【MNSs式血液型】
歴史 MN式血液型は、1927年、Landsteiner & Levineによって発見された。抗Sは1947年、Walsh & Montgomeryによって新生児溶血性疾患の母親血清中に、抗sは1951年、Levineによって発見された。
MとN遺伝子は第4染色体上にある対立遺伝子であり、グリコフォリンA上の特異的なアミノ酸の配列をコードしている。MとN抗原はわずかにポリペプチド鎖の1番目と5番目に位置する2つのアミノ酸が違うだけである。M遺伝子はセリンを1番目に、グリシンを5番目にコードしている。N遺伝子はロイシンを1番目に、グルタミン酸を5番目にコードしている。3つの表現型はMとN遺伝子によって決定されている。(MM、MN、NN)
Sとsの対立遺伝子はMN座の近くに存在している。S、s抗原はグリコフォリンB上に位置し、Ssシアル糖タンパクと称されている。Sとs抗原の正確な位置や生化学的構造は知られていない。しかし、グリコフォリンB上の27と35に位置するアミノ酸に関係しているらしい。(グリコフォリンBのN末端より29番目のアミノ酸に違いがみられる?)Sとs遺伝子によって、4つの表現型(SS、Ss、ss、SuSu)にわけられる。

【抗MN抗体】
 通常は規則抗体としては存在しないが、時としてN型のヒト血清中に抗M、M型のヒト血清中に抗Nが存在するが、抗Mと抗Nの多くはIgMの自然抗体で、室温以下でよく反応する。抗MはごくまれにIgGの免疫抗体が認められる場合もあり、輸血副作用や新生児溶血性疾患の原因となることもある。抗Nは、IgM型自然抗体で寒冷凝集素である。この抗体は、まれにしか検出されず輸血副作用や新生児溶血性疾患の原因となることはない。一方、表現型から遺伝子型が明らかなことから親子鑑定に有用な血液型である。
同型接合(MM)の血球は、強い凝集を示し、異型接合(MN)の血球は、弱い凝集を示す。この反応の変化を量的効果と【抗Ss抗体】
抗Sは、IgGあるいはIgM型であるが、抗sは、たいていIgG型である(一般に免疫抗体で抗グロブリン法で検出される)。抗Sと抗sは、輸血副作用と新生児溶血性疾患の原因となる。

【Lewis式血液型】
歴史 抗Leaは1946年にMourant、抗Lebは1948年にAndersenによって発見された。
このLe抗原は赤血球産生時は赤血球上にはなく、血漿中に存在する型物質を赤血球基質膜上に取り込みLewis型が発現される。Lewis式血液型の対立遺伝子はLeとleで表記され、Leが優性である。le遺伝子は不活動対立遺伝子である。一般的な赤血球Lewis型の表現型は、Le(a+b-),Le(a-b+),Le(a-b-)の3つである。サイ帯赤血球ではLe(a-b-)であるが、生後2〜3年の間にはLe(a+b-)に変化するもの、さらに、Le(a+b+)を経てLe(a-b+)に変化していくものがある。ごくまれに成人でもLe(a+b+)のこともある。さらにこの血液型はABH型物質分泌型対立遺伝子Seおよびseと密接に関係しており、唾液中にABH型物質が認められる場合は分泌型でLe(a-b+)となり、型物質が認められないか、ごく少量の場合は非分泌型でLe(a+b-)となる。Le(a-b-)型には分泌型および非分泌型の両方がある。

【抗Lewis抗体】
抗Lea、抗Lebは自然に産生されたIgM型同種抗体で一部のLe(a-b-)の人に見い出されている。時に抗LebがLe(a+b-)表現型の人によって産生されることもある。Le(a-b+)の人は、血漿中に少量のLea抗原を含むので、抗Leaは産生しない。抗Leaは多くはIgMであることから胎盤を通過せず、また新生児赤血球はLe抗原を欠いていることから、この血液型は新生児溶血性疾患の原因にはならない。抗Leaは時として強い溶血性副作用を起こすことがあるため、37℃で反応するか、あるいは試験管内で溶血を起こすような場合には、患者に交差適合試験適合の血液を与えるべきである。抗Lebは臨床的意義はほとんどないとされている。抗Lebのうち、O型のLe(a-b+)血球と強く反応するものを抗LebH、ABO型に関係なく反応する抗Leblがある。抗Lebの多くは抗LebHである。したがって、患者のABO血液型と同型の血液との交差適合試験はほとんど適合となり問題にはならない。
  

  
【症例】
患者情報 S47年1月7日生まれ 31歳 女性
     妊娠11週にて血液型の依頼、1度流産の経験あり
血液型
抗A 抗B 抗D Rh−ctl A1血球 B血球
4+ 4+  4+   0  0 1+

ウラ試験   A1血球 B血球
室温 直後判定 0 1+
37度20分後判定 0 0
7度20分後判定 0 1+
 

 オモテAB型であるがウラ試験でB血球に凝集あり。ウラ試験の温度差による反応は、室温及び低温で凝集が見られたな、加温後反応は消失した。冷式抗体を考え同定検査を行ったところ、抗Mが検出された。ウラ血球の反応は抗Mによるものと考えられた。

【CA19-9とLewisの関係】
 膵癌や胆道癌など、消化器系腫瘍マーカーとして知られている「CA19-9」は、フコシルトランスフェラーゼという酵素を介して、Lea抗原の末端がシアル化したものである。よって、Lewis抗原を持っていない人はCA19-9を作ることが出来ない。明らかな膵癌の所見を持ちながらCA19-9が低値の場合は、未分化癌か、Le(a-b-)であるということが言える。

戻る