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富山大学附属病院の先端医療

[Q&A]Q:リンパ腫サバイバーに骨の健康を―悪性リンパ腫

富山大学附属病院の先端医療

血液内科

Q:リンパ腫サバイバーに骨の健康を―悪性リンパ腫

佐藤勉/教授

Q:悪性リンパ腫の治療で骨粗しょう症になるのですか?

A:がんサバイバーという言葉があります。がんの診断を受けてから、その後を生きていく人たちのことです。このがんサバイバーに、がん治療の副作用として発症する骨粗しょう症は大きな問題です。圧迫骨折で背骨が曲がったり、痛みが続いたりすると、いきいきとした毎日は過ごせません。特に乳がんや前立腺がんで行われるホルモン療法では骨密度が大きく低下しますので、乳がんサバイバーや前立腺がんサバイバーには骨粗しょう症の内服薬や注射が予防的に投与されています。

それでは悪性リンパ腫の治療ではどうでしょうか。悪性リンパ腫に対する代表的な抗がん剤治療はR-CHOP療法で、5つの薬の頭文字をとってこのように呼ばれています。Rはリツキシマブを表しますが、この薬が2001年に登場して以来、悪性リンパ腫の治療成績は飛躍的に向上しました。治癒することも決してまれではなく、たくさんのリンパ腫サバイバーが誕生しました。そして、このようなリンパ腫サバイバーにも、しばしば圧迫骨折など、骨のトラブルが発生していることに気がつきました。

Q: どうして骨粗しょう症になるのですか?

A:その原因はおそらくプレドニゾロンです。これはR-CHOP療法のPに該当するステロイド剤で、骨粗しょう症が副作用として有名です。

膠原病などでプレドニゾロンを内服する場合、骨粗しょう症の治療薬も併用することが多いのですが、R-CHOP療法では骨粗しょう症が気にされることはありませんでした。R-CHOP療法は、3週間のうち5日間しかプレドニゾロンを内服しないので大丈夫だろうと誰もが思っていたのです。しかし、1日の内服量は100mgと大量です。本当に大丈夫なのかと調べてみたところ、もともと骨のしっかりしている若い男性を中心にしたグループでも、R-CHOP療法後では骨密度がはっきりと低下していました。そのため、骨粗しょう症の治療薬であるデノスマブをR-CHOP療法に併用すると、もともと骨密度の低い高齢女性を中心にしたグループでも、骨密度の低下がしっかりと予防されました。

Q: どうすれば骨粗しょう症が予防できますか?

A: 私たちの研究から、骨粗しょう症の治療薬を併用することが、リンパ腫サバイバーに、骨の健康をもたらすことが分かりました。しかし、いくつもある骨粗しょう症の治療薬のうち、どれが最良なのかは分かっていません。このことを明らかにするために、富山大学附属病院血液内科では、臨床研究管理センターのサポートを得て、北陸造血器腫瘍研究会に所属する、北陸三県の主要な血液内科と合同で行う、大規模な臨床試験を実施しています。代表的な骨粗しょう症の治療薬であるビスホスホネートとデノスマブの効果を比較する試験ですが、いずれにしても骨粗しょう症の治療薬をR-CHOP療法と併用することが重要なのだと考えています。この試験は65歳以上の患者さんを対象にしており、これまでに44名の患者さんが参加をご希望され、半年後に腰椎の骨密度を測定した17名のうち、骨密度の低下を予防できたのは11名(65%)でした。骨粗しょう症の治療薬を併用しないと89%の患者さんで骨密度が低下しますので(過去のパイロットスタディのデータ)、私たちの試みが非常に有益であることが明らかにされつつあります。

悪性リンパ腫に限らず、多発性骨髄腫、急性白血病、慢性白血病など、造血器腫瘍に対する画期的な新薬がここ数年で続々と登場しました。その効果は目を見張るばかりですが、やはりどんな特効薬にも副作用はつきものです。この副作用を上手にコントロールしなければ、抗がん剤の本当の効き目を十分に得ることはできません。私たちは抗がん剤の副作用に細心の注意を払い、それを和らげることで「優しいがん治療」を目指しています。“リンパ腫サバイバーに骨の健康を”「優しいがん治療」の1つとしてこのテーマを推進していきます。

一言メモ

抗がん剤の進歩には目覚ましいものがあります。信じられないような画期的な新薬が次々に登場し、不治の病だった「がん」は少しずつ怖い病気ではなくなってきました。しかし、薬には副作用がつきものです。抗がん剤の副作用を上手にコントロールするテクニック、それが抗がん剤の効果を最大限に引き出すために必要です。

図:悪性リンパ腫の治療後に発症した脊椎の圧迫骨折です。ひどい痛みで動けなくなりました。

写真: Horizon X ®︎で骨密度を測定している様子です。

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