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富山大学附属病院の先端医療

[Q&A]Q: 肝細胞がんの集学的治療―肝細胞がん

富山大学附属病院の先端医療

第三内科(消化器内科)

Q: 肝細胞がんの集学的治療―肝細胞がん

田尻和人/診療教授

Q:肝細胞がんって、どんな病気ですか?

A:肝臓由来の細胞から発生した原発性肝がんのうち、9割以上が肝細胞がんで、多くはウイルス性肝炎などの慢性肝疾患を背景に起こります。日本で最も多い原因であったC型肝炎ウイルス感染は、治療薬の進歩により減少し、脂肪肝などの非ウイルス性の原因が増加しています(図1)。肝がんは自覚症状の少ない病気です。慢性肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患のある肝臓に発生することが多く、慢性肝疾患のある患者さんは定期的に血液検査、エコー検査などの画像検査を受けることが大事です。

肝細胞がんの治療は、がんの進行度だけでなく、全身状態・肝臓の予備力によって決まります(図2)。肝細胞がんは、再発が多くみられることが特徴です。そのため、肝臓の予備力を保持するように気をつけながら治療を行っていきます。

Q:ラジオ波治療って、どんな治療ですか?

A:ラジオ波治療は、1999年から国内で実施されるようになり、2004年から保険収載されて全国に普及しました。当科では、2000年からラジオ波治療を行っています。先端が電極となった直径1.5mmの針を、エコーガイド下の腫瘍に穿刺し、450kHzの高周波(ラジオ波)で通電加熱し、腫瘍を凝固壊死させます。

一般的な適応は、腫瘍径5㎝以下で単発、3cm以下で3個以内です。また、肝予備能が比較的保持されていることや、血小板数5万以上などです。当科では、通常エコーで観察しにくい場所には、人工的に胸水・腹水を作成し、造影エコー、CT・MRI画像によるナビゲーションなどを行い、工夫して多くの症例でラジオ波治療を行っています。血小板や凝固因子の不足した患者さんでは、薬剤の投与や輸血により適応を拡大して行っています。複数の針を同時に穿刺することで、大型の病変を焼灼する穿刺針や、先端の通電域を可変でき、複数病変を効率的に治療できる穿刺針も使用可能となっています。最近、当院も参加した、手術とラジオ波治療を無作為に比較するSURF(サーフ)試験の結果が一部発表され、2㎝程度までの小肝がんであれば、手術とラジオ波の治療成績に差がないことが報告されています。ラジオ波治療の可能性は、ますます広がっています。

Q:肝細胞がんに有効な薬物治療ってあるのですか?

A: 2000年代前半まで、肝細胞がんに有効性が確認された薬剤はありませんでしたが、2009年に分子標的薬ソラフェニブが、進行肝細胞がんに対して、初めて生存延長効果が確認された薬剤として登場しました。それ以降、さまざまな薬剤の開発が試みられましたが、長らく新規の有効な薬剤は出てきませんでした。

しかし、2017年にレゴラフェニブが、ソラフェニブ無効な進行肝細胞がん患者の二次治療として生存延長効果が確認され、2018年にはソラフェニブと同等以上の効果を示す薬剤としてレンバチニブが登場しました。2019年にはラムシルマブも使用可能となり、使用できる分子標的薬は、現在3剤となりました。今後は、オプジーボのような免疫チェックポイント阻害剤が使用可能となってくる予定ですが、免疫チェックポイント阻害剤は分子標的薬との併用により、その効果が増強されることが期待されています(図4)。

当科では、分子標的薬に肝動脈経由の抗がん剤治療を積極的に併用することで、治療成績が向上することを報告しています(図3)。新規治療法を適切に使用し、また、さまざまな工夫を加えていくことで、肝細胞がんの予後の延長が期待できます。ただし、こうした新規薬剤の多くは、肝予備能が良好な場合にしか使えないことがあり、実臨床においては、肝予備能を良好に保持することが極めて重要であり、背景の肝炎・肝硬変自体の治療や、肝予備能を低下させない治療法の選択が重要となります。

一言メモ

  1. 肝細胞がんの治療の決定には、「肝臓の予備力」が重要です。
  2. ラジオ波治療は、小型肝がんに極めて有効な治療法です。
  3. 肝細胞がん治療は、新規薬剤の登場により治療成績は向上しています。
  4. 肝細胞がんの治療には、適切な治療選択に加え、背景の肝炎・肝硬変に対する治療による肝予備力の維持向上も大変重要です。

図1:肝細胞がんの患者数の原因の推移について

図2:肝細胞がん治療アルゴリズム

図3:肝細胞がんに対する薬物併用療法の成績

図4:分子標的薬ソラフェニブと肝血管内治療の併用による生存延長効果

0〜9

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