筋炎、心膜炎、感染性心内膜炎
  • 心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症など)
  • 肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症、慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症など)、肺塞栓症
  • 末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)
  • 成人先天性心疾患

これらの循環器疾患を対象として、薬物療法、非薬物療法による管理を行っています。

高度な専門医療

心血管系は、大きな血管でつながれた全身の主要臓器に血液を供給する役割を持っています。循環器内科は、心臓や血管の疾患が全身に及ぼす影響を常に考慮しながら、大学病院として最先端の医療を提供するだけでなく、患者さん一人一人への特徴に基づいた的確な診療を常に心掛けています。6床の高度治療室(HCU)を備え、救急心血管疾患への24時間対応の診療体制を敷いています。種々の循環器疾患に対しては心臓外科あるいは臓器別を越えた診療科との連携のもとに、全身管理と集中治療が行える体制にあります。さらに循環器疾患の長期管理や予防に対する新しい手法の導入、生活習慣病の予防などに取り組んでいます。

1.外来で行う検査について

  • 心電図(安静・運動負荷):心臓の電気活動を観察します。
  • トレッドミル運動負荷心電図:心電図を取りながら運動してもらう検査で、狭心症等の検査です。
  • 24時間ホルター心電図:24時間携帯型の心電図をつけてもらう検査で、その間の不整脈や狭心症の有無をチェックします。
  • 心臓超音波検査(経胸壁・経食道):超音波を用いて心臓の動きを直接観察する検査です。
    心臓超音波検査(経胸壁・経食道)
  • 心臓CT検査
    Siemens社製SOMATOM Forceを導入しています。この装置は少ない被ばく量と少ない造影剤量で精細な冠動脈CT画像を撮像することができ、カテーテル検査を行わなくても冠動脈疾患を診断することができます。画像解析はカテーテル治療を行う医師が自ら行っており、検査から得られた情報を診断のみならず治療時にも活用することで、より安全な治療が可能となります。また、下図のようにステント留置後の確認検査をCT検査で代用することも可能です(ステントの種類・太さによります)。

    心臓CT検査
    冠動脈CT画像

    冠動脈CT画像

  • 心筋シンチグラフィー:心臓の筋肉の造影検査で、微量のアイソトープ(放射性同位元素)を用います。
    循環器内科
    循環器内科
  • 血管内皮機能検査:超音波を用いて動脈の内皮機能から動脈硬化をチェックします。

2.入院して行う検査・治療について

    • 心血管カテーテル検査
      心血管カテーテル検査
      心血管カテーテル検査

      狭心症や心筋梗塞、弁膜症、心筋症、先天性心疾患、肺高血圧症などの循環器疾患を診断し、治療方法の決定や手術前の評価を行います。カテーテルとは、内腔を有する太さ 2〜3mmの細い管の事です。手首や右首、肘、太ももの付け根の皮膚に痛み止めの局所麻酔をし、そこから血管の中を通してカテーテルを心臓まで進めます。心臓を養っている血管(冠動脈)や心房・心室の中にカテーテルを到達させ、心臓の中の圧力を計測するとともに、冠動脈、心室に造影剤を流して、心機能の評価に大変重要な情報を得ることができます。通常、体の中をカテーテルが通過しても痛みは感じません。検査台に1時間程横になっていただいている間に検査は終了します。この検査は広く一般に行われており、当院においても安全に行われています。

    • 経皮的冠動脈形成術(PCI)
      冠動脈疾患全般(急性心筋梗塞、不安定狭心症、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞など)を対象とし、特に急性冠症候群と言われる急性心筋梗塞・不安定狭心症の患者さんに対しては24時間・365日緊急でカテーテル治療(PCI)を行える体制を整えています。また、低侵襲な(体への負担が少ない)検査・治療を心がけており、緊急時を含めほとんどの症例でカテーテルは手首から挿入し、積極的に心臓CTによる診断を行っています。

    • 複雑病変に対するPCI(石灰化病変・左主幹部病変・慢性完全閉塞病変)
      1)石灰化病変 動脈硬化が進行することで、狭窄部に骨の様に硬い石灰化病変が出現します。これは通常のカテーテル治療(PCI)で用いるバルーンでは十分拡張することができません。石灰化を削りとることができる特殊な器具(ロータブレーター、Diamondback 360°)の使用認可を厚生労働省より得ています。人工透析を受けている患者さんによく見られる石灰化の進んだ冠動脈に対する治療に威力を発揮し、これまで大きな合併症なく良好な成績を得ています。

      提供:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社
      2)左主幹部病変 通常は冠動脈バイパス術の適応となる病変です。当院では心臓血管外科と相談の上、適応のある症例では積極的に左主幹部病変にもPCIを行っています。
      3)慢性完全閉塞病変 PCIの中でも最も難しい治療の一つです。閉塞血管の支配する心筋がまだ生きていると判断される場合、積極的に治療を行っています。

    •  経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)
      1)大動脈弁狭窄症とは?
      大動脈弁は、心臓の左心室と大動脈のあいだにある”扉”です。この”扉”の開きが悪くなり、十分な血液を全身に送り出すことができなくなる病気、これが大動脈弁狭窄症です。多くは弁の加齢変性によって起こるため、高齢化に伴い患者さんが増えています。初めのうちは無症状ですが、狭窄の程度が高度になると胸痛や失神、呼吸困難などの症状が出現し、手術をしないと予後が非常に悪い病気です。
      経カテーテル的大動脈弁留置術
      2)治療法は?
      狭窄が軽度のうちは降圧薬などの薬物療法を行います。狭窄が進み症状が出現すると、外科手術(大動脈弁置換術:胸の真ん中を切開後、人工心肺を用いて心臓を止め、硬くなった弁を取り除き人工弁に置き換える手術)が必要となります。多くの患者さんにおいて外科手術は安全に受けていただくことが可能ですが、この病気は高齢者に多いため動脈硬化疾患(脳梗塞、狭心症など)や呼吸器疾患、肝臓病などを合併する方も多く、3割以上の方が手術に耐えられないと判断され、為す術なく看取らざるを得ないのが現状でした。
      3)TAVI:経カテーテル大動弁置換術(Transcatheter  Aortic Valve Implantation)とは?
      手術リスクが高い患者さんやご高齢の患者さんに対して、カテーテルを用いた体への負担が小さい治療がTAVI(カテーテルに人工弁を乗せて大動脈弁まで運び、留置する手術)です。カテーテルの挿入経路として、足の付け根から行う最も低侵襲な大腿動脈アプローチが第一選択となりますが、足の血管が細い等の理由で治療に適さない場合は、心臓の先端から行う心尖部や鎖骨下動脈および上行大動脈アプローチを行います。

      胸を全くあるいは大きく切開せず、人工心肺を使用しないため、患者さんへのメリットとして以下のものがあります。
       ・体への負担が少ない(治療翌日から歩行が可能)
       ・入院期間が短い
      通常10日で退院が可能で、退院後はすぐに元の生活に戻れるだけでなく、心臓の機能が大幅に改善することから治療前にはできなかった色々な活動が可能となります。高齢のため体力の低下している方や(おおむね80歳以上)、その他の病気で手術のリスクが高い方がTAVIの対象となり、当院の専門の医療チーム(ハートチーム)でその適応を判断いたします。また、透析患者さんでもTAVIを受けられるようになりました。
      私たちは、2015年5月に北陸で初めてTAVIを開始し、2023年3月までに450例の治療を行いました。この治療は第二内科(循環器内科)、第一外科(心臓血管外科)、麻酔科および臨床工学技士・放射線技師・看護師・臨床検査技師・理学療法士によるハートチームを形成し、それぞれの専門分野の知識・技術を持ち寄ることで初めて治療可能となります。現在のところ手技成功率100%で30日死亡率=0.3%、比較的多いと言われているペースメーカー追加治療=5%と非常に安定した成績で治療を行っております。尚、2021年よりこれまで認められていなかった透析患者さんに対するTAVIも、北信越地区で唯一当院で施行可能であり、富山県内だけでなく、石川県や新潟県、長野県、岐阜県といった近隣の病院からも患者さんをご紹介いただき、TAVIを受けていただいた患者さんは元気に退院され、活動的な生活をされています。
      現在、風船で広げるタイプの人工弁であるSAPIEN3に加え、自分の力で広がっていく(自己拡張型)タイプのEvolut FX、Navitorが使用可能です。患者さんの病態に合わせて、より安全で、より効果的な人工弁の選択が可能となっています。
      経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)関連サイト
      http://tavi-web.com/
      http://www.benmakusho.jp/
      提供:エドワーズライフサイエンス株式会社、株式会社メドトロニック

    • 外科手術をしない僧帽弁閉鎖不全症の治療:経カテーテル僧帽弁クリップ術
      1)僧帽弁閉鎖不全症とは?
      僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間にある弁で、この弁の閉まりが不十分なため左心房に血液が逆流する病気が、僧帽弁閉鎖不全症です(図1)。軽度であれば薬物療法で経過観察が可能ですが、重症になると息切れ・倦怠感・入院が必要となる心不全を発症するため、これまでは外科的手術(僧帽弁形成術や置換術)が根本的な治療として行われてきました。しかし、心臓の機能が悪くなっていたり、他の病気を持っている、または高齢者の場合、手術の危険性が高くなるため手術が出来ない、あるいは積極的にお勧めできない患者さんがいらっしゃいました。2018年4月よりMitraClipシステムを用いた経カテーテル僧帽弁クリップ術による僧帽弁閉鎖不全症の治療が日本で可能となりました。当院は、北陸地域において初の認定施設となり、2018年9月より治療を行っています(2023年3月現在、富山県において唯一の施行施設)。
      僧帽弁開鎖不全症
      2)MitraClipを用いた経カテーテル僧帽弁クリップ術の実際
      僧帽弁は前尖と後尖の2枚の弁葉からなっており、この前尖と後尖をクリップでつなぎ合わせることにより逆流を少なくする治療です(図2)。
      MitraClip
      実際の治療は、食道に挿入した経食道心エコーの画像を見ながら行うため、全身麻酔下での治療となります。足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、右心房から左心房に穿刺を行い、左心房内に8mm径のガイドカテーテルを挿入します。先端にクリップを装着したクリップデリバリーシステムをガイドカテーテルの中から挿入し、経食道心エコー画像やレントゲン画像を見ながら僧帽弁の逆流部位に向けクリップを操作します。クリップが良い位置に来たらクリップで僧帽弁の前尖・後尖をつまみ、クリップを閉じることで逆流を減らします。逆流が十分に減らない場合は、何度でもクリップのつまみ直しが可能であり、また1個のクリップでは不十分と判断される場合は、2~3個のクリップを追加することも出来ます。クリップを僧帽弁に留置後、足の付け根を止血し治療が終了となります。開胸や心臓を止めて人工心肺を使わないため、通常は翌日から歩行が可能で早期に退院することが可能です(図3)。
      MitraClipによる治療前後の
僧帽弁開鎖不全の麥化
      3)MitraClipを用いた経カテーテル僧帽弁クリップ術の適応
      経カテーテル僧帽弁クリップ術は、外科的手術の危険性が高い、あるいは不可能と判断された場合に適応となります。
      具体的には、高齢者(だいたい80歳以上)、以前心臓手術を受けられている、心臓の機能が低下している、悪性腫瘍を併発している、日常生活の質が落ちている(杖歩行や軽度認知症など)があげられます。さらに、この治療はクリップで僧帽弁を閉じる治療であるため、僧帽弁の形態によってはMitraClipを用いた治療が困難な患者さんもいらっしゃいます。
      適応につきましては、循環器内科に5日程度入院していただき、全身状態の評価、経食道心エコーによる僧帽弁の形態評価などを行い、カテーテル治療専門医・エコー専門医・心不全専門医・心臓血管外科専門医・麻酔科医などからなるハートチームで検討して、適応の有無を評価します。
      経カテーテル僧帽弁クリップ術についてご相談・ご質問がありましたら、かかりつけの先生と相談の上、当院第二内科までご連絡ください。
    • 心房中隔欠損症(ASD)に対する閉鎖栓治療
      1)心房中隔欠損症とは?
      生まれながらにして左心房と右心房の間の壁に穴(欠損孔)があいており、左心房から右心房へ血液のもれが生じる病気です。出生児の約1500人に1人生じると言われており、この病気はほとんどが無症状であるため乳幼児健診や学校心臓検診で心臓の雑音や心電図の異常から発見されます。しかし、学校検診が開始されたのは1970年代初めであり、それ以前に学校を卒業された方は病気の存在に気づかず生活されています。欠損孔を介して左心房から右心房に流れる血液の量(短絡量)によって、手術が必要かどうかが決まりますが、手術が必要な患者さんが、成人まで無治療であると心不全や不整脈を起こす危険性があります。また右心房から左心房へ血栓などが流れることで脳梗塞を生じることもあります(奇異性脳塞栓)。
      心房中隔欠損症(ASD)に対する閉鎖栓治療
      ・外科手術
      人工心肺を用い一時的に心臓を止めて、欠損孔を閉鎖します。手術手技は確立されており安全性の非常に高い治療です。
      ・カテーテル治療(小児・成人とも北陸で唯一当院のみ施行可能)
      足の付け根の静脈(大腿静脈)から閉鎖栓とよばれる小さな道具を心臓内まで持ち込み、心房中隔を挟み込むことで穴をふさぎます。この治療の良いところは胸を切ることなく、足の付け根から数mm程度のごく小さな皮膚切開で済むことです。
      治療は全身麻酔で行いますが、治療時間は1時間程度と短く、体への負担も少ないため、治療後2日での退院が可能です。カテーテル治療はとても優れた治療法ですが、万能ではありません。壁に空いた穴の場所によっては治療ができない場合もあります。当院では治療の前に心臓の状態を詳しく調べて、カテーテル治療がよいか外科手術がよいかを心臓血管外科と相談し慎重に判断しています。
      <<カテーテル治療の適応>>
      二次孔型心房中隔欠損症で,
      1)欠損孔のバルーン伸展径が38 mm 以下,
      2) 右心系の容量負荷所見、右心不全
      3)前縁を除く欠損孔周囲縁が5mm 以上あるもの,または
      4)肺体血流比が1.5 未満であっても心房中隔欠損症にともなう心房性不整脈や奇異性塞栓症を合併するもの.
      房中隔欠損症(ASD)に対する閉鎖栓治療
      関連サイト
      http://www.sjm.co.jp/general/amplatzer/index.html
      提供:St. Jude Medical Japan Co., Ltd.
    • 僧帽弁狭窄症に対する経皮的経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)
      僧帽弁狭窄症に対する第一選択の治療法です。
      近年は狭窄症の原因となるリウマチ熱の減少に伴い、僧帽弁狭窄症の患者さんも少なくなっています。
      手術による交連裂開術と同様の有効性があるため、適応のある患者さんには積極的に治療を行っています。
      <<適応>>
      1. 僧帽弁口面積1.5cm2以下。
      2. 中等度以上の僧帽弁逆流がない。
      3. 左房内に新鮮な血栓がない。
      4. 中等度以上の大動脈弁狭窄(AS)が合併していない事。
      5. 4を前提として心エコーで僧帽弁の形態評価。
      僧帽弁狭窄症に対する経皮的経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)

      提供:東レ・メディカル株式会社

    • 抗凝固療法が困難な場合の心房細動による脳梗塞予防法である、経皮的左心耳閉鎖術
      1)心房細動と脳梗塞の関係は
      脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳に障害を受ける病気です。発症すると、寝たきりや認知症になり、場合によっては死に至ることもあります。脳梗塞の3大原因として、細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、血管が狭くなりその部分に血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓の中にできた血栓が脳に流れていくことで血管が詰まる「心原性脳梗塞」があります。
      心房細動は、心臓の上半分の部屋(心房)が小刻みに不規則に震える不整脈です。加齢とともに増加し、80歳以上の男性で4%、女性では2~3%に心房細動があるといわれています。2020年の統計では、わが国の患者数は約100万人、富山県内では約1万人と推定されています。自覚症状は動悸や脈の乱れ、胸苦しさなど多岐にわたり、初期は症状が強くても慢性期には症状を感じにくくなります。
      心房細動が生じると、心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなります。特に左心耳という部位で血栓が形成されやすく、この血栓が左心耳から剥がれて脳の血管に詰まってしまうことで脳梗塞を発症します。心原性脳梗塞は脳の広範囲に障害が及ぶため、心房細動を発症した患者さんでは脳梗塞の予防が必要になります。
      2)心房細動が原因となる脳梗塞を予防するには
      心房細動による自覚症状の有無にかかわらず、脳梗塞の予防が必要です。主な脳梗塞の予防法は、血をさらさらにして血栓を作りにくくする「抗凝固薬」の内服でした。現在多くの患者さんがこの治療を受けておられ、有効性が確立された治療です。
      しかし抗凝固薬を内服すると、胃や大腸など消化管からの出血や、脳内出血を引き起こす場合があります。また高齢者の場合、転倒時の怪我による出血も問題です。このような出血リスクが高く、長期にわたって抗凝固療法を行えない患者さんを対象とした新しい脳梗塞予防治療が、「経皮的左心耳閉鎖術」です。
      3)経皮的左心耳閉鎖術とは
      心房細動で脳梗塞を発症する血栓の90%以上は、左心房の一部である「左心耳」と呼ばれる部分で形成されます。この手術では、カテーテルを脚の付け根の静脈から心臓の中まで進め、左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN:ウォッチマン)を左心耳の入り口に留置することで血栓のできる左心耳を閉鎖します。全身麻酔で治療を行いますが、脚の付け根の5mmほどの傷で済むため、体への負担が小さく、治療翌日から普段通りの生活ができ、治療2日後には退院できます。留置した左心耳閉鎖デバイスが心臓内の組織で覆われるまでしばらくは抗凝固療法が必要ですが、治療の約45日後に行うエコー検査で問題がなければ抗凝固薬を中止できます。これまでのところ、ほとんどの患者さんで抗凝固療法を中止できています。
      わが国では2019年に始まった新しい治療で、実施できる病院は全国でも約130施設と限られています(2023年4月現在)。富山県内では2023年4月現在、当センターでのみ実施しています。また、北陸で唯一の「プロクター(手術指導者)」が在籍しています。プロクターとはWATCHMANの適応の判断や技術指導を行うことができるスペシャリストのことで、当センターでは上野医師がプロクターに認定されています。
      この経皮的左心耳閉鎖術は、心房細動による脳梗塞発症リスクが高い一方で出血リスクが高く長期に渡って抗凝固療法が行いづらい患者さんが対象となります。出血リスクが高くても左心耳の大きさや形状が本デバイスに適していない場合や心房中隔欠損症術後の場合など、この治療が受けられない場合もあります。心房細動に対する抗凝固薬でお悩みでしたら、ぜひお気軽に当院にお問い合わせください。
      経皮的左心耳閉鎖術 経皮的左心耳閉鎖術
    • カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)
      1)カテーテルアブレーションとは?

      カテーテルアブレーションとは?

      カテーテルアブレーションとは、不整脈の原因となっている部位をカテーテルを用いて焼灼する治療法です。ボールペンの芯くらいの太さのカテーテルを右足の付け根から挿入し、血管を通して心臓まで挿入します(図1)。カテーテルの先端から高周波による熱エネルギーを加えることにより、不整脈の原因部位を焼き切って治します。主に心房細動、発作性上室頻拍、心室頻拍、心室細動などの脈が速くなる不整脈が適応になります。一般的な手術時間は2〜3時間ですが、不整脈の種類によっては静脈麻酔による鎮静下に行いますので、術中の苦痛はほとんどありません。
      2)心房細動に対するカテーテルアブレーション
      当科で最も頻度が高いアブレーション対象疾患は心房細動です。心房細動は、肺静脈という血管から発生した異常な電気信号が心房に伝わることにより、電気の渦が発生して起こることが知られています(図2左)。したがって、肺静脈と心房のつなぎ目の部分を焼灼して電気信号が伝わらないようにする肺静脈隔離術という治療を行います(図2右、赤い点が焼灼部位)。高周波心筋焼灼術では、病状が進行して肺静脈隔離術のみでは心房細動が止まらなくなってしまった場合でも、肺静脈以外の部位にまで治療の範囲を拡大することが可能です。

      心房細動に対するカテーテルアブレーション

      3)クライオバルーンアブレーション
      当科では2016年4月より、冷凍バルーンを用いて心房細動を治療する治療法(クライオバルーンアブレーション)を行っております。冷凍バルーンは液化亜酸化窒素という気体を用いて冷却される仕組みになっており、これを肺静脈の入口の部分に押し当てることにより、肺静脈周囲の組織を凍結させて肺静脈を隔離します(図3)。この治療では2〜3分程度の冷却で1本の肺静脈を一括で隔離することができるため、手術時間を短縮することができます。それに伴い、手術による身体の負担の軽減や合併症の減少が期待されます。

      クライオバルーンアブレーション

      4)心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)に対するカテーテルアブレーション(図4)
      当科では、心室頻拍や心室細動といった致死的不整脈に対する薬物・非薬物療法を行っています。特に、器質的心疾患(心筋梗塞や心筋症、弁膜症などによって心筋が傷んだ状態)に合併した薬物治療抵抗性の心室頻拍や、“ぽっくり病”として知られるブルガダ症候群に対し、積極的にカテーテルアブレーションを行っているのが特徴です。通常行われる心内膜側(心臓の内側)の治療だけではなく、必要に応じて心外膜穿刺(“みぞおち”から針を刺して心臓の外側にカテーテルを挿入する手技)を行って心外膜側から治療する難易度の高い手技も行っています。また電気的嵐(electrical storm)による心原性ショックで機械的補助循環が必要になった症例に対しては、即日カテーテルアブレーションを行い、補助循環の早期離脱を図っています。
      これら重症不整脈は集学的治療を要する事が多く、不整脈専門医・心臓カテーテル治療の専門医・植込型補助人工心臓管理医の3者が緊密に連携し、緊急の症例にも常に対応できる体制を整えています。

      心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)に対するカテーテルアブレーション

    • 心不全に対する非薬物療法
      (心臓再同期療法(CRT)、ASV、CPAP、在宅酸素療法、など)
      適切な薬物療法を行っても心不全症状がよくならない場合、これらの非薬物療法の導入を検討いたします。これらの治療により症状の改善や緩和、さらには心機能をよくできる場合があります。また、ASVやCPAPといった陽圧治療、夜間酸素療法の処方も適時行っております。

重症心不全と機械的補助循環
心不全は多くの場合、薬物治療が主体となりますが、急激に心機能が低下する場合には薬物治療では血行動態を維持できないことがあります。その代表は広範囲の心筋梗塞であり、収縮期血圧が90 mmHg以下になるいわゆる心原性ショックを伴う場合です。同様の心原性ショックはウィルスなどの感染から心筋全体に炎症を起こす急性心筋炎、特にその重症な場合の劇症型心筋炎でもみられます。
このような心原性ショックの治療に広く使用されているものが次の3つの補助循環です。1つ目は大動脈内バルンポンプIABPで(図1)、カテーテル治療を実施可能な多くの病院で使用されています。
【大動脈内バルンポンプIABP】

図1:大動脈内バルーンポンプ(IABP)

これは大動脈内にバルンを挿入し拡張と収縮を心周期に合わせて繰り返すことにより、冠動脈の灌流を維持し、また後負荷を減らすことで心収縮力を増加させます。主として、圧補助という意味で有用な補助となります。このIABPはリスクの高い冠動脈インターベンションや開心術の前後などにもよく使用されてきました。 

しかし、収縮期血圧がほとんど触知不可能な程度にまで低下した重症ショック症例や心室細動・心室頻拍を繰り返すような致死性不整脈合併例などでは圧の補助だけでは全身の臓器灌流が保てないので、経皮的心肺補助PCPSを使用します(図2)。 
【経皮的心肺補助PCPS】
図2:経皮的心肺補助(PCPS)
これは大腿静脈から挿入したカニュラで右心房から脱血して人工肺で酸素化した後、大腿動脈に返すシステムで、ベッドサイドでも挿入可能で緊急時にも間に合います。IABP同様、当院では24時間365日いつでも施行可能です。
1分間に約3リッター弱の流量は補助可能ですので、流量維持のためにはある程度の効果が期待できます。しかし、体格の大きい人の場合、また全身の炎症や感染合併による臓器酸素需要の増加など、様々な局面で流量が不十分となることがあります。
また、肺をバイパスするシステムの構成上、肺うっ血が高度の場合にはそれを直接治療することができません。そればかりか、動脈に返血するため、後負荷は増加し、肺うっ血はむしろ増悪することすらあります。心機能の改善が数日以内に生じた場合は速やかにPCPSから離脱することも可能ですが、それ以上長期化するとカニュラ挿入部からの出血や血小板減少などの合併症も無視できません。
なお、PCPS挿入時に強心薬の併用が必要かどうかという議論を時々聞きますが、心収縮力が極めて低下している状況で、強心薬が不要ということはありえないと思いますし、仮に強心薬なしでPCPSが循環補助として良好に成立するならば、むしろ強心薬を入れてPCPSをweaningすることを考えるべきでしょう。
さらにPCPSに血行動態が完全に依存している状況では自己の大動脈弁が開放せず、上行大動脈基部の血栓形成も懸念されます。高用量の必要はないですが強心薬は継続して、自己心拍出量をある程度維持して大動脈弁の開放を期待する方が良いし、また当初全く開放していなかった大動脈弁が次第に開放するようになるということを見ることによって自己心機能の回復度合いを測る指標にもなり、PCPSからの早期離脱も目指すことができます。
循環補助用ポンプカテーテル(IMPELLA®)
従来は、前述のIABPとPCPSしか心原性ショックに対し緊急で挿入可能なデバイスはありませんでしたが、2017年より循環補助用ポンプカテーテル(IMPELLA®)が我が国でも保険償還され、2018年3月より当院でも使用可能となりました。これは経皮的に挿入可能な小型の軸流ポンプを内蔵するカテーテル型の補助人工心臓で, 左心室を減負荷しながら全身に必要な血液を上行大動脈より送血します(図3)。
図3循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(IMPELLA®)
IMPELLA2.5、IMPELLACP、IMPELLA5.0の3種類があり, それぞれ最大2.5リッター 3.5リッター、5.0リッターの補助が可能です。心原性ショックを伴う広範な急性心筋梗塞に対し, PCI(経皮的冠動脈ステント留置術)の前にIMPELLAを挿入することで梗塞巣の縮小が得られるとの報告もあり、IABPに代わってIMPELLAの使用が増えてきています。PCPSにIMPELLAを併用することで、PCPSの欠点である後負荷増大(肺うっ血の増強)を防ぐことができ、トータル4.5リッター程度の補助も得られますので、左室を減負荷しながら強力な循環補助を得ることができます。
IMPELLA2.5とIMPELLACPは、大腿動脈穿刺により内科医で挿入可能ですが、IMPELLA5.0は人工血管を介した挿入が必要で心臓外科の協力のもと挿入します。通常右鎖骨下動脈より挿入しますので、坐位をとることができ、すみやかな肺うっ血と、1分間に約5リッター弱の流量補助が可能で、肝臓や腎臓の機能障害の改善が得られる患者さんを多く経験しています。
ただしIMPELLA2.5は長くて5-7日、IMPELLACPは約7-10日、IMPELLA5.0は最大約1か月間程度しか耐久性がありません。この間に心機能が回復し補助を終了することが目標ですが、さまざまな理由で長期補助が必要な患者さんには、後述する体外設置型補助人工心臓や植込型補助人工心臓に移行します。

体外設置型補助人工心臓
上記のように、PCPS、IMPELLAでは長期的な循環補助は不可能ですので、PCPSに関しては挿入後数日程度で、IMPELLAはその種類により耐久性の期間は異なりますが、離脱困難な場合には体外設置型補助人工心臓への切り替えが検討されるべきです。切り替えのタイミングとしては他臓器の障害の程度、PCPS・IMPELLAに伴う合併症の程度や耐用日数によります。臓器不全は前述の肺うっ血は大きな要素ですが、臓器灌流の指標として総ビリルビン値及び血清クレアチニン値が2.5mg/dL以内というのは1つの目安です。
体外設置型補助人工心臓には一時的補助を目的とする連続流型Rotaflowシステム(図4A)とさらに中期的補助を目指すNipro-Toyobo VADシステム(図4B)があります。
図4:体外設置型VAD
どちらも心臓外科の協力のもと、開胸が必要で左室心尖部脱血をメインとして左室のunloadingをはかりますので肺うっ血も比較的速やかに改善します。また、全身への流量補助も概ね1分間当たり4リッター程度は確保できますので、よほど体格の大きい方でなければ最低限の維持は可能です。体外設置型補助人工心臓を装着すれば心原性ショックで生死をさまよっている状況からリハビリ可能な状態まで復帰することがしばしば見られます(図4C)。
通常は左室補助だけで全身状態の改善を見ることが多いですが、心原性ショックの著しい例では右室の補助も必要で、その場合には両心補助を施行することにしております。両心補助をするかどうかの見極めなどはこれまでの経験によりスコア化された指標があります。 
このようにさらに進んだ補助循環を当院では心臓外科との協力のもと、北陸3県で最も進んだ知識の裏付けで進めて参りたいと思っています。重症心不全の最後の砦となるという意気込みで全員張り切っております。

植込型補助人工心臓
2011年以降は我が国でも植込型の補助人工心臓が次々と認可され,現在我が国で使用されている機種は以下の5機種あります(図5)。
図5:植込型補助人工心臓
この植込型を装着すれば在宅医療が可能で,ほとんどの患者さんが日常生活に何不自由なく,多くの患者さんが復学,復職を実現しておられます(図5左・右下)。
一旦体外設置型補助人工心臓を使用した心原性ショックの症例でも条件が整えば,3ヶ月程度で植込型にコンバートしております。
この植込型に関しては実施施設としての認定が必要で,当院は2019年に認定を受けました。植込型補助人工心臓は院内での管理のみならず,在宅での患者さんならびにご家族の協力,その指導に当たるコメディカルの協力も欠かせません。多職種にまたがるハートチームの構築が現在進んでおります(図6)。
図6:ハートチーム植込型補助人工心臓は従来移植適応患者に限定されております関係上65歳以上の患者さんには植込み治療は原則不可能でした。しかし,ようやく2021年5月に移植適応外の患者さんへも補助人工心臓治療が保険償還されました。
残念ながら,現在では治験施設のみでしか植込み手術は認可されていませんが,いずれは当院でも移植適応外の患者さんに対する植込み手術ができるよう準備を進めております。今後の富山大学ハートセンターにご期待ください。

    • 肺高血圧症に対する薬物療法(在宅エポプロステノール持続静注療法など)
      肺高血圧薬を駆使しても肺動脈圧が十分に低下しない肺動脈性肺高血圧症に対してエポプロステノール持続静注療法を行っています。
    • 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)
      1)慢性性血栓塞栓性肺高血圧症について
      慢性血栓塞栓性肺高血圧症(まんせい けっせんそくせんせい はいこうけつあつしょう)は難病の1つです。この病気は肺の血管の中に長い間血栓(けっせん)がつまり、血液が流れにくくなり、肺高血圧症(肺動脈にかかる圧が上昇する状態)になる病気です。
      2)治療方法
      外科的に取り除く肺血管内膜摘除術がまず考えるべき治療ですが、全国でも限られた施設でしか実施されていません。しかし高齢者、他に重大な病気をお持ちの方、手術を希望しない方はこの手術の適応とはなりにくいのが現状です。全身状態が悪いため県外の他施設までの移動が難しい方もいます。当院ではバルーン肺動脈形成術を2011年より実施しています。複数回のカテーテル治療により、社会復帰されている方が多くいらっしゃいます。診断された方はもちろん、以前に肺塞栓症のため治療を受けたことがあって息切れや疲れやすさのある方は是非一度当科に受診されることをお勧め致します。
    • 末梢動脈疾患・足壊疽潰瘍に対する治療
      【はじめに】
      高齢化社会の到来と共に糖尿病や透析を必要とする慢性腎臓病の患者さんが年々増加しております。これらの病気を有する患者さんは全身の動脈硬化が非常に進行しやすく、重症になると下肢(足)を栄養する末梢動脈が閉塞する(つまる)、末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease; PAD)を発症します。
      下肢の末梢動脈が閉塞すると、歩行時に足に痛みを生じて長く歩けなくなったり(間欠性跛行)、安静時でも足が冷えて痛んだり(安静時痛)、さらに重症になると足に創傷(潰瘍や壊疽)が出来て治らなくなるといった症状が出てきます。また糖尿病が進行すると神経障害を生じるため足の変形や感覚異常を引き起し、下肢の血管がつまらなくても足に創傷を生じる場合もあります。このように動脈硬化や神経障害によって下肢に創傷が出来る病気を、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb Threatening Ischemia; CLTI)と呼び、その患者数は年々増加しております。
      【末梢動脈疾患の3大症状】
      ①間欠性跛行(かんけつせいはこう)
      歩行中に足(特にふくらはぎや太もも)が痛くなり、休むとその痛みが和らぐため休みながら短い距離しか歩けない状態。
      ②安静時痛;歩かなくても常に足(特につま先)が冷えて痛む状態
      安静時痛
      ③壊疽や潰瘍(包括的高度慢性下肢虚血, CLTI);足先への血流が高度に不足し、指先が壊死(えし)してしまったり傷が出来てしまったりする状態。
      壊疽や潰瘍
      【診断方法】
      ・触診;足の表面を通る血管(太ももの付け根、膝の裏、足の甲)の脈の触れや足の冷たさ
      ・視診;足の皮膚色変化や潰瘍の有無
      視診、触診に加え、ABI検査をすることで診断が可能です。
      ≪ABI検査≫
      両腕と両足首の血圧を同時に測定し、その血圧の比を測定します。(足の血圧÷腕の血圧)
      通常は足の血圧の方が高いため正常値は1以上となります。
      また同時に血管の硬さや足の血流波形が分かります。
      ABI検査
      上記検査でPADが疑われた場合、次に造影CTまたはMRIを行うことで、実際にどこの血管がつまったり狭くなったりしていかが特定でき、最終的にはカテーテルによる血管造影を行うことでより正確に診断ができます。
      ≪造影CT≫ 造影剤を腕の静脈から注射しCT撮影をする検査で、外来で施行可能です。
      大動脈~膝窩動脈(膝の裏の動脈)までなら、かなり正確に立体的な評価が可能です。ただし石灰化が強い血管では血管が白く光ってしまい、そこが狭窄しているかどうかの評価が困難になることもあります。また膝より下の血管は細いため、狭窄や閉塞の正確な評価は困難な場合もあります。
      造影CT
      ≪MRアンギオグラフィー≫ 造影剤を使用せずにMRIを撮影する検査で、外来で施行可能です。
      大動脈~膝窩動脈(膝の裏の動脈)までなら、かなり正確に評価が可能ですがCTよりはやや精度が劣ります。CTと異なり石灰化が強い血管でも血管の狭窄を評価する事が可能ですが、石灰化自体を評価する事はCTに比べ困難です。膝より下の血管は細いため、狭窄や閉塞の正確な評価は困難な場合があります。
      ≪血管造影≫ 足の動脈に直接造影剤を入れてレントゲン撮影をする検査で、入院が必要です。
      大動脈~足先まで、狭窄や閉塞の正確な評価が可能なだけでなく、動画で血流スピードや分布も評価可能です。そのため、カテーテル治療やバイパス手術を行う場合には必須の検査となります。
      MRアンギオグラフィー
      【治療方法】
      間欠性跛行の症状は薬物療法や下記の血行再建治療(カテーテル治療やバイパス手術)によって、多くの場合改善が得られますが、足壊疽潰瘍(CLTI)は小さな傷であってもそれが悪化し、足趾(ゆび)の小切断や膝下や大腿での大切断を余儀なくされる例も多くあります。そして大切断に至った場合は生活の質が著しく低下し、自宅での生活も困難となりその予後も極めて不良となります。
      足壊疽潰瘍(CLTI)に対する治療には、創傷の処置をする皮膚科や形成外科、血管を治療する血管外科や循環器内科、大小切断をする整形外科など様々な診療科の連携が不可欠となります。また医師以外にも足の保清や洗浄、適切な靴や再発予防の指導といったフットケアを行う看護師や、歩行や筋力維持のためのリハビリを行う理学療法士といったコメディカルの介入も非常に重要となります。
      そこで当院では下肢創傷治療に係わる多職種の医療者が連携協力し、最善の治療を行えるように、下肢創傷治療・フットケアセンターを立ち上げチームで診療を行っております。
      ①カテーテル治療(血管内治療EVT; End Vascular Therapy)
      足の付け根、肘、手首などの動脈から2~3mmの細い管を入れ、その管の中からワイヤー(髪の毛くらいの細さの柔らかめの針金)入れて、つまっている血管の中を通します。そのワイヤーに風船を乗せ、つまっている病変部まで持って行き広げます。その広がりが悪ければ必要に応じてステント(金属性の網目状の筒)やステントグラフト(ステント状の人工血管)を血管内に留置しさらに広げて終了となります。
      カテーテル治療
      ・治療前日に入院→治療→治療翌日退院のスケジュールで最短2泊3日での治療が可能です。
      ・治療時間は病変によっても異なりますが1時間~3時間程度です。
      ・間欠性跛行の場合は翌日より歩行可能で、その日から症状の改善が期待できます。
      ・足壊疽や潰瘍の場合は傷が治癒するまでに数か月の期間を必要とし、傷の経過によってはカテーテル治療を数か月ごとに2~3回繰り返す必要がある場合もあります。カテーテル治療による傷の治癒率は一般的に約70%ですが、傷が大きい場合や感染を合併している場合にはバイパス手術や下肢切断が必要になる場合もあります。
      ②バイパス手術
      自分の足の静脈を採取し、それをバイパス血管に用います(自分の静脈があまり良い状態で無い場合は人工血管を用いる場合もあります)。つなぐ場所は病変に応じ、大腿動脈(足の付け根)から膝窩動脈(膝の裏)、足背動脈(足の甲)、後脛骨動脈(くるぶし)のいずれかにバイパス(橋渡し)する形で血管をつなぎ合わせます。
      ③創傷処置(足の傷の処置)と補助療法
      傷が治りやすい環境を作るために傷の洗浄や免荷などの創処置に加えて、陰圧閉鎖療法、高圧酸素療法、LDLアフェレーシス、炭酸浴などの補助療法を行っております。また専門の看護師や理学療法士によるフットケア指導やリハビリも積極的に行っております。
      ④下肢切断術
      上記治療でも足の傷が治らず痛みのコントロールが付かない場合や感染を起こし生命の危険が生じた場合には整形外科で足の部分切断が必要となる場合があります。
    • 経食道心エコー図、凝血分子マーカーに基づく心房細動の脳塞栓症の予防
    • 循環調節機能に基づく生活習慣(運動・睡眠)の指導

専門外来

・虚血性心疾患外来(狭心症)

病歴聴取や心電図・エコー検査を行い、冠動脈の評価が必要と判断される場合は、まず外来で冠動脈CT検査を行います。

担当医 上野博志、傍島光男、牛島龍一
診療日 (火・金)
受診方法 地域連携予約、紹介状持参が原則です。

・難治性心不全外来

薬物治療に難渋している症例や補助循環や移植の適応検討についてご相談ください。

担当医 絹川弘一郎
診療日  火AM
受診方法 紹介状持参

・不整脈外来(重症心室不整脈(心室頻拍、心室細動)、心臓再同期療法、心房細動など)

心不全症例に合併した心房細動や心室不整脈、心臓再同期療法の適応検討、ブルガダ症候群の管理、リードレスペースメーカーの適応検討など、不整脈でお困りの事がありましたら、いつでもご相談ください。

担当医 片岡直也
診療日 (火・金)
受診方法 地域連携予約、紹介状持参が原則です。

・心臓弁膜症外来(特に大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症および狭窄症)

特に、高齢や他に合併症があるため、手術は難しいといわれた方。カテーテル治療(TAVIやマイトラクリップ、PTMC)であれば、翌日より歩行が可能です。

担当医 上野博志、福田信之、傍島光男、牛島龍一、田中修平
診療日 (火・金)
受診方法 地域連携予約、紹介状持参が原則です。

・心房中隔欠損症外来

40歳頃から息切れ・動悸などの症状が出現するようになります。手術により心臓を止めることなく、足の付け根の静脈から治療が可能です。症状が悪化していく前の治療をお勧めします。

担当医 上野博志、福田信之、田中修平
診療日 (火・金)
受診方法 地域連携予約、紹介状持参が原則です。

・末梢動脈疾患外来(閉塞性動脈硬化症)

安静時の下肢冷感や、歩行時の痛みがある方。また、糖尿病や透析患者さんで、足のキズがなかなか治らない方。

担当医 傍島光男
診療日 (火・金)
受診方法 地域連携予約、紹介状持参が原則です。

・成人先天性心疾患外来

担当医 田中修平、伊吹圭二郎
診療日 金AM
受診方法 初診は必ず地域連携予約をお願いします。

・肺高血圧外来

担当医 牛島龍一
診療日 (火・金)
受診方法 初診は必ず地域連携予約をお願いします。

・植込型補助人工心臓外来

担当医 絹川弘一郎・中村牧子
診療日 火AM
受診方法 必ず当科医局まで事前に連絡をお願いいたします。来院当日は紹介状をお持ちください。

・ペースメーカー・ICD外来

担当医 不整脈担当医師
診療日 (火・金)
受診方法 予約患者が対象です。地域連携予約による不整脈外来への紹介をお願いします。

主な検査・設備など

  • マルチスライスCT(Siemens社 2管球搭載CT=SOMATOM
    Force)
  • 心臓カテーテル検査(バイプレーン血管撮影装置2台、シングルプレーン血管撮影装置2台、ハイブリッド手術室1室)
  • 電気生理検査(EPS)
  • ポリソムノグラフィー(PSG)
  • 3次元心エコー(TTE, TEE)

診療実績

2021年(1月~12月)
心臓カテーテル検査数:434件
PCI:216件
急性冠症候群:32件
ロータブレーター:24件
TAVI:59件
経カテーテル僧帽弁クリップ術:25件
経皮的左心耳閉鎖術:71件
経皮的心房中隔欠損閉鎖術:17件
末梢動脈疾患に対するカテーテル治療:57件
バルーン大動脈弁拡張術:29件
経皮的僧帽弁交連切開術:3件
カテーテルアブレーション:203件
バルーン肺動脈拡張術:14件

診療科紹介

循環器疾患は心臓と血管を中心とした病態ですが,患者さんの病状は千差万別です。私たちは、患者さんに起こっている様々な問題を常に考慮しながら適切な薬、薬以外の治療法を選択し、一人ひとりの患者さんの特徴に基づいたテーラーメイド治療を心がけています。循環器疾患は急変することも多く,急病の患者さんには、的確な診断と治療が行えるよう最新の機器を備えております。また退院後は、患者さんのQOLと長期予後が最大限に改善するよう、生活習慣の指導や薬の調整はもとより、新しい予防法を導入し、実践しています。どんな重症例でも可能な限り最先端の治療が行えるよう今後も努力してまいります.

診療科長  絹川 弘一郎

スタッフ紹介

氏名 職位 専門領域 資格など
絹川 弘一郎 診療科長
教授
心不全
補助循環
心臓移植
日本内科学会 総合内科専門医・評議員
日本循環器学会 理事・循環器専門医・FJCS
日本心臓病学会 理事・FJCC
日本心不全学会 理事長
日本成人病学会 理事
DT研究会 代表世話人
補助人工心臓治療関連学会協議会 理事
日本腫瘍循環器学会 理事
日本移植学会 認定医
欧州心臓病学会 FESC
今村 輝彦 准教授 循環器疾患
心不全
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医・支部評議員
日本心臓病学会 FJCC
米国心臓協会 FAHA
米国心不全学会 FHFSA
米国心臓病学会 FACC
ヨーロッパ心臓病学会 FESC
日本心不全学会 代議員
日本循環器腫瘍学会 評議員
日本人工臓器学会 評議員
植込型補助人工心臓管理医
難病指定医
中川 圭子
(高岡分室)
准教授 循環器疾患 日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本医師会 産業医
上野 博志 診療教授 循環器疾患
虚血性心疾患
構造的心疾患
末梢動脈疾患
日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 専門医・指導医
日本心臓リハビリテーション学会 指導士
日本体育協会 公認スポーツドクター
経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会 TAVR指導医
日本Pediatric Interventional Cardiology学会 経皮的心房中隔欠損閉鎖術 施行医
Medtronic社Corevalveシリーズ プロクターシップ(手術指導)認定医師
Edwards Life Science社Sapien3 プロクターシップ認定医師
Boston Scientific社WATCHMAN プロクターシップ認定医師
福田 信之 助教 循環器内科
心臓超音波
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本超音波医学会 専門医
日本老年病学会 専門医
日本心エコー図学会 SHD心エコー図認証医
傍島 光男 助教 循環器疾患 日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会 TAVR実施医
浅大腿動脈ステントグラフト実施医
中村 牧子 助教 循環器疾患 日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
日本不整脈心電学会 ICD/CRT研修終了医
植込型補助人工心臓管理医
補助人工心臓管理技術認定士
片岡 直也 助教 循環器内科
不整脈
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
日本不整脈心電学会 ICD/CRT研修終了医
牛島 龍一 助教 循環器疾患 日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会 TAVR実施医
田中 修平 病院助教 循環器内科 日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
日本体育協会 公認スポーツドクター
日本心エコー図学会 SHD心エコー図認証医
小野田 寛 病院特別助教 循環器内科 日本内科学会 総合内科専門医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医
中垣内 昌樹 病院特別助教 循環器内科 日本内科学会 認定内科医
日本心血管インターベンション治療学会 認定医

外来担当表

曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
循環器内科 中川 絹川
今村
上野
福田
傍島
牛島
片岡
田中
中垣内
小井
中村 中村 絹川
今村
上野
福田
傍島
牛島
片岡
小野田
小井
伊吹(ACHD)

第二内科診療部門 循環器内科