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富山大学附属病院の先端医療

[Q&A]Q:乳房再建に新たな道―培養脂肪幹細胞を用いた再生医療

富山大学附属病院の先端医療

形成再建外科・美容外科

Q:乳房再建に新たな道―培養脂肪幹細胞を用いた再生医療

佐武利彦/診療科長・特命教授

Q:乳房再建の選択肢―その方法は?

A:乳がん術後の乳房再建は、乳房インプラント(人工物)を用いる方法と、患者さん自身の皮膚や皮下脂肪を、血管をつないで移植する皮弁法(自家組織)に大別され、現在、両方とも治療には保険が適応されます。乳房インプラント再建は、手術時間が短く、乳房以外に傷痕が残らないことが利点ですが、BIA-ALCL(乳房インプラント関連・未分化大細胞型リンパ腫)により、国内では、これまで用いられてきたものが2019年7月から使用できなくなり、人工物選択の幅は狭くなりました。皮弁法は、1回の手術で自然な形と大きさの乳房ができることが最大の利点ですが、手術時間が平均8時間と長く、皮弁を採取する部位に別の傷痕が残ること、血流障害のリスクがあります。

私たちは、目立つ傷痕を残さず手術時間も短く、体の負担が少ない脂肪注入による乳房再建を2012年から開始しました。また近年では、再生医療の技術もこの分野に応用しています。脂肪注入法による乳房再建について詳しく解説します。

Q:脂肪注入による乳房再建とは?

A:手術は全身麻酔になりますが、片側の再建であれば2時間ほどで終わり、日帰り手術も可能で、体への負担も少ないです(図1)。乳房の小さい患者さんの場合、6か月ごとに通常2〜3回手術を繰り返して、再建が完了します。手術に向くのは、乳がん手術の際に、乳房の皮膚や皮下脂肪、乳頭乳輪が残されており、同時に脂肪を採取するためにお腹や太ももに脂肪がある患者さんです。脂肪を吸引して採取するため、採る部分を細くできる利点もあります。

実際の手術では、まず患者さんのお腹や太ももから、3mmの太さの管で脂肪を吸引します。次に、吸引した内容液から不純物を遠心分離で取り除きます。最後に、脂肪を注射器に充填して直径1.6mmの管で、乳がん術後の部位に細かく幾層にもわけて、脂肪を注入します。これが純脂肪注入ですが、ほかに老化脂肪を除去して細胞密度を上げるように、精製法を改良したコンデンスリッチ脂肪注入という方法も選択できます(図2)。

術前後の乳房のケアとして、自宅で乳房の外側に拡張器を装着して、乳房の皮膚を柔らかく伸展し血流を増やすようにして、治療効果を高めています。また術後3週間は、再建側の肩関節の運動を制限し、脂肪を採った部分も圧迫を継続します。

Q:再生医療技術を用いた脂肪注入による乳房再建とは?

A:痩せた患者さんで脂肪が少ない患者さん、放射線照射を受けた患者さん、両側の乳がん患者さんでは、通常、脂肪注入による乳房再建が難しいです。このような患者さんのために、再生医療の技術で増やした脂肪幹細胞を、近年患者さんの治療に利用できるようになりました。

具体的には、あらかじめ患者さんから20mlほどの脂肪を吸引して、これを元にして脂肪幹細胞のみを培養により大量に増やします。この幹細胞には、血管を増やし、新しい脂肪細胞や脂肪幹細胞を作りだす働きがあります。培養で増やした脂肪幹細胞を、患者さんから採った新鮮な脂肪に混ぜ合わせて移植することで、移植脂肪の生着率向上が望めるようになりました。培養した幹細胞は凍結保存することもできるため、後日に繰り返す治療に最適です。

一方、太った患者さんでは、たくさん脂肪吸引することができますので、培養しなくても吸引脂肪から脂肪幹細胞を入手することができます。痩身効果も期待できます。これも再生医療に該当します。このように患者さんの乳房や体の脂肪の状況により、脂肪注入法を選択することができますが、再生医療は法律に基づき、厚生労働大臣に提供計画を提出、受理されている施設でのみ施行が許可されます。2022年1月時点では、富山大学を含む全国大学病院での治療提供は2施設のみとなっています。

図1:脂肪注入の方法とメリット・デメリット

図2:脂肪注入で用いる脂肪の種類

0〜9

A〜Z

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