ABO式血液型

 輸血の歴史の始まりは、ローマ帝国時代から。その時代は直接血管に入れるという方法が知られておらず、飲ませていたようです!?西洋で最初に血管に血液を注入した記録は1667年、フランスのドニスで、実はこの時代は輸血したのは人間の血ではなく羊の血でした。しかしそれでもかなりの治療効果を上げていたようです。人間の血を最初に輸血したのは、1818年イギリスのブランデルでした。
 さて、この輸血を行うのに最も大事な情報と言えば、「血液型」ですが、この偉大な発見は、1901年、K Landsteiner が同僚間の血液および血清を分離し,いろいろな組み合わせで混合した(現在でいうクロス・マッチングを行った)ところ,血球が凝集する場合とそうでない場合があることを見いだしたことが発見の端緒となりました。

 血液型抗原は、糖転移酵素(A型転移酵素、B型転移酵素)により決定されており、糖転移酵素は第9染色体長腕(前駆体であるH遺伝子は第19染色体)に存在しているABO遺伝子が決定し、Mendelの遺伝の法則に従って遺伝します。

Landsteinerの法則

表現型 日本人の出現頻度 赤血球の抗原 血清中の抗体
A型 39.10% A、H 抗B
O型 29.40% H 抗A、抗B
B型 21.50% B、H 抗A
AB型 10.10% A、B、H  

ABO血液型の抗原と抗体の発達と分布
 赤血球上のA、B、H抗原は、胎生5〜6週目に認められるが、誕生時にも抗原の発達は充分でなく成人の約3分の1程度である。2〜4歳になって成人なみとなり、抗原の強さはその終生ほぼ一定である。
 血清中の抗A抗体及び抗B抗体は、誕生時には母親由来のIgG抗体のみで、生後3〜6ヶ月から抗体が作られ始め、抗体価は5〜10歳頃ピークに達し、加齢と共に低下し、高齢者ではピーク値の約4分の1になるという。
 赤血球1個あたりの抗原数
血液型 抗原数 血液型 抗原数
A1成人 810,000〜1,170,000 A1B成人 460,000〜850,000
A1新生児 250,000〜370,000 A1B新生児 240,000〜290,000
A2成人 240,000〜290,000 B成人 610,000〜830,000
A2新生児 140,000〜 B新生児 200,000〜320,000

ABO(H)血液型物質の型特異性は糖鎖、末端の構造により決定されるが、この糖鎖構造を形作る酵素が糖(型)転移酵素glycosyltransferasseである。型転移酵素を測定することで、本来のABO血液型を知ることができる。

 AとBの転移酵素間には塩基置換が7箇所あり、その結果、4つのアミノ酸置換が生じている。
 O型は、当該領域の1塩基の欠損により、ストップコドンが入り(この先はアミノ酸が作られず)転移酵素が産生されない。
 ヒトのABO式血液型遺伝子は、数百万年前からの歴史があって、A型が始めに存在し、遺伝子の欠損や変異によってO型が出現し、やがてB型が発生したことが、分子生物学による分析で明らかになりました。

 血液型は、もともと感染を防ぐ生体防御機能が進化したものと考えられており、ABO抗原に対応しない抗体が共存することで、バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのにある程度の効果があるのでわないかと言われています。実際、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃壁に潜り込む際、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしていると言う事実もあり、H型物質しか持っていないO型の人間は、胃潰瘍になりやすいとか?!

一つ前に戻る