ホーム

病院概要

診療用放射線の安全利用のための指針

診療用放射線の安全利用のための指針

診療用放射線の安全利用に関する基本的考え方

 放射線を利用した診療は患者に多大な利益をもたらす一方、放射線被ばくによって患者に健康影響をもたらす潜在的な危険性が懸念される。放射線診療に関わる医療従事者は、有効で安全な診療を実現するため、放射線診療を受ける者の放射線防護を踏まえて診療用放射線の安全利用に努めなければならない。
 国際放射線防護委員会2007年勧告において、放射線被ばくは、医療被ばく、職業被ばく及び公衆被ばくに分類されている。医療被ばくのうちで患者の医療被ばくは、放射線診断及び放射線治療等の医学的理由により患者が受ける被ばくであり、妊娠あるいは授乳中の患者の医療被ばくに伴う胎児又は乳児の被ばくを含む。診療用放射線の安全利用のための指針(以下「本指針」という。)では患者の医療被ばくに関する事項を取り扱う。医療被ばくには、患者の医療被ばくの他、放射線診療を受ける患者の家族、親しい友人等が、病院、家庭等における当該患者の支援、介助等を行うに際して受ける了解済みの被ばく、生物医学的研究等における志願者の被ばくも含まれる。職業被ばくは放射線作業従事者等が自らの職業における仕事の結果として受ける全ての被ばくを指し、公衆被ばくは職業被ばく、医療被ばく及び通常の局地的な自然バックグラウンド放射線による被ばくのいずれをも除いた放射線源から公衆が受ける被ばくを指す。
 放射線診療は医療において重要な役割を果たしているが、不利益となる健康影響を患者に来す可能性があることに留意しなくてはならない。放射線被ばくによる健康影響は組織反応(確定的影響)と確率的影響に大別される。組織反応はある一定の線量(しきい線量)以上の被ばくではじめて生じるもので、脱毛や皮膚の紅斑などが含まれる。線量が高くなると、発生確率及び重篤度が増す。一方、しきい線量がなく、低線量でも生じる可能性がある放射線影響が確率的影響で、発がんと遺伝的影響がある。発生確率の増加は線量に比例すると考えられている。診断用の放射線診療の場合、患者の受ける放射線量は通常100ミリシーベルト以下の低線量で、その健康影響で懸念されるのは主として発がんリスクの増加である。
 国際放射線防護委員会は、放射線を用いる行為に対する防護の原則として正当化、防護の最適化、線量限度を掲げている。正当化は放射線被ばくを伴う行為を導入する際に、その行為による利益が不利益よりも大きいことを保証することを意味する。正当化の原則に基づき、放射線診療は患者にとっての便益が放射線によるリスクを上回るのでなければ適応にならない。最適化は、正当化される行為を実施する際に、合理的に達成可能な限り放射線被ばくを抑えることを意味する(as low as reasonably achievable: ALARAの原則)。医療被ばくにおいては、診療の質が保たれることを条件として被ばく線量をできる限り低くすることに相当し、最適化を行う具体的手法として、診断参考レベルの使用が勧告されている。診断参考レベルは、様々な医療機関における線量に基づいて設定される、比較的高い線量を用いている施設がそれを自覚するための目安となる線量である。線量限度は個人が受ける超えてはならない放射線量の値であるが、医療被ばくには適用されない。線量限度を設定すると患者にとって必要な放射線診療を受けられなくなる恐れがあるため、医療被ばくについては一律の線量限度を設けることができず、正当化と防護の最適化が特に重要になる。正当化及び最適化を行うためには、放射線診療によって患者が受ける利益と不利益の理解が不可欠であり、放射線診療に携わるものにはこれらについての知識を習得し、継続的に更新することが求められる。小児は放射線影響を受けやすく、期待される余命も長いことから、小児における放射線診療については特別な配慮が必要であることを忘れてはならない。

第1章 総則

(目的)
第1条 本指針は、医療法施行規則の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第21号)に基づき、富山大学附属病院(以下「当院」という。)における診療用放射線に係る安全管理体制に関する事項について定め、診療用放射線の安全で有効な利用を確保することを目的とする。

(適用範囲)
第2条 本指針は、当院における診療用放射線の利用に関わる業務に適用される。放射線診療を目的として他の病院等に患者を紹介する行為及びこれに付随する行為も適用範囲に含まれる。

(用語の定義)
第3条 本指針において用いる用語の定義は本指針で定めるほか、法令等の定めるところによる。

  • (1) 「放射線診療」:放射線の人体への照射又は放射性同位元素の人体への投与を伴う診療をいう。
  • (2) 「医師等」:医師又は歯科医師
  • (3) 「管理・記録対象医療機器等」:次に掲げる医療機器等をいう。
  • ア 据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
  • イ 全身用X線CT診断装置
  • ウ X線CT組合せ型ポジトロンCT装置
  • エ X線CT組合せ型SPECT装置
  • オ 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素
  • カ 診療用放射性同位元素
  • (4) 「血管造影」:次に掲げる医療機器を用いた診療をいい、血管造影下で行う治療等を含む。
  • ア 据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
  • (5) 「CT検査」:以下に掲げる医療機器を用いてCT画像を撮影する診療をいい、CTガイド下で行う生検及び治療、放射線治療計画用のCT画像の撮影を含む。
  • ア 全身用X線CT診断装置
  • イ X線CT組合せ型ポジトロンCT装置
  • ウ X線CT組合せ型SPECT装置
  • (6) 「核医学診療」:次に掲げるものを用いた診療をいう。
  • ア 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素
  • イ 診療用放射性同位元素

第2章 組織及び職務

(医療放射線安全管理責任者)
第4条 病院長は、診療用放射線の利用に係る安全な管理のための責任者(以下「医療放射線安全管理責任者」という。)を配置しなくてはならない。
2 医療放射線安全管理責任者は放射線科医師が就任するものとする。
3 医療放射線安全管理責任者は、診療用放射線の安全利用のため、次に掲げる事項を行わなくてはならない。

  • (1) 診療用放射線の安全利用のための指針の策定
  • (2) 放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修の実施
  • (3) 次に掲げるものを用いた放射線診療を受ける者の当該放射線による被ばく線量の管理及び記録その他の診療用放射線の安全利用を目的とした改善のための方策の実施
  • ア 厚生労働大臣の定める放射線診療に用いる医療機器
  • イ 第二十四条第八号に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素
  • ウ 第二十四条第八号の二に規定する診療用放射性同位元素
  • (4) 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応

(医療放射線管理委員会)
第5条 病院長は、診療用放射線の安全利用に係る管理のため、医療放射線管理委員会を設置する。
2 医療放射線管理委員会は放射線診療のプロトコール管理、被ばく線量管理、本指針の開示に関する協議、放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応並びにこれに付随する業務を行う。
3 医療放射線管理委員会の構成は、以下の通りとする。

  • (1) 医療放射線安全管理責任者
  • (2) 医師 若干名
  • (3) 診療放射線技師 若干名
  • (4) 看護師 1名
  • (5) その他委員長が必要と認めた者

4 委員長は医療放射線安全管理責任者が就任する。
5 委員長は医療放射線管理委員会を招集し、これを主催する。
6 医療放射線管理委員会は定期開催する他、委員長が必要と認めたときに開催する。
7 委員長は医療放射線管理委員会の議事を病院長に報告する。
8 委員長は線量管理業務等の円滑な運営を図るために、医療放射線管理委員会のもとに下部組織として作業チームを編成することができる。

(遵守等の義務)
第6条 放射線診療に携わる者は、この指針の定めるところに従い、診療用放射線に係る安全の確保に努めるほか、医療放射線安全管理責任者の指示を遵守しなければならない。
2 病院長は、医療放射線安全管理責任者が本指針に基づいて行う意見具申を尊重しなければならない。

第3章 放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修

(医療放射線研修)
第7条 医療放射線安全管理責任者は、医師、歯科医師、診療放射線技師等の放射線診療の正当化又は患者の医療被ばくの防護の最適化に付随する業務に従事する者に対し、診療用放射線の安全利用のための研修(以下「医療放射線研修」という。)を行わなくてはならない。
2 病院長は、次に掲げる者に医療放射線研修を受けさせなければならない。

  • (1) 医療放射線安全管理責任者
  • (2) 放射線診療を依頼する医師等(放射線検査目的で他の医療機関に患者を紹介する医師等を含む。)
  • (3) 血管造影又はエックス線透視・撮影等を行う医師等
  • (4) 放射線科医師
  • (5) 診療放射線技師
  • (6) 放射性医薬品等を取り扱う薬剤師
  • (7) 放射線診療を受ける者への説明等を実施する看護師等

3 医療放射線研修の項目は、次に掲げるものとする。

  • (1) 患者の医療被ばくの基本的な考え方に関する事項: 放射線の物理的特性、放射線の生物学的影響、組織反応(確定的影響)のリスク、確率的影響のリスク等に関する基本的知識を習得するものであること。
  • (2) 放射線診療の正当化に関する事項: 診療用放射線の安全利用に関する基本的考え方を踏まえ、放射線診療の便益及びリスクを考慮してその実施の是非を判断するプロセスを習得するものであること。
  • (3) 患者の医療被ばくの防護の最適化に関する事項: 放射線診療による医療被ばくは合理的に達成可能な限り低くすべきであることを踏まえ、次に掲げる事項を習得するものであること。
  • ア 適切な放射線診療を行うに十分となる限りで線量(放射線治療においては正常組織の線量)を低くすべきであること
  • イ 放射線照射の条件や放射性同位元素の投与量に加え、撮影範囲、撮影回数、放射線照射時間等の適正化が必要であること
  • (4) 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応等に関する事項: 被ばく線量に応じて放射線障害が生じるおそれがあることを考慮し、次に掲げる事項を習得するものであること。
  • ア 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の報告
  • イ 放射線障害であるおそれのある事例と実際の放射線被ばくとの関連性の評価
  • ウ 放射線障害が生じた場合の対応
  • (5) 医療従事者と患者間の情報共有に関する事項: 放射線診療の必要性、当該放射線診療により想定される被ばく線量及びその影響、医療被ばく低減の取り組み等の患者への説明に関するものであること。

4 病院長は、対象者に医療放射線研修を1年度1回以上受講させなければならない。必要に応じて定期的な開催とは別に臨時に開催することができる。
5 医療放射線安全管理責任者は、研修を実施した際、次に掲げる事項を含む実施記録を作成しなければならない。

  • (1) 開催日時
  • (2) 講師
  • (3) 出席者
  • (4) 研修項目

6 医療放射線研修は、当院が実施する他の医療安全に係る研修又は放射線の取扱いに係る研修と併せて実施することができる。
7 当該病院等以外の場所における医療放射線研修、関係学会等が主催する医療放射線研修を受講した場合は、当該研修の受講をもって当院が実施する研修の受講に代えることができる。この場合において、当該研修を受講した者は、当該研修の開催場所、開催日時、受講者氏名、研修項目等が記載された受講を証明する書類を医療放射線安全管理責任者に提出しなければならない。

第4章 被ばく線量管理及び記録その他の診療用放射線の安全利用を目的とした改善のための方策

(診療用放射線の安全利用を目的とした改善のための方策)
第8条 医療放射線安全管理責任者は、放射線診療を受ける者の当該放射線による被ばく線量の管理及び記録その他の診療用放射線の安全利用を目的とした改善のための方策として、次に掲げる事項を行わなければならない。

  • (1) 線量管理
  • (2) 線量記録
  • (3) 診療用放射線に関する情報等の収集と報告

(線量管理及び線量記録を行う診療)
第9条 管理・記録対象医療機器等を用いた放射線診療に当たっては、被ばく線量を適正に管理及び記録しなくてはならない。ただし、管理・記録対象医療機器等を用いた診療であっても、線量を表示する機能を有しない機器を用いるものについては被ばく線量の記録を行うことを要しない。
2 管理・記録対象医療機器等を用いない放射線診療においては、必要に応じて線量管理及び線量記録を行う。
3 線量管理及び線量記録を行う医療機器等の一覧を別紙として作成し、それぞれについて線量管理及び線量記録の方法を明示しなくてはならない。当該医療機器を用いた診療のうちの一部を線量記録対象とする場合、対象となる診療を記載する。管理・記録対象医療機器等であって線量表示機能がないために線量記録を行わない医療機器については、その旨とともに一覧に記載する。

(線量管理)
第10条 医療放射線安全責任者は、医療被ばくの線量の評価及び最適化を含む、放射線診療を受ける者の線量管理を行わなければならない。
2 線量管理の方法は関係学会等の策定したガイドライン等を参考に定めること。ガイドライン等の変更時、管理・記録対象医療機器等の新規導入時及び買換え時、放射線診療の検査手順の変更時等に合わせて、必要に応じて見直すこと。
3 被ばく線量の評価は年1回以上行い、診断参考レベルを使用して防護の最適化を行うこと。
4 線量管理の実施記録を作成すること。実施記録には日付、方法、結果及び実施者を含めなければならない。

(線量記録)
第11条 医療放射線安全責任者は、線量記録対象である放射線診療について、医療被ばくによる線量を記録させなければならない。
2 線量記録は、関係学会等の策定したガイドライン等を参考に、当該放射線診療を受けた者を特定し、被ばく線量を適正に検証できる様式を用いて行わなければならない。
3 線量記録の保管期間は診療録の保管期間に準ずるものとする。

(診療用放射線に関する情報等の収集と報告)
第12条 医療放射線安全管理責任者は、行政機関、学術誌等から診療用放射線に関する情報を広く収集するとともに、得られた情報のうち必要なものは、放射線診療に従事する者に周知徹底を図り、必要に応じて病院長への報告等を行うこと。

第5章 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応

(放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応)
第13条 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時には、次に掲げる対応を行うこと。

  • (1) 病院等における報告
  • (2) 有害事象と医療被ばくの関連性の検証
  • (3) 改善及び再発防止のための方策の実施

2 診療用放射線の被ばくに関連して患者に何らかの不利益が発生したか発生する恐れがあった場合、又は医療被ばくに起因する組織反応(確定的影響)の可能性がある有害事象が発生した場合、これを認識した従事者は当該診療を依頼した医師等及び医療放射線安全管理責任者にその旨を報告すること。外部放射線治療、密封小線源治療又は放射性同位元素内用療法においてあらかじめ想定され、患者に対する説明が行われた有害事象は本指針における報告の対象に含まれない。
3 診療用放射線の被ばくに関連して患者に何らかの不利益が発生したか発生する恐れがあった場合として報告されるべき対象には以下を含む。ただし、患者に不利益が発生しなかった場合については当該診療の依頼した医師等への報告は要しない。

  • (1) 検査依頼の誤り
  • (2) 検査実施の誤り(患者の取り違い、撮影部位の過誤、撮影内容の過誤等)
  • (3) 過剰線量の照射(適切な最適化が行われた高線量照射は該当しない)
  • (4) 予期せぬ胎児・胎芽被ばく
  • (5) 過剰もしくは無効な被ばくにつながる装置の不具合(画像生成・保存の不具合、線量調整機構の不具合等)

4 医療放射線安全管理責任者への報告は当院における所定の書式をもって行うこと。ただし、緊急を要する場合には速やかに口頭で報告し、その後に遅滞なく所定の書式で報告する。当該診療の依頼した医師等への報告は口頭でもよい。口頭での報告を行った場合、その旨を放射線診療の記録や診療録等に記載すること。
5 報告には次に掲げる事項を含むこと。

  • (1) 事例の概要(発生日時、内容、関与した従事者、影響度)
  • (2) 事例の要因
  • (3) 再発防止のための対策

6 報告を受けた医療放射線安全管理責任者は、定期的及び必要時に病院長及び医療安全管理委員会に報告すること。
7 医療被ばくに起因する組織反応(確定的影響)の可能性がある有害事象の報告を受けた医療放射線安全管理責任者は、当該放射線診療の依頼医師等及び実施医師等とともに、患者の症状、被ばくの状況、推定被ばく線量等を踏まえ、当該患者の障害が医療被ばくに起因するかどうかを判断すること。
8 医療放射線安全管理責任者は、医療被ばくに起因すると判断された有害事象について下記の観点から検証すること。必要に応じて当該放射線診療に携わった依頼した医師等、実施した医師等及び診療放射線技師等とともに対応すること。

  • (1) 医療被ばくの正当化及び最適化が適切に実施されたか。
  • (2) 組織反応(確定的影響)が生じるしきい値を超えて放射線を照射していた場合は、患者の救命等の診療上の必要性によるものであったか。

9 医療放射線安全管理責任者は、診療用放射線の被ばくに関連した事例の報告及び有害事象と医療被ばくの関連性に関する検証を踏まえ、同様の医療被ばくによる事例が生じないよう、改善・再発防止のための方策を立案し実施すること。

第6章 医療従事者と患者間の情報共有

(患者に対する説明の対応者)
第14条 患者に対する説明行為には当該患者に対する放射線診療の実施を依頼した医師等が責任を持って対応すること。
2 放射線科に所属する医師、診療放射線技師及び看護師(医療放射線研修を受講した者に限る)は、患者に対する説明を補助することができる。ただし、当該放射線診療の正当化に関する事項の説明は依頼した医師等が行うこと。

(放射線診療を受ける患者に対する診療実施前の説明方針)
第15条 放射線診療を受ける患者に対する診療実施前の説明は次に掲げる点に留意して行うこと。

  • (1) 当該放射線診療により想定される被ばく線量とその影響(組織反応(確定的影響)及び確率的影響)
  • (2) リスク・ベネフィットを考慮した当該放射線診療の必要性(正当化に関する事項)
  • (3) 当院で実施している医療被ばくの低減に関する取り組み(最適化に関する事項)

2 被ばく線量の説明は、当該放射線診療により想定される被ばく線量の大小について、他の放射線診療による被ばくやその他の線源からの被ばくと比較した上での認識を助けるものとする。線量指標の数値は、個々の患者における確率的影響のリスクを評価するためのものではないことに留意する。
3 正当化に関する説明では、当該放射線診療で期待される診療上の利益と放射線被ばくに伴うリスクを比較し、当該放射線診療の必要性を説明する。
4 最適化に関する説明においては次に掲げる点に留意する。

  • (1) 放射線診療を依頼する医師等による依頼内容の最適化
  • (2) 放射線科医師による当該診療の実施前の最適化
  • (3) 医療放射線安全責任者による線量管理

5 CT検査、血管造影、核医学診療については、当該放射線診療を依頼する医師等は放射線診療実施前の説明と同意に関する事項を診療録等に記録する。救命等のためにやむを得ず十分な実施前の説明ができない場合は、その旨を記録すること。

(放射線診療実施後に患者から説明を求められた際の対応方針)
第16条 放射線診療実施後に患者から説明を求められた際の説明は、次に掲げる点に留意して行うこと。

  • (1) 当該放射線診療について推定される被ばく線量とその影響(組織反応(確定的影響)及び確率的影響)
  • (2) リスク・ベネフィットを考慮した当該放射線診療の必要性(正当化に関する事項)
  • (3) 当該放射線診療における医療被ばくの低減に関する取り組み(最適化に関する事項)

2 被ばく線量の説明では、線量指標の数値は個々の患者における確率的影響のリスクを評価するためのものではないことに留意する。
3 救命のためにやむを得ず放射線診療を実施し、被ばく線量がしきい線量を超えていた等の場合は、当該診療を続行したことによる利益と不利益、及び当該診療を中止した場合の利益と不利益を含めて説明すること。

(患者等による本指針の閲覧)
第17条 放射線診療を受ける患者及びその家族等から本指針の閲覧の求めがあった場合、医療放射線管理委員会で協議の上、必要と認めた時はこれに応じるものとする。

第7章 その他

(紹介する患者の放射線診療)
第18条 放射線診療を目的として外部病院等に紹介する患者については、紹介する医師等が正当化及び依頼内容の最適化を行い、これらの内容を含めて患者に対して放射線診療の実施前説明を行うこと。
2 CT検査、血管造影、核医学診療については、紹介する医師は診療録に説明と同意に関する事項を記録すること。また、放射線診療を依頼する外部病院等への診療情報提供書に説明と同意に関する事項を記載すること。

(紹介された患者の放射線診療)
第19条 放射線診療を目的として外部病院等から紹介された患者について、放射線診療の実施前に正当化及び最適化を行い、第15条の定めに則った患者に対する説明を実施すること。
2 CT検査、血管造影、核医学診療については、放射線診療の実施後に、紹介元の外部病院等の医師等に対して当該診療における医療被ばくの線量情報を提供すること。
3 放射線診療実施後に当院が患者から説明の求めを受けた際は、当院において当該放射線診療を依頼した医師等が対応すること。

(血管造影等における皮膚への高線量照射時の対応)
第20条 血管造影等の放射線診療において皮膚に高線量を照射し、組織反応(確定的影響)を生じる可能性が想定される場合、診療録への記録及び当該放射線診療を受けた者への説明等の対応を実施すること。
2.皮膚への高線量照射時の対応の内容については、関係学会等の策定したガイドラインを参照して定めること。
3 放射線被ばくに起因することが疑われる不可逆性の皮膚障害が発生した場合には第13条に定める対応を行うこと。

(本指針の改正)
第21条 本指針の改正については、医療放射線管理委員会で審議し、病院長が決定すること。
2 医療放射線管理委員会は、関係学会等の策定したガイドライン等の変更時、放射線診療機器等の新規導入時又は買換え時等、委員長が必要と認めた時に、本指針の改正の要否及び改正内容に関する審議を行う。

(本指針の細則)
第21条 本指針の細則については、別に定める。

令和2年3月18日制定
令和2年5月20日改正
国立大学法人 富山大学附属病院